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僕は君に一目惚れ。  作者: 作壁 守
第一章
2/12

第一話 自分を見直す。

前回のあらすじ⋯ゲームが大好きな杉村悠太は成績優秀の藤雲日車(ふじくも ひぐる)に一目惚れをし、ダメダメな人になってしまった。そして、席替えで彼女が隣の席になった。


 先生「じゃあ61÷10がなぜ6あまり1になるのか男子が右の女子に説明してください」僕は何一つわからなかった。なぜなら授業内容がまったく頭に入っていないからだ。ずっと隣りにいる藤雲さんが気になって気になって仕方がない。(僕の鉛筆の持ち方はこれであっているのか?)(椅子と背中、机とお腹どっちも拳1個分開けれてるかな?)とにかく藤雲さんの目に僕がどう映るのか気が気じゃなかった。そんな中で学んだことを説明できるわけがないだろう。結果として僕は口をチャックで閉じた。藤雲さんは少しおかしそうに笑いながら「わからないの?」と聞いてきた。僕が小さく頷くと彼女は優しい笑顔で教えてくれる。

「もしここに61個のトマトがあってそれを10個ごとに袋に入れると何袋できる?」

僕は手で6を示した。

「正解!そこであまる一個をあまり1って言うの。だから61÷10は、6あまり1なんだよ。」

優しく想像しやすい例えで教えてくれた。それなのに僕はありがとうの一つも言えなかった。

 僕はこのままで良いのだろうか。藤雲さんはこんな僕を好きになってくれるのだろうか。ありえないだろう。喋らずに勉強もできない僕を好きになってくれるわけがない。そこで初めて自分が今までどれだけ恥ずかしいことをしてきたのかがわかった。このままじゃだめだと気づけた。

(僕を好きになってもらうために努力をしよう。)

僕は心のなかで小さな決意をした。

まずは家での行動の見直しだ。今までの僕は家に帰り次第宿題もせずによるご飯までゲームをし続けていた。先生の怒りも周りのいじりも親の声すらも僕に届かなかった。家に帰ると親は諦めているような口調で「宿題してね」といった。いつもならなんの返事もせずにゲームを始めるのだが今日は違う。元気な声で「うん!」と返事をし僕は算数ドリルを開く。連絡帳に書いてある宿題の算数ドリル3ページをやっていく。なかなか終わらなかった。それはそうだろう、7ヶ月もの間授業が頭に入っていなかったのだから。教科書も開いた。教科書とドリルを並行して進めていく。10分かけてやっと一問それでも頭に入っている気がしない。次第に鉛筆の音は減っていった。初日は1,2問解くだけで疲れてゲームをしてしまった。それでも心の奥では藤雲さんのことでいっぱいだ。藤雲さんと少しでもお話できるように、藤雲さんと一緒に問題を解きたい。それから数日たっても、ドリルはまだスラスラとはいかなかった。解ける日もあれば、同じところでつまずく日もある。でも、前のぼくよりは少しだけノートが埋まっていく。そんなちょっとの成長が藤雲さんに近づけた気がして。うれしかった。お母さんに見せると優しく頭を撫でてくれて、やる気がいーっぱい出た。

 11月の終わり頃再び先生が隣の人と話し合うよう言ってくれた。今度こそはと跳ねる心臓を手で抑え息を吸う。

「0.5+1.1は、5+11をしてあとから点をつければ良いんだよ。だから答えは1.6!」

「わぁすごい!ありがとう。」

僕の心は幸せな気持ちであふれると同時に口へ指示を出した。

「僕も、この前はありがとう。」

彼女はニコッとわらってくれてそのまま話し合いの時間は終わった。

でも、藤雲さんみたいに“かんたんで綺麗な説明”はぼくにはまだできない。あとでノートを見直してみると、びっくりするほど文字が汚かった。もっともっとわかりやすく書きたい。わかりやすく伝えたい。その気持ちが強すぎて、ぼくは文字を書き直すために、少しずつ睡眠時間を削るようになっていった。

次回は明日の20時に投稿します。

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