第三話 病院で君が
部屋の扉がノックされた。(心配性な両親がまたお見舞いに来たのかな。)と思いつつ僕はどうぞと声を出す。そこに入ってきたのはいつもどおりの笑顔を振りまく担任の先生と少し緊張が感じられる顔をした藤雲日車だった。
先生は
「体育の時にもっと注意をしていればこんなことにはならなかった」
「僕もあんまり寝てなかったからどっちもどっちだよー」
「休んでいる間の授業は藤雲さんが2,3日に一回やってきて教えてくれるということになったのでよろしく頼む」
(えっ。それはすごくうれしいけどどうやって?!)そんな驚きは周りには気づかれない。
「杉村くんが頭をぶつけたときにすぐに藤雲さんが駆け寄って膝枕と絆創膏を貼って先生を呼んだんだ。もしも藤雲さんが素早く行動できてなかったらもっと大事になっていたかもしれない。先生の不注意とはいえ藤雲さんに感謝を言ってあげてくれ。」
「藤雲さん。ありがとう」
「どういたしまして。」
風がなびいてカーテンが動く。光を遮るものがなくなり部屋に光がさす。彼女のほんのりと赤くなった顔が照らされた。自身の行動を褒められて照れているのだろうか。
「先生はこのあと用事があるから出ていくけど藤雲さんはどうする?」
「勉強を教えるので残ります。」
「じゃあ、これで」
先生が去り、扉が閉まる音とともに病室には二人だけの空間が生まれた。心臓の鼓動が耳にまで響くようで、ほんの少し息を止めてしまう。藤雲さんも緊張しているのか、しばらく口を開かなかった。掛け布団の上に乱雑に置かれた教材たち。風によってパラパラと教科書がめくられていく。窓の外に広がるのは雄大な山々。まるで世界に僕と君の二人しかいないような気持ちになった。時計の針の音が二人の部屋で大きく響く。風に揺れるカーテンが二人の間をふわりとつなぐ。君はどんどん顔を赤らめる。僕の心臓も大きく脈打つ。
しばらくして藤雲さんが口を開いた。
「顔も耳も真っ赤っ赤だけど熱はない?気だるくない?」
「う、うん」
「ごめんね考えも聞かずに勉強を教えることにしちゃって。」
「藤雲さんは勉強もできるから正直嬉しいよ。でもなんでこんなことになったの?」
「実は私ここの院長の娘で近くに住んでるんだよね。だから毎日病院に通えるってことと、もっと早く私が杉村くんの体調不良に気づけていればこんなことにならなかったから。せめてなにかできることをしようと思って立候補したの。」
「本当にありがとう」
「早速この3日間の授業を教えるね。」
こうして僕のワクワクに溢れた入院生活が始まった。
次回は明日の20時に投稿します。




