表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

8. 精霊王の日常2

随分間が空いてしまいました。

また時間を見つけつつ更新再開させて頂きますので、よろしければお読みいただけますと幸いです。

―side創世の木の精霊


我らの王がお目覚めになられてから既に200程は日が昇り降りした頃、私は王の居室に呼ばれた。


王は当初かなり混乱されており、暫くはお一人で過ごされるとの事で、時折私共へ質問をなさる以外では眷属達も殆ど呼ばれる事は無かった。

しかし徐々に御心を落ち着けられたのか、段々と私や花畑の精霊達と交流を持たれるようになり、様々な魔法を覚えるのにも大変意欲的になられました。


王は先代様に比べ喜怒哀楽がかなりはっきりしていらっしゃるようで、色々な事に興味を示されるお姿はまるで火や風のに近い物を感じます。

植物を司る私は感情といったものが少々乏しい為、王が先代様の話を聞かれて悲しげな表情をなさったり憤りを見せられたり、また先日などは初めてお一人で飛べるようになったと文字通り飛び上がって喜びを顕にされ、そのどれもが私にはとても眩しく感じられるのです。


王は誰に対しても柔らかな笑顔をよくお見せくださり、先日など私に“ビオ”という呼び名をつけてくださり、母とまで呼んでくださいました。


ご降誕当初は飛ぶ事も適わず、私が気付いた時には枝から落ちて下の枝にぶつかりそうになっている瞬間でしたから、私は先代様のお身体が砕けたあの日以来の焦りという感情が己を包み込むのを感じました。

あの時はなんとか王の玉体よりも太い枝を避けさせ、細い枝葉で落下のスピードを減退させるので手一杯で、花畑のあの子が来てくれなかったらと思うと今でも言い知れぬ恐怖が私を支配します。

そして王が無事であった事に今でも望外の喜びを感じるのです。


王の代替わりという事自体が初めてであり、我ら眷属の大精霊を筆頭に全ての精霊が待ち望んで居ただけに、玉体を育む栄誉を賜った私はもっと厳重に、最善の注意を怠ってはいけなかったのですが⋯その事を謝罪した際にも王は笑って『あの時私が無事だったのは避けてくれていたお陰もあったんだね!楽しみにしてくれていただろうに、私何も出来ない未熟児でごめんね?⋯これからも迷惑かけるかと思うけど、よろしく、お母さん!』と、照れと申し訳なさの入り交じったお顔で、それでも明るく仰って頂きました。

正直私などが王母を名乗るなど畏れ多く、また確かに王は私の宿る木に芽吹いた蕾に居られましたが、あの花の部分は女神様のお力により私からは切り離された場所だったので、正確には違うのですとお伝えしたのですが‥・細かいことは良いのだと朗らかに笑いかけてくださいました。


先代様は私達が生まれるより前からこの星を安定させる為に女神様の唯一の僕として静かに穏やかに君臨なさっておりましたが、新たな王は私達に陽だまりのような笑顔を向けてくださるお方。

どちらが良いという事ではなく、私達は本能から、そしてその陽だまりによって温められた感情から、このお方を現在至上の主として不自由のないようお仕えする所存です。



そんな事を考えながらも王の居室をノックする。


すると中から明るい声で「はーい、どうぞー」と聞こえてくる。

私は失礼致しますと断りを入れてから扉を開けて一礼する。そんな私の姿を目にとめると王はニコリと微笑み、向かいのソファーへ座るよう促される。


正直に言うと、このような人族的なマナーの作法にはあまり自信が無いが、王も気にしなくて良い(寧ろ畏まりすぎだ)と仰ってくださったので、今は現状維持をしています。

そのうち風の精霊の力でも借りて、現代の人族のマナーという物を学んでみるのも良いかもしれませんね。

人族のマナーや作法というものは、我々が瞬きをする間に変わっている事があるのだが、王が好んで人族の姿をとっておられる以上、我々も合わせる必要がございますので。


私がこちらに呼ばれる際は、王がこの世界の事やご自身の事に関する質問をされる事が多い。

時折遠くを見つめられる事もありますが、基本的にはキラキラと期待するような眼差しでアレコレと質問して下さるこの時間は私にとって既にかけがえの無い幸せな時間なのです。

本日はどのようなご質問なのか、王の方を向くと⋯何やら照れていらっしゃるような、迷っていらっしゃるような、顔を赤くされたり青くされたり視線もあちこちさ迷いながらなんとか言葉を紡ごうとなさっているのが見て取れる。

そうして幾度かの逡巡の後、徐にこちらを見据えた王が意を決したように


「ビオ母さん!私にお仕事をくださいっ!!」


そう言って頭を下げられました。

さらさらとしたシルバーブロンドが床に付きそうなほど(いえ、少し付いてますね)頭を下げられた王に私は困惑を隠せません。


「どうか頭をおあげください、一体何故仕事などと仰るのか理由をお伺いしても?」


そう問いかけると、どこまで言っていいのかと目をさ迷わせながらも、少し外の世界や人族の町を散歩したいが、そのためにはお金がいるのではと思い至り、労働の対価として金銭が欲しいという話のようです。


我らの王は真面目でございますね。


正直人族に思うところは大いに御座いますし、そのような輩の所へお出かけになられるなど、あまり歓迎できる事では御座いませんが、王のこのお顔を見て誰が否やと言えましょうか…。


しかし困りましたね。

人族が用いる通貨は時代と共に変わっており、我々は使用する機会も無い為に持ち合わせておりません。

ですが、人族が欲しがる物なら自然界には五萬とございます。

その中でも特にどの時代でも人族が欲するものなどには礎の土の精霊辺りはかなり精通していると言えるでしょう。

どの人族も古より光を反射するような鉱石には多くの資金を出すと聞いておりますからね。

協力を仰げばなんとかなるでしょうか。


ただ仕事と言われましても眷属たちがおりますし、この城自体が手入れを必要としないので特にないのが実情です。

それでも王のやる気に満ちたご尊顔に誰が否やと申せましょうか…。

ここはひとつ、我々の目が届く場所で簡単な"お遣い"をして頂いている間に風と土のに協力を仰ぎましょうか。

出来る限りこのお方の願いを叶えたいと思うのは、眷属ゆえの感情でしょうか、それとも…。

いえ、これ以上は今考えるべきではありませんね。


「それては…誠に僭越ではございますが、少々お願いをしても宜しいでしょうか?」


そうして先の算段をつけながらもとあるお願いをするのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ