8.精霊王、旅に出る 1
出かけると決めたら勢いが大事!
という訳で早速現世の保護者であるビオ母さんにお小遣いが欲しいから仕事をしたいと相談した。
「あの、大変申し上げにくいのですが、我々精霊は人族の使う金銭というのは必要がないので持ち合わせがなく。それに王に働いて頂くなどということは…。」
確かにお金のやり取りする精霊ってイメージつかない。私はまだ前世の感覚が抜けきらないので、働いてお小遣いを貰うのが当たり前のように思ってしまっていた。
少し反省しつつも代替案を考える。
「えっと…お金じゃなくても、宝石とかピカピカした感じの鉱石ならお金と交換してもらえると思うんだけど、心当たりない?流石に働かないでスネかじりする訳にはいかないし、何か手伝える事とかあればしたいし!掃除とか洗濯なら多分出来るよ!」
ぐっと両手を握り力説する。ここで説得できなければ無一文スタートで異世界散歩となってしまう。
何も食べなくても生きていけるとはいえ、異世界グルメを堪能したい私には先立つ物が必要なのだ。
「こちらの城内は私の領域ですので、特に掃除の必要は無いのですよ。洗濯も担当の精霊がおりますので…」
困ったように答えるビオ母さんに私もガックリと項垂れてしまう。
うんうんと唸る私に苦笑しながら「でしたら……」とビオ母さんが話を続ける。
◇ ◇ ◇
お手伝いを申し出てから数日後、私は結界の壁の目の前に腕組みをして仁王立ちしていた。
今日はいよいよ労働の日である。
あれから色々と話し合い、鉱石や宝石の類には心当たりがある(扱う精霊と話してくれる)というので、なんとか労働の方も捻り出してもらった。
私の周りには小さな精霊球が5〜6個浮かびながら行ったり来たりしており、斜め後ろには最初に助けてくれた水色の精霊ネモが控えている。
(ネモフィラに似た花の妖精だったのでそのままの名付けをしてしまった。大丈夫、バレていなければセーフだし)
今日はこのパーティーで結界の外の森に出る予定だ。
ビオ母さんから頼まれたお仕事をこなす為に!
「みんな、準備はいいかな?」
私の周りに浮かんでいた子達がフヨフヨと浮かびながら明滅する事で意思表示する。
今日はこの精霊球達と結界の外に出て、森の中でこの子達が宿れる新しい植物を探すのだ。
花畑で産まれた精霊達はある程度すると一部の個体を除いて結界の外に棲家を変える。
そして一度棲家を決めた精霊はその土地で星の力の循環を助け、そこで役目を終えれば星に還る。
遠くの地であれば風の精霊に手伝ってもらい、たんぽぽの綿毛の様に風に乗って飛んで行くのだけど、今回はこの森の中という事もあり、そのまま浮かんで移動していく。
私の任務はこの子達が宿る場所の選定を手伝う(見学する)事だ。
結界の外に出るのは何気にこの世界に生まれて初めての事。
異世界巡りの旅の第1歩として、ご近所散策というのはRPGの最初の薬草詰みのようで、ここからレベルアップしていく感じがあって大変良い。
やる気と期待に満ちた瞳で胸の前で両拳を握りしめ、気合いを入れてから結界の先に1歩を踏み出す。
未知の感覚を恐れて目をギュッと閉じながら跨いでみたが、身体はあっさりと何の感触もなく結界壁をすり抜けた。
例えるならばレーザーとかで作られた光の壁のようで、あまりの感触のなさに拍子抜けする。
コレ、本当に何か効果あるんだろうか?
一応何となく神聖さというか、外と中では空気の質とかに違いがある様に思えるんだけど、感触が無さすぎてあまり分からなかった。
暫しその場で片手を出したり入れたりして感触を確かめていたら精霊球達も面白がって出たり入ったりとその場をクルクル回っている。
うむ、楽しそうでなにより。とか思ってふと後ろを振り返ると無表情のネモが控えていた。
呆れとかでは無いけれど、何をやっているのかもよく分からないといった困惑なのだろうか……ビオ母さんしかりこの子しかり、私の出会った人型精霊は今の所表情があまり動かないことが多い。
全くでは無いが、喜怒哀楽が殆ど表に出ないので、基本ベースが無表情に近いのだ。
けっして呆れてる訳では無いと思いたい…。
そこを思うと小さな精霊球たちの方がはしゃいでる分感情が表に出やすいような気がする。
まだ出たり入ったり私の周りを回っている子達を見遣って私だけがはしゃいでいる訳では無いのだと心の中で言い訳しながら結界壁に背を向ける。
「さ、さあ!みんな行くよ!」
右拳を振り上げてオーっとやりながら目の前の森に向かって歩き出す。
さあ、冒険の始まりだ!
大変遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。
本年も何卒よろしくお願いします。
もう少し更新ペースを上げたいと思っている最中、年明け早々にPCが壊れまして、更に進まなくなってしまっています。
できる限り月1~2回のペースで更新を頑張りたいと考えておりますので、長い目でお付き合い頂けますと幸いです。
引き続きよろしくお願いします。




