表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は君に一目惚れ。  作者: 作壁 守
第一章
5/12

第四話 教えて①

 二人だけの病室で藤雲さんの声が響く。

「杉村くんは勉強得意だったよね。」

「うん。」

隣の席だから当たり前といえば当たり前なのだが藤雲さんが僕のことを知ってくれてる事実に胸がいっぱいいっぱいになる。藤雲さんはいま布団の上に散らかった教材をまとめてくれている。散らかしているのがバレるのは恥ずかしい。…でもそれ以上になんか嬉しい。心がほわほわする。

「愛媛県では、みかんがたくさん生産されてるんだよ。」

「…なるほど」

「…みかんは他にも和歌山県でも多く生産されてるんだって。その理由は私が調べてきたから、あってるかわからないけどね、みかんは太陽に当たってる時間が大事らしいの。だから、みかんが作られるのは海沿いの山地が多くって段々畑と海から反射する光で太陽に当たる時間を伸ばしやすいってことらしい。」

「…ありがとう。」

(あれ?私は、自分が知らない知識を教えてもらえると知恵が広がった実感があって楽しいけど杉村くんは全然楽しそうじゃない。私、杉村くんの楽しいことも苦手なこともなにも知らない!?いつから私と同じだと思ってたんだろ。)

 少し不純な理由で授業を教える係に立候補して今ここで杉村くんの前にいる。あの日から私は杉村くんのことを知りたい。胸に引っかかった不思議な気持ちの正体が知りたい。という気持ちが抑えられない。そのためにいっぱいお話をしたいんだけど、会話が弾まない。杉村くんが授業に向ける眼差しは私にそっくりで私と同じだと錯覚していた。日常会話をしようにも杉村くんがどんな人かも知らないから投げる話題がわからない。これじゃどれだけボールを投げても届かなそうで、それは君と私とで明確なずれがあって。さっきまでは同じだと思っていたのに。そこには確かに壁があった。届くはずの距離を遮るように。

 今日は3日間の授業をサクッと教えるだけで終わってしまった。

 (このままじゃ何も出来ずに終わってしまう。私の胸の引っ掛かりは取れそうにない。こんなに頑張って教えに来てるのに。)


 (このままじゃ何も出来ずに終わってしまう。せっかく藤雲さんが会いに来てくれるというのに、藤雲さんのことを知りたい。少しでも、近づきたい。)


ふたりは示し合わせたように同じ結論へとたどり着いた。

『質問ゲームをしてお互いのことを知ろう!』

ふたりは質問をいくつか考えて次に会える日を待った。


 入院してから三日目僕の部屋にノックが響いた。開かれた教科書を閉じて「どうぞ」と言う。静かにドアが開かれてそこにはまだ緊張が見える藤雲さんの姿があった。

「こんばんは杉村くん。」

「ひさしぶり?藤雲さん。」

2日ぶりの藤雲さんの声に胸が弾む。藤雲さんはくすっと笑って土日ぶりに会うときと同じでそこまで時間は経ってないと言った。

「やっぱり藤雲さんって少し遠慮してるよね。」

「それはさ、杉村くんも一緒じゃないかな?」

少しの静寂が訪れる。質問ゲームは相手が聞かれたくないことも聞いちゃうかもで提案には少し心の準備が必要なのだ。前とは違って僕が先に口を開く。

「それでね僕たちはお互いのことを全然知らないってことに気付いたんだ。だから、お互いに質問をし合って少しでも知っていきたいと思って。名付けて、質問ゲーム。」

藤雲さんは少し驚いたような顔をして固まる。驚いた顔は可愛らしいがそれ以上に藤雲さんが嫌がってる可能性に気付いて焦りながら言葉をつなげた。

「ごめん。藤雲さんの気持ちを全然考えれてなくてごめん。ただでさえ教えに来てくれてるのに図々しいよね。」

「いや、ちがうの。実は私も質問ゲームをしようと思っていて驚いちゃっただけなの。いいよ質問ゲーム。その代わりって言うとおかしいけど、私が始めに質問しても良い?」

彼女と同じことを考えていたとわかって嬉しいけど信じられない気持ちもあって自分の頬をつねった。ちゃんと痛みを感じて安心すると同時にどんなことを聞かれるのか軽く身構えてから質問をお願いした。

「杉村くんの趣味はなに?この病室には教材以外なくって全然わかんなくってさ。」

聞かれたのは話してないことのほうがおかしいほどの普通の事だった。身構えた体をほぐしながら僕はどう答えるか悩んだ。

(ここで嘘をついて良いイメージを持ってもらうってこともできるのか。でも、僕は本当の僕を好きになってほしい)

少し考えてから僕は答えた。

「僕の趣味はゲーム。平日は3時間くらいしてて、土日は5時間くらいしてる。」

藤雲さんはまた可愛らしい驚いた顔をしてニコリと笑う。

「少し意外。杉村くんってもっと完璧で遠く遠くにいると思ってた。だから少し安心したかも。私が一方的に杉村くんのことを知るのもフェアじゃないよね。私の趣味はアニメとプラモデル。ロボット系のアニメを見てそのプラモデルを作ってるの。」

(……家に帰ったらプラモデルやってみようかな。)

今まで知らなかった藤雲さんの姿がわかってまた少し近づけた気がした。そしてもっと仲良くなれば手がつなげる日がくるのかも。そう思うと一気に胸の鼓動が早くなる。

「次は杉村くんが質問して。」

質問ゲームは続く

次回は明日の20時に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ