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朝日真也の魔導科学入門  作者: Dr.Cut
第二章:雷神鉄鎚-2『爆走!! 天才(バカ)二人!!』
34/91

34. アイアイ★こらむ③ 燃えろ!! 火炎魔法!!

注)アイアイ★こらむは電波系楽屋落ちコーナーです。真面目な方、まともな方、あるいは毒電波に対する耐性が無い方などが読まれますと、精神とかに何らかの異常をきたす可能性がありますのでご注意下さい。

「アイアイ★こらむ~~~~♪」



「…………」



「こっんにっちは~~~~♪

胃もたれしそうな本文に蛇足という名の油をぶっ掛けるこのコーナー。

アイアイ★こらむのお時間がやってまいりましたよ~~~~♪

今日も皆さんお馴染みのこのわたし、アイアイこと相川 愛と。

天災物理学者こと朝日 真也元大学教授(現魔導研究所特務教諭)の二人でお送りしたいと思いま~す♪」



「……おい。今のあからさまな誤字はスルーなのか?

ってか、どうした? なんか、やけにテンション高くてご機嫌じゃないか」



「いえ!! 誤字なんか一つも無かったんで気にしないでください!!

……でも、テンション高くてご機嫌、ですか?

フフフ。やっぱり、そう見えちゃいますか? 見えちゃいますよね?

フフフフ。そうですよ? そうなんですよ~?」



「待て。なんか、君。今日は目が座って――」



「えー? ぜんぜん、いつも通りじゃないですか~。

それとも、教授。

教授には、今日のわたしが、なんかいつもと違う様にでも見えてるんですか~?」



「(ゾクッ!!)な、なんだ!?

君の笑顔、今背筋がゾワって……」



「……気にしないでください。

ところで、教授。さっきの“やけに”って、どんな字を想像しました?

妬けですか? それとも……、自棄(やけ)、ですか?

ムッフッフ~~。どうなんでしょうね~? どうなんでしょうね~?」



「……待て。何故君は、オレの肩に両手を置く?

それとなんか、今の君からは明らかに魔力が……」



「ナニしてるんですかぁぁぁぁあああああああああ!!!!」



「のぁぁぁあああぁぁあぁああッッ!!??

ま、待て!! 待て待て!! ちょ!! ま!!

ゆ、揺するなッ!! それ以上揺するなぁ!!!

コレ、マジで脳震盪――ブ!?

し、シチャ噛んだ!! シチャ!!」



「ウソなんかつくから!! 閻魔様に舌噛まれるんですよ!!」



「抜かれるだろ!!

いつから閻魔は罪人にディープキスする変態になったんだよ!!

ってか待て待て待て待て!! オレは、嘘なんか――」



「ついたじゃないですか!!

アルちゃんとニャンニャンしないって言ったの、ウソだったじゃないですか!!

何なんですか、あれ!!

ラブラブじゃないですか!!

新婚さんじゃないですか!!

恥ずかしくなるくらいの幸せ空間を形成しちゃってたじゃないですか!!

教授!! わたし以外の女の子には興味が無いって、第一回で言ってたの忘れたんですか!?」



「待て待て待て待て!! 君の頭は何をどう誤変換したんだ!?

オレは異生物を女の子扱いするのが間違いだと言ったんだぞ!?

君について言及した覚えは全く無い!!」



「(じと~~~~……)」



「……なんだ? そのあからさまなジト目は?」



「べつに。なんでも無いですよ~。

教授は、何とも思ってない筈の女の子に手料理とか食べさせて赤面するような節操無しだったんだな~、とか、全然軽蔑してないんで気にしないでください」



「誤解を受ける様な言い方をするなぁ!!!!


あ~……、と。因みに、参考までに聞かせてもらうが。

君の目には、アレがどんな風に映っていたんだ?」



「はい!! ぶっちゃけて言いますと――!!」



『アル。ご飯ができたよ? 冷めないうちに食べて』


『ほんと? ――んむ。

うーん……。悪くないけど……固くて、ちょっと辛いかも……』


『……そうか。

初めて作ったんだけど、やっぱり上手くいかないもんだな。

料理くらい勉強しておくんだったよ。

そうすれば、君においしい物を食べさせてあげられたのに……』


『あはは、気にしなくていいよ~。

だって、シンが作ってくれたってだけでさ。

あたし、十分幸せだよ?』


『はは。君は優しいな。

オレの料理なんか、ホントは食べられたもんじゃないだろ?』


『そんなコトないよ。だって、シンの料理だもん。

それにさ。初めてなのは、お互い様でしょ?

あたしも、男の子の料理とか、初めてだから……。

……ちょっと、緊張してるのかも』


『アル――』


『――なんてね。

シン。これからも、よろしく♪』



「さ、砂糖が!! 一舐めで糖尿病が発症するくらい高濃度の砂糖が!!

き、教授!! コレ、コレどうするんですか~!!

朝マガはラブコメじゃないんですよ!?

こんな精神歪みまくりのダメ人間に、甘々なラブコメとか書けるワケが無いじゃないですか!!

いくらなんでも、やっていい事と悪い事があると思います!!」



「待て待て待て待て!! オレはその前段階で原型が無くなる程殴られてるんだぞ?

どんなフィルターを通してアレを見ればそうなるんだよ!!

言っちゃ難だが君の脳には何らかの障害があるとしか思えん!!

脳機能の一部が腐敗でもしているんじゃないのか!?」



「ふ、腐の何が悪いんですか~っ!!

ショタとBLは世界に誇る日本の文――」



「待てぇぇぇぇぇええええええええ!!!!

“その趣味”だけは治せとあれ程言われたばかりだろぉがあああああ!!!!

マジで一回捕まれ作者ぁぁぁぁぁぁあああぁぁあぁぁあああ!!!!」



―――――



「はい。それじゃ、本題にいってみましょう。

教授!! 本日のお題は何でしょうか!?」



「ふむ。どうやら今回は火炎魔法に関する講義の様だが……。

はぁ……とうとう来てしまったか……」



「へ? 何でそんなにネガティブなんですか?

火炎魔法って言えば、ファンタジーには100パーセント出てくるポピュラー魔法じゃないですか。

ある意味魔法の花形さんじゃないですか。

魔獣さんも魔王さんも怪獣さんも火とか噴きますし、なんか、一番簡単そうですけど……」



「そうなんだがな……。

ポピュラーなだけに、ソレを実現するには中々の困難を極めるというか……」



「ソレって、どういう……。

っていうかちょっと待ってください!!

良く考えたら教授!! 今その火炎魔法使えるじゃないですか!!


…………。


あ、あの~。

その、ちょっぴり興味があったりとかしますんで。

一回だけ、見せて頂いても、よろしいでしょうか?」



「フ、仕方ないな。

それじゃ、オレの左手をよく見ていてくれ。

ああ。危ないからちょっと離れてるんだぞ?


よし。それじゃ、いくぞ?燃焼(combustion)!!」



――ペチ。



「…………」



「…………」



「…………。


はい。それじゃ、次、行きましょうか」



「……待て。

何故君は、そんな残念なモノを見た様な目をしている?」



「い、いえ。なんでもないです。

なんか、触れちゃいけない部分の様な気がしたんで……」



「……余計な気など回さなくていい。

と、いうかな。普通に考えれば、2センチでも火が出せるだけ恵まれているじゃないか」



「? そうなんですか?

普通、ファンタジーとかの主人公さんって言えば、魔力チートはテンプレじゃないですか。

地球人って言えば、異世界とかに行ったら、現地の人たちより魔術が使えて当たり前じゃないんですか?」



「……そんなワケが無いだろ。

あのな、よく考えてみろ。

生物というのは、普通は環境に適応して進化していくものなんだぞ?

余分な機能を持った生き物は直ぐに淘汰されてしまうし、ある機能が必要以上に伸びる事も、よっぽど特殊な事情が無い限りはあり得ない。

エラを持っている哺乳類なんか居ないし、馬より速く走れる魚もいないのがその証明だ。

……つまりな。魔力の無い世界で進化した我々が現地人よりも魔術に優れるというのは、“時速300キロで泳ぐゴキブリ”と同じだ。特殊な事情が無い限りほぼ有り得ん」



「きゃぁぁああああああ!?

そ、ソレは最早あのお方(・・・・)じゃありませんよー!!

台所をカサカサって這って、お空をブーンって飛ぶだけでももう手に負えないのに、そんなにシャカシャカ泳がれたら、人類はどうやって立ち向かえばいいんですかーっ!!」



「……取りあえずスリッパか殺虫剤だな。

泳いでくれるなら、界面活性剤も効きそうだ。

まあ、とにかくオレが言いたいのはだな。地球人が魔術を使うには、そのくらい自然の摂理に反した“反則”が必要だって事さ。オレは最弱でも魔術が使えたんだから、まだ十分に恵まれている方だ」



「あ、あう……。身も蓋も無い理屈です……。で、でも~。

やっぱり、教授より先に異世界に行った“先輩”達を見ていると、魔力チートには少なからず憧れるといいますか、ぶっちゃけそっちが本筋っぽいと思っちゃうといいますか……」



「まあ。ファンタジーの主役に選ばれる様な連中は、世界を渡る時に神やら精霊やら“何者かの意思”によって漏れなく人外の魔力やら特殊な才能やらヘンなスキルとか貰ってるからな。爆発事故で飛ばされただけのオレには、この程度の能力補正が妥当な所だろう。

取りあえず覚えておいて欲しいのが、現実としてそういうチート能力を貰えるヤツの方が遥かに稀で、一般に知られている漫画やゲーム、ライトノベルの主人公たちの数倍の数の若者達が、能力補正どころか言語補正やライフラインの補正すら無しで酷い目に会ってる可能性が高い、という事だ。

……異世界嘗めると、痛い目みるぞ?」



「み、みなさん、祈りましょう!!

皆さんが異世界に飛ぶ時には、出来れば能力補正とか沢山ある様に頑張って祈りましょう!!

……お供えとか、効きますでしょうか?」



「……お供えしてる時に異世界に飛ばされた主人公の記録は無いから、望み薄だな。

と言うか、な。正直、チート連中も少々心配だぞ?

だってあれ、チワワにエラ呼吸を覚えさせるくらいの魔改造に等しいからな。

地球に帰ってから、まともな生活が送れるのかどうか心配だ」



「教授!! ソレ、気にしちゃダメなんです!!

ファンタジーでは、面白さっていうのが、どんな物理法則よりも最優先される絶対ルールなんですから!! ぶっちゃけ誰も細かい事なんか気にしないんですから、そこは“神様スゴイな~。”とかで普通にスルーするのがお約束なんです!!」



「……理不尽だな」



「お や く そ く。なんです」



「まあ、そこまで言うなら気にせんが。

さて。それでは、いい加減に本題に入ろうと思う。

火炎魔法とは、まあ大雑把に言って炎を出す魔法であると定義できると思うが――。

基本的な所から確認しよう。そもそも火とは何だ?」



「はい!! ズバリ、ファイヤーです!!」



「……聞かなかった事にしてやる。

そうだな。ここでは火を、“熱や光の放出を伴う可燃物の急激な酸化反応”であると定義しておこうか。そして、もう一つ。燃焼の三要素、という物があってな。燃焼反応が起こる為には、可燃性物質と酸素(広義に酸化剤)、そしてソレを燃やす為の火源が必要であるとされている。

つまりだな。炎が出ているという事は、即ちナニかが燃えていなくてはならないんだ。

よって火炎魔法が火を出す魔法であれば、果たしてナニが燃えているのか、という点が一番の問題になる」



「えーと、はい。

なんか、言われてみれば聞いたことある気がします。

確か、“燃える物が無い火は存在しない”、とかなんとか……」



「火を先の様に定義すればそうだ。

さて。以上の理由から、火炎魔法に於いてもナニかが燃えている、という前提の上で話を進めよう。

オレは本編に於いて、魔力を“可燃性の化学物質”であると仮定し、火炎魔法とはその燃焼反応であると考えた。もう一歩補測するとするのならば、オレの左手の魔法円による物理法則の補正の大元も、その魔力が貯めこんでいる化学エネルギーではないか、とな。

まあ、かなり無理がある仮説なのは間違いが無いんだが……」



「へ? でも、燃える物が無くちゃ火は出ないんですよね?

火炎魔法は火が出る魔法で、魔法っていうのは、魔力を使って発動させる物なんですから、魔力が燃えてるって、なんか一番シンプルな感じがするんですけど……」



「いや、問題がある。

アルの説明によると、あの世界の人間には“集積器官”なる魔力を集める為の臓器があって、ソレで星の内部から染み出してくる魔力とやらを集めているという話だったな?

つまり、魔力はあの星の大気中に充満していて、火炎魔法を撃つときには十分な量が体内に集積されなくてはならない」



「? はい、そうですよね。

でも、それのどこが問題なんですか?

ファンタジー理論の説明だと、“空気中の水素とか一酸化炭素とかを集めて大爆発!!” なんて魔法、よく見ますけど……」



「……あのな。あくまでも地球の大気組成を参考にした場合の話だが、空気中の水素なんか体積比で0.00005%しか無いぞ?

一酸化炭素だって0.00004%に過ぎないし、比較的体積比の大きなメタンだってたった0.00014%だ」



「はい!! だから、ソレを頑張って頑張って集めて……」



「……ほう、そうか。じゃあ計算してみよう。

魔力が大気中に充満している可燃性ガスであると仮定すると、ソレを体内に取り込むのに最も適した器官は“肺”だと考えられる。つまりは、人体に於ける酸素と二酸化炭素のガス交換に似た原理で、酸素を取り込むのと同時に魔力を集積しているのだろう、とな。

ここではアルの肺活量を、15歳女児平均の2700mL前後と仮定する。

これはあくまでもホモサピエンスの場合ではあるが、まあ身長150~155cm程度という彼女の体格を見る限り、これよりも大幅に値が勝ることはまず無いだろう。少々多めに見積もっても、精々3000mLくらいがボーダーだろうな」



「ふ~ん。アルちゃんって、やっぱりちょっと小柄なんですね~」



「……帽子とブーツのせいで、大分水増しされてる気がするけどな。

さて。仮にあの世界の空気中には、体積比で0.0002%の魔力が充満しているとしよう。(上記の可燃性ガスの総和にほぼ等しいので、妥当な線だと考えられる)するとアルが一回の呼吸で肺に取り込める魔力の体積は約0.006mlとなる。

狼霊級火炎魔法のエネルギーをダイナマイト一本分と同程度であるとして計算する。仮にダイナマイト一本に500gのTNT爆薬が使われているとすると、TNT爆薬1g当たりのエネルギーが4184Jであるから、そのエネルギーは凡そ2092kJとなる。

ここでは“魔力の燃焼熱”をメタンと同程度であるとしておこう。

メタンの燃焼熱は890kJ/molだから、2092kJのエネルギーを生み出すのに必要なメタンの量は約2.35mol。

話を簡単にする為に、理想気体の状態方程式を適応する。

仮に気温を17℃(290K)とすると、1気圧でのメタン2.35molの体積は、

V=nRT/p

=(2.35)×(8.206×10^-2)×(290)/(1)

=55.92L(55920mL) となり、これを先の一回の呼吸で取り込める魔力量0.006mlで割るとその値は9320000。

よって、狼霊級火炎魔法一回を発動するのに必要な呼吸回数は凡そ9320000回となる」



「ふ~ん、大変そうですね~。

アルちゃん、本編で散々“小さい事”を気にしてましたけど、確かにコレならその気持ちもわか――。

……って、へ? き、きゅうひゃ……」



「……アルは毎秒一回の魔術発動が自慢だったから、だとすると彼女の呼吸回数は毎秒932万回か。スポーツカーのエンジン回転数でも最大の物で毎秒300回程度だという事を加味すると驚異的な数値だな。なるほど。確かに魔術団長が術式の構築(呼吸)だと気付けなくても無理は無いだろう。

しかもコレ、ただの呼吸じゃなくて深呼吸の換算だぞ?

肺の空気を限界まで吐き出して、再び完全に満たすという動作を前提にした上での試算だ。

いや、待て。これだけじゃ無い!! 今のはあくまでも、肺に魔力を入れるという事象のみを考えた値にすぎなかった筈だ!! 実際には肺に取り込まれた気体が全部体内に取り込まれるわけが無いから、ロスの分を考えると必要な呼吸回数は更に増える。しかも、その結果として発動するのは高々“狼霊級”だ!!“始祖の炎帝”クラスの魔術を扱うには、更に想像を絶する程の呼吸回数が必要になる!!

……最早詠唱なんかしてる場合じゃないな。どう考えても過呼吸だ。

ってか魔術撃つ度にハアハア息荒くしてたら、流石にオレでもちょっと退くぞ?」



「退くとか以前に、なんか絵面的にヤバいですよ~!!

だ、ダメですその理論!!

異世界トリップもののヒロインとして、絶対にやっちゃダメなヤツです!!


……あれ、でもちょっと待ってください。

そもそもさっき、魔力が空気中に0.0002%しか無い、なんて言ったからこんなタイヘンな事になったんですよね? でもでも。それなら、空気中に魔力がもっと沢山ある事にしちゃえば、全然問題なんか無くなるんじゃないんですか?」



「……それだと、今度はもっとタイヘンな事になるぞ?

手元の資料によると、メタンガスの爆発限界は重量比で5%だそうだ。

仮に魔力がメタンと同程度の分子量と爆発限界を持つとしよう。

あの星の大気が爆発限界ギリギリの5%の魔力を含んでいたとすると、それは体積比にして約9%。この数値で先と同様な計算を行うと、一回の呼吸で取り込める魔力の体積は約270mlとなる。この場合に必要な呼吸回数は毎秒約207回であり、まあスポーツカーのエンジンくらいの回転数だからまだ現実的(・・・)だが……。

気を付けて欲しいのが、コレが通常値(・・・)だという事だ。

アルの話によると、オレが行ったあの修練場は、魔力の濃度を別格に高めてあるって話だったよな? もしもあそこが、可燃性ガスの濃度が只でさえ高い惑星だったとして、更にその基準からして“別格な”濃度の魔力が充満した場所で火炎魔法の練習なんかすると――」



「きゃぁぁぁぁああああ!?

ど、ドカンです!! ドッカンていきます!!

火龍の火炎弾(ファーヴニル)なんか目じゃないくらいの大惨事です!!!!」



「……だろ? あの修練場のシステムなんか正気じゃ無くなってしまう。

霊道が焼け付くどころか、全身隈なくウェルダンだ。

やはり、ソレを考えるのも無理はある」



「あうー……。

火を出すだけなら、一番簡単な魔法だと思ったのにー……。

やってみようとすると、実は結構難しくないですか?」



「そりゃそうだろ。

そもそもな。地球じゃ火を扱える生物は人間だけだ。

オレ達の世界に実例が居ない以上、原理を考えるのも相応に苦しい物になるのは否めない。


……仕方ない。ここは、アルには体内で可燃性ガスを生産できる生き物になってもらおう。

大気中から取り込んで即時使うのが難しいなら、予めある程度蓄えてストックしておけばいいんだ」



「なんか、どんどんアルちゃんが遠くに行っちゃってる気がするんですけど……」



「この際それは已む無しだ。何しろ、あそこは異世界なんだしな。

本来なら、アルは宇宙人よりも遺伝的に因果の無い場所に生息している生き物なんだし、そのくらいの無理は我慢してもらおう。


……異世界に行った若者たちよ。よく覚えておけ。

君の後ろで震えているヒロインは、今君が斬った魔物と同列に位置する生き物だ。

君とヒロインの生物学的な距離は、我々の宇宙の単位では表せないくらいに離れている」



「き、教授!! い、今の瞬間!!

きっとモノスゴイ数の勇者様たちを敵に回しましたよ~!?」



「……現実とは時として残酷な物だな。

まあ、勇者とか英雄とかは割と人格者だから、きっと大丈夫だろう。

魔王退治に比べれば、連中にとってそのくらいの苦難は苦難に入るまい」



「……人によっては魔王退治の方がましなくらいだと思うんですけど。

でも、教授。生き物って、身体の中で燃料なんか作れるんですか?

なんか、焼くと爆発するお肉とか見た事無いんですけど……」



「作れるぞ?

例えば酒に入ってるエタノールだが、アレだって定義的には微生物が作った燃料じゃないか。

哺乳類で言えば、牛などの反芻動物が腸内細菌を利用して食物繊維を分解する時に、メタンという可燃性ガスを作っている。

まあ、アルが体内で燃料を作るとしたら、この辺りが妥当か」



「メタン? なんか、聞いたことある様な、無いような……。

それって、具体的にはどんなガスなんですか?」



「そうだな。最も単純な構造を持つ炭化水素で、二酸化炭素の21~72倍の効果を持つ温室効果ガスでもある。

都市ガスとして使用されてる燃料であり、生物学の世界で具体例を挙げるのなら……。

牛のゲップとオナラの主成分だ」



「なんてモノ引き合いに出すんですかぁぁああああ!!

――って、ちょっと待ってください!!

さっき蓄えておく(・・・・・)って……ま、まさか教授!!」



「……なるほどな。

つまり火炎魔法とは、屁に火をつける一発芸と同じ現象だったのか。

要約すると、あの世界の人間には貯め込んだオナラを全身に届ける為の“霊道”と呼ばれる回路があり、ソレの燃焼によって魔術を使用している、と。

……大魔導、恐るべしだな。

コレは確かに、“意識を無意識に落とし込”まなきゃやってられない羞恥心だろう」



「す、ストーーーーーーーップ!!!!

き、教授!! そのくらいにして下さい!!

ファ、ファンタジーが!!

幻想(ファンタジー)が壊れます!!」



「まあ、そう言うならやめに……。

――待てよ? つまりアルは、直径10メートル近い火炎を生み出すだけの屁を常に体内にため込んでるってコトなのか?


どれどれ、ちょっと計算してみよう。

相当少なめに見積もって、アルの総火力がガソリン10kgくらいだと仮定する。

ガソリンはメタンの約7.5倍の火力があるから、その数値を元にコレをメタンに換算して物質量を求めると、約3700mol。

話を簡単にする為に理想気体の状態方程式を用いて考える。

集積器官の体積を心臓とほぼ同じの300ml、アルの体温を37℃(310K)として計算すると。

P=nRT / V

 =3700×8.314×10^3×310 / 0.3

 ≒32000000000Pa

これを気圧に直すと約320000atm。

よって彼女の“ガスタンク”の中には約32万気圧のメタンが圧縮されて――ってちょっと待て!! 32万気圧だと!? 高圧ガスボンベでも精々150気圧なのにか!?

……コレ、最早天文学的な圧力だろ。

大丈夫か? アイツ」



「が、ガスタン……なんてネーミングなんですか!!

き、教授!! ちょ、ホントに――」



「まあ、酸素さえ上手く排除出来ていれば、滅多な事では引火もしないだろうが……。

ガスタンクがこれだけ高圧なら、彼女は相当慎重に扱わないとマズイ生き物だな。

戦ったり暴れたりなんかは勿論NGだ。

何しろこの高圧ガスタンクが破裂したら、常圧換算で96000Lのメタンが一気に噴出する計算になる。

空気と混ざったメタンが引火する可能性もあるし、そうなったら文字通りの意味での爆弾だ。

ガスタンクが破れたら、そこから中身のガスが大気中に撒き散らされ、周囲一帯は一瞬にして――」



「きゃぁぁあぁあああああああ!!??

いい加減にしてください教授!!!!

そんな理論は絶対に却下ですよーっ!!!!

ヒロインの能力がソレじゃあ、朝マガ全体の評価に関わります!!」



「……まあ、コレは流石に生物として無理があるだろう。

そもそもメタンガス96000Lって言ったら60キロ以上。

それだけで彼女自身の体重を遥かに超えてしまう。

と、言うかだな。オレに効かないっていう時点で、火炎魔法が化学反応だっていう前提は既に半分却下だろう。ソレに、化学反応理論じゃ説明出来ない点もまだある」



「……なんですか?」



「炎の形だ。アルの生み出す火球は、丸い奴が多かっただろ? だが本来、丸い炎というのは存在しない筈なんだ。先に言った様に、燃焼反応には酸素(広義に酸化剤)が必要で、対流の影響で炎は通常、上に伸びる。もしも完全な球だったら、ソレは周囲から新しい酸素が吹き込んでいない事を示すから、あっという間に燃焼に必要な酸素を使い果たして鎮火してしまう筈だ。事実、無重力中では丸い炎が生まれるが、風を送ってやらない限り直ぐに消えると聞く」



「じゃあさっきまでのお話はなんだったんですか~っ!!!!」



「……だから火炎魔法は厄介だと言っただろう。

可燃性物質が無きゃ炎は存在し得ないのに、可燃性物質を仮定すると矛盾が生じるっていうのは、最早炎の概念そのものに挑むくらい困難な課題だ。

……仕方ない。ここではやはり、前々から利用している霊子理論に登場してもらおうか」



「むー……。やっぱり、最後はそこに落ち着くんですね。

……お手柔らかにお願いします」



「結構。

さて。我々は先ほどまで、炎を燃焼反応に伴う現象と考え、その結果として火炎魔法の正体に行き詰ってしまった。よってここでは、そもそも炎とはなんなのか、という点を考察し直す必要がありそうだ」



「へ? でもでも、炎の定義って、さっき教授が言ってたヤツですよね?

そこ、勝手に変えちゃっていいんですか?」



「“火炎魔法が燃焼反応によって炎を出す”、という点に拘るのならばNGだな。

だが、今回の命題は別に火炎魔法が燃焼反応じゃなくてもいいじゃないか」



「ど、どういう事なんでしょうか?

だって火炎魔法って、火を出す魔法なんですよね?

火って燃焼反応で出る物なんですから、ソレを変えちゃったら、もう“火炎魔法”じゃないじゃないですか」



「そう思うか? だが、考えてもみろ。

アルの出した炎が燃焼反応による“本物の炎”だと、一体誰が確かめたんだ?

我々が認識した事象は、彼女の手から“高熱と光を発する何か”が出たと言う事実だけであり、ソレが燃焼反応に伴う“本物の炎”だなんて誰も言ってないぞ?

逆に言えば、“高温と光を発する何か”さえ出せたのなら、それは炎として認識されてもおかしくは無いんじゃないのか?」



「む~、それはそうですけど。

そもそも、炎に偽物も本物もあるんですか?

熱くて、ピカピカ~って光って、メラメラ~ってなるのなんて、やっぱり炎しか無いと思うんですけど……」



「そうだな。では我々が炎を見る時には一体何を見ているのかを考えてみようか。

ここでは先ず、一番簡単な水素の燃焼反応を考えよう。

さて、基本的なところを確認する。

水素の燃焼を示す反応式は何だったかな?」



「はい!! 勿論それは――」



「……ボケるなよ?」



「……はい。

えーと、確か、

2H2 + O2 → 2H2O

でしたよね?」



「高校までの化学であればそれで正解だな。

だが、実際にはそうシンプルにはいかん」



「――へ?

ど、どういう事なんでしょうか!?

だってわたし、学校でこう習いましたよ!?」



「反応の終始のみをみれば正解だ。

実際、学校でもそう教えて間違いだとは言わない。

……でもな、なんかおかしいとは思わないのか?」



「おかしい、ですか?

でもでも、確かゲイのおじさんが発見した法則とかで、2個の水素と1個の酸素から2個の水が出来るとかって、かなり有名なお話だったと……」



「……ゲイ=リュサックの気体反応の法則、な。

人名は敢えてスルーするが、君の説明は少しばかり問題がある。

この式が説明するのは、分子一個一個の反応では無いんだ。

あくまで、2molの水素と1molの酸素から2molの水が出来る事を示した反応式にすぎないのさ」



「う……で、出ちゃいましたね、モルさん。

わたし、そこら辺のヤツ、なんかゴチャゴチャしてて嫌いなんですよ~。

モルさんにアボカドをぶっ掛けると個数になるとか、ぶっちゃけ意味が分からないです」



「……アボガドロ定数、な。今のは謝れ。

まあ、ここではあまり詳しくは触れんから、molというのは原子の個数を含めた色々な単位を表せる便利な単位、くらいの認識で構わないと思う。

さて。アボガドロ定数が10の23乗なんていう膨大な桁数である事からも分かるとは思うが、このmolという単位は、個数の単位に変換すると凄まじい事になる。

もう分かるな? 君が提示した式は、膨大な数の分子同士を反応させた時にその比を調べるとそうなるという事を示しただけであり、分子一個一個がその式のまま一度に反応する事を示した式では無い、という事だ」



「う~……。なんか、ちょっと混乱してきちゃいましたよ~……。

つまり、簡単に言うと、今のは分子が沢山ある時のお話で、一個一個を見た時にはちょっと違う――ってちょっと待って下さい!! なんか誤魔化されそうになっちゃいましたけど、やっぱりおかしくなんかないと思います!! だって、水素さん2個と酸素さん1個がぶつからないと、どう考えても水さんできませんもん!! この式!!」



「そうだ。今君は、反応するのにぶつかると表現したな。

その表現は中々に的を射ており、それ故にこの式のおかしさを浮き彫りにしている」



「? ど、どういうこと、なんでしょうか?」



「……分からんか? それでは少しばかり補足するが。

そもそも気体とは、分子がバラバラになって飛び回っている状態だったな?

そして君の説明した通りだとすると、火源からエネルギーを得て、水素分子2つが酸素分子1つとぶつかった時に水が出来る」



「? はい」



「……もう一度言う。

火源から反応に必要なエネルギーを得た瞬間、水素分子2つが、同時に酸素分子1個とぶつかった時にのみ、この反応が起きる」



「? はい。ですから、そうだと――って、あれ?

ちょっと待って下さい? なんか、ちょっとおかしい気も。

バラバラに飛び回ってる沢山の分子があって、ソレが全部同時にぶつからなくちゃいけないから――あっ!!」



「そういう事だ。反応に必要なエネルギーを得た3つの分子が同時にぶつかって、尚且つその構造を入れ替えるなんて、信号無視をかました主人公に右と左から同時にトラックが衝突するようなものだぞ? 確率的に厳しい」



「あれ? そう言われると、なんかよくありそうな気が……」



「……滅多に無い」



「でもでも、先輩たちのお話を聞いてると、結構――」



「無い!!」



「……はい。

でもでも、それだと、結局どうなるんでしょうか。

滅多に無いって言う割には、水素さんに火とか近づけると、毎回けっこうボンっていきますけど……」



「その謎を解くカギは反応過程にある。

全てを同時に起こすのが難しいなら、一つづつ順番に片づけていけばいいんだ」



「反応、過程……?

えーと、つまり、実は水素さんのボーンっていうのは、もっと色々な反応が沢山あって、上の式はソレが省略されちゃってるだけ、って事ですか?」



「察しがいいじゃないか。その通りだ。

一般に燃焼反応は、素反応とよばれる無数の反応から成り立っている。

まあ、複雑すぎるからここでは割愛させてもらうが、簡単に言うとH2が二つのHに分かれたり、同じくバラバラになったOとぶつかってOHを作ったりなどの、文字通りに上の式の途中経過の反応だとでも思ってくれ。このOだのOHだのをラジカルと呼び、不対電子を持ち、とにかく反応性が強いから、ぶつかるとガンガン反応して燃焼を進行させるワケだ。この際、原子や分子が電離したり、電子が励起したり下方遷移したりする反応も起こっていて、エネルギーが特有な光の形で出てくるから、我々の知るあの眩い発光体となる。因みに、この“電離した気体”の状態が、彼の有名なプラズマだ」



「…………。

(ぶっちゃけ半分以上意味不明なんですけど……)

でも、教授。結局、ソレが火炎魔法とどう関係するんですか?

ラスカルさんとか、イオンさんとか、プラズマさんとか、SF兵器ならいいんでしょうけど……。

なんか、あんまり魔法とは関係なさそうな気が……」



「関係も何も、もう殆ど結論だぞ?

つまり、オレが言いたいのはな。上記の“バラバラになった分子”の雲が、光と熱を出している状態が炎ならば、逆に高熱を与えて同じ様なプラズマを作る事さえ出来れば、ソレはもう炎と見分けなんか付かないんじゃないかって事だ」



「う~……。なんか騙されてる様な気が……。

要するに――、燃える物が何もなくても、分子さんがバラバラになるくらい熱しちゃえば、火の玉が出たみたいに見えるかもしれない、って事ですよね?

でも、そんなコト本当に出来るんですか?

霊子さんって、確か力を強めたり弱めたりってだけの人だった気がするんですけど……」



「霊子は明らかに人では無いがここではスルーだな。

さて。それでは、そもそも熱とはどうやって伝わる物なのかを考えてみる事にする。

熱が伝わる原理には熱伝導と熱放射、及び対流が存在するが……火炎魔法の説明を考えた際、最も重要なのは熱放射なので、今回はコレだけを取り上げる。

そして熱放射とは、熱源が電磁波を発する事によって熱を伝える現象である」



「電磁波――!!

で、電波ですか!?

ついに本物の電波が飛び出ちゃったんですか!?」



「いや。電波だけじゃ無い。

そもそも電波とは、電磁波の中でも特に波長が――」



「分かってます!!

あ、いえ。プラズマ云々は全然分からないんですけど、そうじゃなくってですね!!

……教授。作者、ガチガチの文系なんですよ?

中身を欠片も理解できない設定資料から会話を作るのって、想像以上に難しいんですよ?

作者さんの、そこら辺の苦労とか、ちょっとは分かってくれてます?」



「……何を言っているのか全く分からんが、話を続けよう。

先ほど既に述べた様に、熱とは電磁波によって伝えられる。

そして君が言った様に、我々の定義した魔力とは“力を変化させる力”であり、霊子とはソレを媒介するゲージ粒子の事だったな?

さて。時に、電磁波とは広義的な意味での光であるから、つまりは“光子(フォトン)だと言いかえる事ができる。

光子と、魔力。そして、電磁気力。

――何か気が付かないか?」



「アレ? なんか、その単語って、ちょっと前にどこかで見た気も――」



「そうだ。熱放射を光子と電磁気力の単位まで分析して考えてみると、少々強引ではあるが、コレは既に第二回で解明したアダマス鉱の体積変動の話と同一に扱い得る物になる。さて。そして前回、我々の定義する魔力には“光子の交換を促進する事によって電磁気力を強める働き”があるという話だったな? ならば今回、熱源から発された光に作用してその働きを強めてもおかしくは無いと思わないか?」



「へ? で、でもでも。そのお話だと、どっちにしてもその“熱源から出る光”が無いとダメなんじゃ……」



「……君には、オレの姿が見えているか?」



「? はい」



「……何故、オレの姿が見えるんだ?」



「光源からでた光が教授に反射して、ソレがわたしの目に――あっ!!」



「そういう事だ。

自然界には、初めから光なんて物は溢れ返っている。

夜の真っ暗闇だって、“可視光”が殆ど無いというだけで、広義的な意味での光までゼロにはならんぞ? つまり火炎魔法とはな。そういった自然界に存在する光に魔“力”を加えてエネルギーを上げ、結果生成された高エネルギー電磁波によって空気を形成する分子の結合を切る、或いは電離させる事によってプラズマを生成する魔法なのだと考える事が出来る。言わば“球電現象”だな。我々の世界に於いて科学的に証明された訳では無いので参考程度にしておくが、この時空に於いては、火炎魔法によって生み出されるのはこのプラズマの塊だと考えていいと思う」



「あう~。

相変わらず、ナニがなんなのかサッパリなんですけど……。

つまり、今回の結論は――」



「うむ」



火炎魔法で生まれる火炎とは、電離した空気によって形成されたプラズマの塊である。

火炎魔法の発動過程に於いては、先ず術者の体内に何らかの形で集められた霊子が放たれ、次にその霊子から与えられたエネルギーを周囲を飛び交う光子が吸収・極短時間のみ高エネルギー電磁波が生成される。その後、高エネルギー電磁波のエネルギーを得た空気分子が分解・電離する事によってプラズマが生成されるという現象が起こっていると推察される。


また、火炎魔法の火炎が電磁場の影響をあまり受けていない様に見えるという観察から、現段階では高エネルギー電磁波の発生時間が極端に短いという仮説を提唱しておく。発生したプラズマから再び光子が放たれ、その光子のエネルギーが再び霊子として奪われるといった反応が複雑かつ連続的に起こっていると説明するものである。火炎魔法の火球が飛翔するという現象は、高密度の霊子が光子と相互作用を繰り返しながら目標物に向けて移動する現象であると考えられる。



「まあ、こんなところだろうな。

こうなると、どうやら魔力というのは、あるゲージ粒子のエネルギーを別のゲージ粒子に移動させる働きを持つ力であると考えて良さそうだ。

あの世界に溢れ返っている霊子の持つエネルギーがそもそもどこから来ているのかについては、またどこかで考察する必要がありそうだな」



「あう~。

なんかよく分からなくて、ちょっとモヤモヤしますよ~」



「百聞は一見に強かずさ。

オレの左手を見てくれ。

例えば今、オレの掌からは霊子が出るとする。

オレはその霊子を用いて掌の上の領域に強い魔“力”を働かせる。

するとこの領域を通過しようとした光子は魔力による仕事を受けて、そのエネルギーを高めるワケだな。この高エネルギー光子が空気の分子に衝突すると、その内部エネルギーを大きく高め、電離させたりバラしたりしてプラズマを生じる。この際、励起した電子が下方遷移する際に光や熱を出す事で、我々にはそれが炎として認識される筈だ。

こんな風にな――」



――ペチ。



「…………」



「…………」



―――――



「はい!! それでは、今回のアイアイ★コラムはここまでです!!

どんどん電波で理解不能になっていくこのコーナー!!

一体どこに向かおうとしているんでしょうか!?

三回目にしてコレって、先行きがモノスゴク不安です!!」



「目的地も分からずに暴走している事は否めないがな。

まあ、相変わらず言っている事は何一つ分からんが――。

……ぬか喜びする前に、一応確認しておく。

今回はもう帰っていいんだよな?」



「ムッフッフ~。

教授、そんなコト言っちゃっていいんですか~?

今回、帰りたく無いって懇願するのは教授の方なんですよ~?」



「誰がそんな事を……ん?

ちょっと待て。なんかいい匂いがするな」



「そうです。そうなんですよ。

教授、実は~。

今日はお土産を持ってきてるんです!!」



――ジャ~ン!!



「こ、コレは、まさか……。

あの、懐かしの“アホ毛弁当”!!」



「……教授。

裏でそんなネーミング付けてたんですね……ってああ!!

そ、そんなにがっつかなくても!!

た、沢山ありますから!!

そんなに一気に飲み込んだら、お魚さんが――」



「うまい!!」



「~~~~っ!!

き、教授!! その笑顔は反則ですよ~っ!!

……でも。でもやっぱり嬉しいです!!

料理とか、得意な方だと思ってましたけど、やっぱりおいしいって言われるとスゴク嬉しいです!!

教授、そんなにわたしのお弁当、楽しみにしてくれてたんですね!!」



「……君は、食品偽装についてどう思う?」



「へ? どうって――もちろん許せませんよ!!

消費者をバカにするな~って、お母さんも怒ってました!!

あ。勿論、わたしだって、買い物する時には産地とかに気を使って――」



「……一度、その母親も連れてこっちに来い。

肉なら何でも気にならなくなるぞ?」



「きゃぁぁあああ!?

い、イヤです!! その境地、なんだかスゴくイヤです!!

そんなヘンな悟りなんか開きたくありません!!」



「フ。いつか礼をしようじゃないか。

モニ肉のハンバーグ、食ってみるか?

難なら、アルに頼んで“魔女釜”も作ってもらうが……」



「せ、せめて“食べ物”にしてくださいよ~!!

羽化する四つ口の生き物とか、緑の粘液とか、人間の食べ物じゃ無いじゃないですか!!」



「今のオレにとってはな!! ソレが日常的な“食べ物”なんだよ!!

農薬とか産地とかどうでも良くなるくらいの異次元世界なんだ!!

君にここでこの弁当を食べられたオレの喜びが理解できるか!?

断言する!! 君の玉子焼きは素晴らしい!!

これだけで単位をやってもいいと思える程になぁ!!」



「き、教授!! そ、そんな、なにも産卵中のウミガメさんみたいな目をしなくても――。

わ、わかりましたよ~!! 

どうせ本編に戻ったら記憶無くなっちゃいますけど、今日くらいはゆっくりしていって下さい!!

とにかく、みなさん!! 今日はこのくらいで、さよならです!!

(やっぱり、料理の出来る女の子って、ポイント高いですよね?)」


・「カツラを取って見せてください」

・敵国民からの襲撃

・魔装屋・ギルの破壊

・時計塔の破壊

・審問会での“カツラ事件”

・魔導研究所の床を地雷原に

・商店街で富豪買い

・バイクで門番をボン!!

・火炎魔法で騎士団をドカン!!

・アスガルド引き摺り自由落下

・「動くなぁ!!

一歩でも動きやがったら、このハゲの毛はねぇぞ!!」

――以上!! 真也君がたった3日で引き起こした大災害の数々でした~!!

……そりゃ悪魔って言われますって。

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