85. 魔導研究所特務教諭の開発した地球の技術を再現した高速移動器具及び魔導研究所所長の所持する魔装に対して武の国王都訪問の際に発生した原因不明の機能不全に対する考察とその弊害
――ガクン、という衝撃が身体を貫くのを感じ、真也は長運転で麻痺しかけていた意識を現実の世界へと引き戻した。魔力式バイクが何の前触れも無くその速度を減じ始め、訳も分からない内に、トロトロとした徐行運転へと変わっていく。アクセルを何回か捻ってみたが、変化が無い。ボフンボフンとコミカルな排気音を奏でて、それきりもう動かなくなってしまった。
「どうしたの?」
車体の後部に跨っていたアルが、訝しそうな声で真也に聞く。「分からない」と、真也はバイクを降りて、訝し気に車体を撫でながら答えた。
「魔力切れって事は無いと思うが――。
アル。念のために、魔力残量を確認してみてくれないか?」
「ちょっと待って」と答えながら、アルはヒョイとバイクから飛び降りた。少し面倒臭そうではあったが、長旅の疲れもあるだろうし、しっかりと自分の役目を果たしてくれるだけありがたい。魔力集積用魔法円が仕込まれている辺りに、目を細めながら指を這わせていく彼女を見つつ、真也は凝り固まった身体を解すように「んっ」と大きく伸びをした。
辺境の宿屋で一泊し、やっと武の国王都・ヴィーンゴルヴの入り口に到着したのは昼過ぎの事であった。入り口と言っても、門や立て札のような物は無く、明確に境界線が引かれている訳では無い。この辺りは民家や商店がまばらに点在しているだけであり、それが奥に進むごとに徐々に密度を増し、遠目に見えるコロッセオや塔のような巨大建造物の辺りで最高潮に達する形となっているようだった。
恐らくは、あの辺りがこの街の中心部なのだろう。
住民が皆気の向くままに、住みたい場所に住んで街を形成しているように見えるその景観は、防衛の為に街全体を巨大な防壁で取り囲み、全ての建物をその中に押し込んでいる銀の国王都とは、あらゆる意味で対照的なように思われた。
そんな都市外縁部特有の閑散さを醸す景観の中で、真也は見物するように辺りを見回した。
今がお昼時を過ぎた頃だからだろうか。まばらな民家の間の、岩がゴロゴロと転がる荒地では、この辺りに住んでいると思しき子どもたちがチャンバラごっこをして遊んでいる。その隣に走る通りでは、体長5メートル近いイノシシのような生き物が爆走していた。
荷台を引いているのを見ると、恐らくは荷物の運搬用にでも使われているのだろう。
そんな比較的長閑な、しかし確かに人々の生活の痕跡を感じられる景色を何となしに眺めつつ、真也は今まで自分が運転していたバイクと見比べて、小さく安堵のため息を漏らした。
――止まったのがここで良かった、と。真也は、心の底からそう思ったのだ。
バイクが動かなくなるのは、あり得ない話ではなかった。無論、真也とてこまめに整備はしているし、旅の前にも一度細かく点検はしている。
――だが、何しろ長旅だったのだ。
果ての無い平原の砂地に、昨日の黒の凍土の湿地帯での走行。泥や砂でどこかにガタがきたとしても、まあそこまで不思議でも無いだろう。魔力式エンジンは、ガソリン車のそれよりも幾分タフな試算だが、確かに絶対に故障なんかしないとは言い切れない。
だからこそ真也は、“それ”が起こったのがここで良かったと考える事にした。
勿論、このバイクを造ったのは真也だ。一流の科学者たる彼なら、多少の故障くらいなら自力で直せてしまうだけの知識は、十分持ち合わせている。だが、一通りの道具が揃っていたとしても、恐らく修理は半日掛かりになるだろう。
――あとほんの少しでもヴィーンゴルヴから離れた場所で事が起こっていたら、恐らくは“敵国”のど真ん中で野宿をする羽目になっていたのに違いない。“守護魔”という彼の立場を考えれば、それはゾッとするほど気を許せない事態になったに違いなかった。
(……、“敵国”、か)
そこまで考えたところで、真也は自分の思考に一点のくすみのような物があることに気が付いた。
――“敵国”。そう、敵国だ。真也が召喚された“銀の国”にとっての障害であり、即ち真也自身がいずれは著しい不利益を与えなくてはならない対象、とされている国。
だが――果たして、本当にそうなのだろうか? この国は本当に自分にとって有害であり、そして自分は、本当にこの国の王女様を殺害しなくてはならないような、そんな大義名分のような物を持っているのだろうか?
一瞬だが、真也はなんとなくそんなことを考えた。
例えば、そう。真也が今こうして、その“敵国”の首都に赴こうとしているのは、ひとえにこの国の第一王女である武装姫・ウェヌスからの招待があったからである。真也がアルによってこの世界に召喚された翌日。始めて銀の国の王都を訪れたあの日に、真也に準備を整えるだけの猶予も与えず、奇襲同然に攻め込んできたあの王女様のことだ。
あの後彼女にどんな心境の変化があったのか、なんて事は真也には分からない。何となく予想が付く気もするが、“それ”が本当に“そう”なのだとしても、この世界に来て僅か数ヶ月の真也が、気安く踏み込んで良いような問題だとは言えないだろう。そもそも朝日真也という人間は、そういった他人の問題に、すすんで干渉しようとするような人格の持ち主では無かった。
だから彼に言えるのは、とにかくその“武の国の王女様”が、いつかは自分と殺し合うであろうその“敵”が、どうやら王都での一晩の宿を約束してくれたらしい、という事実だけであった。
ウェヌスの思惑までは分からない。何となく予想が付く気がしたが、これも下手に干渉したい問題だとは、真也には思えない。
――強いて言うのなら、今回の誘いは“都合が良かった”、と素直に感謝していることくらいだろうか?
“最強の守護魔”・ユピテルの手前もあるのかもしれないが、武の国勢とは、最近は随分と生温い協力関係のようなものを築いているようにも思われる。
しかし、だからといって――、勿論、“それ”は、彼らを見逃すなんて決断を下すだけの理由にはならないのではあるが。
(いつまでも仲良しこよし、なんてわけにはいかないしな……)
自嘲するように口元を緩ませ、真也は白衣の下のホルスターに手を触れた。カチャリという金属音と共に、冷たい感覚が指先から血管の中を上ってくるのが分かる。それは彼が元居た世界では武器の象徴とも言える、すっかり手に馴染んでしまったプリチャージ式空気拳銃の感触であった。
朝日真也は、元の世界に帰りたいと思っている。
理由は分からない。それは地球での研究が中途になってしまった事に対する未練もあるだろうし、或いは命を狙われ続けるこの世界での生活に、どうしても馴染む事が出来ないという事もあるのかもしれない。つまりは“帰りたい”と切に願う、その確固たる理由には、彼自身にもいまいち判然としない部分があった。(“郷愁”とはそういうものなのかもしれない、などと、真也自身は達観ぶって解釈してみる事にしている)
とにかく。彼にはっきりと言える事は、彼は地球での元の生活を取り戻したいと思っていて、それはこの世界に召喚されたあの日以来、一度たりとも曲げたことの無い彼の大目標であるという事である。
地球に帰還する為に、真也が国と結んだ条件は“全ての守護魔の排除”だ。先日は晩餐会で一緒にバカ騒ぎした連中の半数を、場合によってはその殆ど全員を皆殺しにしなくてはならないという、修羅の契約。
無論、真也だって、連中の能力が“銀の国”の不利益になる事くらいは理解している。だから、別にその条件そのものに異存を唱えるつもりなんか全く無い。残りたった4匹の害獣を駆除するだけで、地球に帰して貰えるというのなら、条件としては寧ろ破格の物だとすら言えるだろう。
現に今だって、真也は冷たく暗い金属塊の中に、こうして“それ”を成す為の仕掛けを13発装填で隠し持っているのではないか。だったら、迷うことなど何も無い。やらなくてはならない事は、一つだけだろう。
頭の中を整理し終えた真也は、大きく息を吐き出して気分を入れ替える。
――なんだ。つまりは大義名分どころか、手段も目的も行動原理まで、完全に完璧に調整済みだったのではないか。あとは行動を起こす為の“隙”でもあれば、今日の宿を借りた後で、真也は喜んであの男の眉間に鉛弾をねじ込んでやるかもしれない。
こと利害計算という点に於いて、比較的、真也は情を挟まない主義の持ち主なのであった。
剥き出しの土が踏み固められただけの道路と、辺りに広がる素朴な住宅街。その向こうに見える、霞が掛るほどに巨大な5つの塔とコロッセオの数々に目をやってから、真也は視線を自前のバイクへと移した。アルは相変わらず難しい顔をしながら、変わらぬ仕草で黒光りするバイクの装甲を撫で回していた。そんな彼女の、可愛らしいと言って差し支えない表情を見ながら、真也はふと、思った。
――彼女は、どうなのだろうか?
手持ち無沙汰に肩のコリを解しながら、特に興味があるわけでも無く、しかし真也は何となく漠然と考えた。
アルテミア・クラリスは、魔導師が服を着て歩いているような少女である。銀の国最強の魔法使いを自称する彼女は、魔導師という職に人並み以上のプライドを持ってもいるらしかった。ならば、一度“敵国民”との戦闘になどなれば、(今までがそうだったように)例え昨日酒を酌み交わした相手であろうと、きっと一切の容赦もせずに殲滅するだろう。
もしかしたら、今のような“馴れ合い”とも言えるような状況にだって、本音ではあまり良く思っていないところもあるのかもしれない。
だが、それがそのまま彼女の“戦う理由”の全てかと聞かれると、真也には少し首を傾げざるを得ないように思えた。いや、恐らく大半ではあるのだろう。そうでなくとも、彼女の性格的に、“それ”が大部分を占めているであろう事は想像に難くない。
だから――真也が違和感を覚えたのは、彼女がそういった信念を持つに至った経緯の方であった。
10歳にして魔導師になったというアル。年齢を逆算すれば、物心がついた頃には、もう魔導の道を志していた計算になる。
才能があったのは間違いが無いだろう。
だが――、一体何があれば、そんな幼い年頃の子供が、そこまで苛烈に魔導を追い求めるようになるのだろうか?
彼女が時折口にする、敵国の大魔導を全て倒して、或いは伝説の魔法使いの業を再現して、“自分が一番”だと証明したいという願い。
或いは、それは、もしかしたら――。
「うそ!?」
そこまで考えたとき、真也はアルが素っ頓狂な声を上げるのを聞いた。翡翠のような両の双眸が、パチッと大きく見開かれている。
「? どうしたんだ?」
「これ――」
真也の問いかけに、アルがバイクを指さしながら答えた。
「魔力がぜんっぜん残ってないの!! もう物の見事にスッカラカン!!
よくもまあ、ここまで綺麗に使いきったもんだって感心するくらい――」
「? いや、そんな訳がないだろ。だって――」
「ホントなんだってば!!」
強調するように、アルがバイクの車体をコツコツと叩いて言う。どうやら、本当に本当らしかった。それが分かったからこそ、真也は訝るように首を傾げた。
というのも、今回の旅路に於いて、魔力が問題になる事は一切無いと思われていたからであった。真也が造ったこの“魔力式オフロードバイク”の最大走行時間は、動燃系に多少の改良を施した今となっては、恐らく最大で5~7時間程度。しかし後部座席に燃料タンクが乗っている状態なら、魔力は彼女が集めてバイクに流し込む役割を担っているお陰で、特に走行時間を心配するような事も無くなっていた。
先の止まり方から、真也は今回、バイクが抱えているのはエンジン系のトラブルだろうと当たりと付けていた。恐らくはエンジンに泥でも入って、回転が悪くなってしまったせいなのだろう、と。地球ならガス欠でも疑うところだろうが、アルがしっかりと働いてくれている限り、走行が不可能になるほど完璧な“魔力切れ”なんて事態は、そうそう起こるものじゃ無いと思っていたのだ。
しかしアルによると、それが実際に起こってしまったのだという。
なら考え得る可能性は、つまるところ、その……。
「……ナニよ、その恨みがましい目つきは」
「いや、まあ、怒らないで聞いて欲しいんだが……。
今までの情報を、あくまでも客観的判断に従って統合するとだな。
端的に言って、君が魔力供給で手を抜いたか、或いは何か初歩的なミスを犯した、なんていう結論しか出てこないわけなんだが――」
「はぁ!?」
アルの片眉が、ピクンと跳ねた。“怒らないで聞いて欲しい”という真也の願いは、どうやら聞き届けては貰えなかったらしい。
「そんなワケが無いでしょ!? あんた、あたしを誰だと思ってるのよ!!
魔力の集積なんて、魔導のマの字も付かないような初歩の初歩の初歩、眠ってたって失敗するワケないでしょうが!!」
「いや、だって現に止まってるわけだしな……。
魔力の集積――だっけ? あれ結構集中力使うし、いくら君でも、この長旅は流石に堪え――」
「あんたと一緒にしないでよ!! ヘッポコ魔術しか使えないあんたと違って、あたしは“集積”なんて口にするのも恥ずかしいような工程、5歳の時にはもう1週間は維持出来てたの!!
大体、あたしがもし“集積”でミスるようなヘボだったら、あんたの“補正”を維持し続けるのだって――だから不安そうな顔になるな失礼でしょバカ~っ!!」
突然自分が消えるかもしれないという話になり、顔を青くした真也の胸を、アルはポカポカと無遠慮に叩き始めた。どうやらチクリとプライドを抉られたらしく、いつもよりもどこか駄々っ子に近い雰囲気を醸し出している。チャンバラをしていた子どもたちが遠巻きに集まってきて、頬を赤らめながら何かひそひそ話を始めたので、そこで真也は諦めたようにため息をついた。
――余談だが。魔術の出来には、使い手の精神状態が多分に影響を与えると言われている。
あくまでもアルが何らかのミスをした、という前提の話だが、もしかすると“この街に入りたくない”という彼女の無意識が、彼女自身に意識させないままに魔術を失敗させてしまったのではなかろうか、などと真也は解釈していた。特にアルの“あの王女様”に対する態度を見る限り、その可能性は十分以上に有り得るのではなかろうか、と。
真也のそんな思考が伝わったようで、どうやら認めたく無い様子のアルは、少し強めに真也の肋骨の隙間に拳をねじ込んでいた。
「――アッタマきた」
肺を強打されて噎せ返る真也に睨みを効かせつつ、アルは癇癪を起こしたように、ボコンとバイクを軽く蹴った。
「なによ、こんな鉄くず。どうせまた、あんたが点検サボってたの、正直に言いたくないだけなんでしょ!?」
「? どこ行くんだ?」
スタスタと、一人で街の中央に向かおうとするアルに、真也は事も無げに尋ねる。
アルは、フワリと振り向いた。つり目がちの目を更につり上げて、挑戦するように鼻で笑っていた。
「それ、魔力入れなきゃ走らないんでしょ?
そんなにあたしの腕が信用出来ないなら、自分でやったらいいじゃない。
ど~せ、あんたじゃ丸一日掛かると思うけど、まあ頑張れば?
そうすれば、ちょっとはあたしの有り難みが――って、どうしたのよ?
なんでそんな、オバケでも見たみたいに――」
「……、いや、だって君。その腹――」
「?」
真也が指さした先を、アルもようやく見たようだった。彼女の視線の先では、厚ぼったいローブの腹の辺りに、なにやら明確な異常が起き始めていた。
一言で言うと、膨らんでいる。否、より正確に言うと、そうこうしている間にも、見る見る内にアルの腹部は膨張を続けているようだった。事態を把握したらしいアルが、なにやら聞いたことも無いような恥ずかしい奇声を発していたり、或いは遠巻きに見ている子供たちが(何故か)大盛り上がりの大はしゃぎをしたりしているが、今は気にしている場合では無いので真也は無視する事にする。
取り敢えず。5メートルほど前に居るアルに向けて、真也は確認するように歩き出して――、
「――!?」
突如、全身を襲った強烈な重圧に、彼は数歩で歩みを止めざるを得なくなった。
咄嗟に膝を付かなかっただけ頑張った方だろう。真也自身には、自分の体重が、一瞬にして10キロは増したように感じられていた。
――何が、起きている?
困惑に凍り付いた思考のまま、真也は呆然と、目の前でアルに起きている光景を眺め続けていた。初めは服が膨らんでいることしか分からなかったが、今では何が起きているのか、一目で簡単に理解出来るほどに、事態は進行してしまっていた。
アルのローブからは、“矢”が突き出していた。とは言っても、別に敵が放った物でもなんでも無く、彼女自身が常備している“魔装”の付属品であるらしい。襟や裾の辺りからもイロイロ飛び出ているのを見るに、どうやら携帯用に小型化させていた彼女の魔装が、何らかの理由によって服の中で“解放”されてしまった結果であるようだった。
「え、ちょ、ま!? ちょっと待って!?」
……そこから先は、言語に絶する事態となった。
服の中で膨張してしまった無数の矢は、彼女のローブの腹部あたりをモコモコと盛り上げつつ、一部がローブを破ってピョコピョコと先端を飛び出させた。だが、それはまあ、あまり問題であるとは言えないだろう。
真に“問題”だったのは、そんな何十という矢達の奮闘の結果、腹部の膨らみによってアルのローブ全体がたくし上げられる形になり、裾が下腹部の辺りまでぐぐぐっと持ち上がってしまっていたという事だった。つまり何が言いたいのかと言うと、彼女の下着は丸見えであった。白地にピンクのリボンが付いた、旅中の割にはいつも通りの、意外と少女趣味な下着である。
……更に彼女にとって不運だったのは、よりにもよって“長弓”の本体部分の下端が、全くの偶然にも、その下着のピンクリボンに引っかかってしまっていたという事だろうか。無遠慮にも膨張を続ける長弓は、なんとも非倫理的且つ大胆にも、まるで加速を続ける宇宙膨張の如く、可愛らしい彼女の下着を大きく大きく下にずり下げて、その中に包まれていた身体の一部を穏やかな日差しの下へと露出し――。
「――――ッ!!」
――バッ、と。アルは、勢い良くローブの裾を引き摺り下ろした。パクパクと、酸素不足の金魚みたいにその口が開閉を繰り返している。バフンウニみたいになってしまっている自分の腹部を睨みつけて、収束収束収束収束と、アルは掠れた声で呪詛のように詠唱を繰り返していた。
「――、み」
そして、なんとか魔装を元の形に収め終えてから。アルは何かを確かめるように、キッと真也の顔を睨みつけた。可哀想に、その顔は耳まで真っ赤に染まっていた。
「み、みみみ、み……、見た?」
「大丈夫だ!! 安心してくれ、アル!!」
もう短い付き合いでも無いのである。ここで返答を誤る事が“死”を意味することくらい、真也はとっくの昔に理解しきっている。
それが分かっていたからこそ、真也は慎重に慎重を重ねて、アルの両肩に手を置き、慰めるようにしながら、
「ハッキリ見えたが、オレはなんとも思っちゃいない!!」
……最悪の回答を口にした。