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5.神話と原因

――創成の時代、女神様は己の力を核としてこの星を生み出し、地の中に眠る力を大気中に循環させるため精霊王様を生み出し、さらにその眷属となる精霊に環境の維持を任せた。

清純な力が満ちた星には徐々に様々な生き物を生が生まれるようになった。

しかし、いつまで経っても知性を持つ生き物や文明が生まれない事に業を煮やした女神様は、星に根付いた生き物に自身の力をほんの少し込めて、女神様に似た“人族”と呼ばれるようになるエルフ・ドワーフ・獣人・人間といった所謂人型の生き物を生み出した。


様々な種族が一つの大陸のあちらこちらで少しずつ星に息衝き、やがて星は女神様の手を離れ、独自の進化を辿り始めた。

しかし、各々の種族が徐々に繁栄してきた頃に最初の異変が起こった。

数が増え、力をつけた人族達が其々の思想や欲を抱き種族問わず争うようになり、そういった諍いが増えるうちに生き物の強い思念…特にマイナスの感情が星の力と結びつき、後に瘴気と呼ばれる汚染を引き起こす事となる。


この汚染は星の力が停滞する事により発生する淀みに似ており、精霊王様が星の力を循環する事により浄化を促し、さらに属性を司る精霊が大陸に散って星の力の動きをアシストする事で星の力の安定を図っていた。

しかし、日増しに人族が増えていき、力の汚染量が多くなることによって、精霊王様や精霊達の力が及びにくい場所が出来てしまい、そうした場所には“魔溜まり”と呼ばれる汚染された星の力が停滞する場所が出来るようになる。

汚染された星の力はその地に住まう生き物の在り方すら変え始め、本来の姿から歪められてしまった“暗き生き物”達を生み出したのだ。


暗き生き物は多くの汚染された力を取り込む事により総じて元となった生き物より大きく攻撃的であり、全ての生き物へ襲い掛かる。その体内には人族が魔石と呼ぶ石が生成される。魔石は星の力が魔物の体内である程度浄化されて結晶化したものであり、暗き生き物はある種の星の自浄作用の結果とも考えられる。


しかし人族はそんな事はお構いなしに争い、暗き生き物を魔物と呼び、彼らを討伐していく。

まるで地上の覇者であるかのごとく勢いづいた人族の一部はやがて、精霊族すらも魔物の一種であると言い出し、あろうことか星の力を循環させる精霊を捕らえて支配し、その力を己の物にしようとした。

上位の精霊はそのような支配は受け付けないが、下位の精霊では個としての意識が薄く、人族の中でも星の力を多く保持している個体の者に支配されてしまったのだという。


そうして更に勢いづいた人族は精霊から引き出した星の力すら利用し、一層争いを激化させ、いよいよ星の存続に影響が出る程の瘴気を生み出すほどの世界規模の争いへと発展していく。


多くの精霊達が捕らわれ、星の力の汚染も止まらず、星の生き物の営みに直接関わってこなかった上位の精霊種や精霊王すら放置できる状況ではなくなってきた。

上位種の精霊は人族に捕らわれた下位精霊達を取り戻そうとしたが、そこから争いに発展し、更なる力を手に入れる事に貪欲な人族は次第に上位精霊や精霊王様すら己が力としようと画策し、その際限のない欲望はとうとう精霊王様の怒りに触れる。


その怒りは強大な力となり、一つだった大地を割り争いを行っていた人族の多くを瞬時に消し去る。

大地は東と西で二つに分かれ、中心に原初の木のある島だけが残された。

元凶となった人族の大半を消滅させ、再び争いが激化しないよう大地を割った事で平和が訪れると思ったのも束の間、精霊王の身体が徐々に結晶化していった。


本来星に根付いた生き物達全てを生かす為の調整役である精霊王が、多くの生き物を消滅させるというのは存在定義から外れており、その存在自体を保つ事が出来なくなったのだ。

精霊王の身体は徐々に全身が結晶化し、全身が結晶となるその寸前、突如眩い光が天から降り注ぎ精霊王の身体を包み込んだ



―――我が眷属よ…貴方に全てを背負わせてしまいごめんなさい。―――

―――これから1000年の月日をかけこの子の身体が完全に星に還る時、新たな精霊王がこの地を正しき形へと導く事でしょう。―――



そのどこか懐かしいような声を最後に光が収まり精霊王の身体は砕け散り散りに飛び散った。

その身体は各地を癒して浄化し、やがて星に取り込まれる事で星の環境を保ちつつ新たな精霊王を生み出す養分となる筈であった。


しかしここで一つの誤算があった。

本来であれば各地で時と共に役割を終え吸収される筈の一部の欠片が吸収されず、未だにこの世界に在るのだ。

と言うのも、生き残った人々はバラバラになった精霊王の身体の欠片の中でも特に大きな欠片の周りでは魔物や瘴気の発生が無い事に目をつけ、そうとは知らずに各地の欠片を回収しては自国の結界の中のみを浄化する為の機構として利用した。

本来であれば広い範囲を浄化し、段々と小さくなる筈だった欠片は、人間が指定した小さな範囲結界の中のみで使用される事で消耗速度が変わり、浄化されるはずだった自然界にも欠片の縮小率にも影響を及ぼしたのだった。


世界には未だに精霊王の欠片であった人族が聖結晶石と呼ぶ元精霊王様の身体があるという…。


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