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第八話:小さな同居人

小さく鳴る声は、まるで小鳥のさえずりみたいで、どこか気持ちのいい音色のようだ。


まだ少し緊張したけれど、敵じゃないって伝わったかな。そっと近づいて、手を取ってみた。

信じられないくらい軽くて、まるで鳥の羽根みたい。

取り敢えず、このまま森に置いておくわけにはいかない。


日が暮れれば、もっと危ない目に遭うかもしれない。幸い、今日は森の奥深くまでは入っていない。

少し距離はあるけれど、家まで連れて帰ることにしよう。距離はあるが、自分の家まで連れて帰ることにしよう。


けれど、こんな伝説の生き物に、許可なく触れていいものだろうか? エルフなら、独自のルールがあるかもしれない。少しためらいながらも、震える小さな手をそっと取った。温かく、けれどとても壊れやすい感触が、手のひらに伝わってくる。まるで、一滴の光を握っているようだ。


家に着くと、まずはエルフを木の椅子に座らせた。


「大丈夫、ここは安全だ」


もちろん、言葉は通じないだろうけれど。


おなかはすいているのかな。なんだか困っているみたいだし、何か食べ物を分けてあげよう。

祖父の話では、エルフは伝承では森の妖精とも呼ばれていて、植物を食べると聞いた。家にある甘い香りの赤い果物を差し出してみる。


「ほら、食べるか?」


エルフはその赤い果物を不思議そうに見つめ、そっと首をかしげ、指先で触れてみる。

さっきのような警戒心は見せていない。


小さく、けれどはっきりと「エル」と名乗った金色の髪の生き物。本当にエルフなのだろうか?エルフの伝承は、今日まで語り継がれているけれど、実際に見たという者は誰もいない。こんな小さな体で、一体どこから来たのだろう。言葉も通じないし。


食べ物を分けてあげたのは、正しかっただろうか。少しは安心したように見える。けれど、このまま家に置いておくわけにもいかない。一体どうすれば……。


明日、街の教会に連れて行って、神父様に相談してみよう。

もしかしたら、何か知っているかもしれないし。

こんな伝説の生き物のことなんて、ただの木こりには手に負えない出来事だよな。


(エル視点)


差し出された赤い果物。リンゴに似た形をしている。

そっと指先で触れてみると、皮は滑らかで、かすかに甘い香りが漂う。


そういえば…… この世界 に来てから、何も口にしていなかった。 初めてこの世界で出会った人に 突然 出会い 、 助けを求めていた せいか、空腹を感じる余裕もなかった。


今、目の前にあるこの 赤い食べ物 は、リンゴに見えるけど安全なのだろうか?けれど、体は 有無を言わさず に 空腹 を訴えている。


意を決して、赤い果物を小さく口に運んだ。


甘い! 自分が知っているリンゴとは違う、強烈な甘さが口いっぱいに広がる。味はもちろん、その瑞々しさも、これまでに味わったことのないものだ。

一度味わうと、抑えられていた食欲が一気に溢れ出した。私は、差し出された赤い果物を夢中で頬張り始めた。警戒心など、もうどこかに吹き飛んでしまった。空腹のお腹は、この味を有無を言わずに求めていた。


気がつけば、お腹は満たされていた。勢いよく食べたせいか、少し眠気すら感じる。満たされたお腹と共に、少し冷静さが戻ってきた。


私は、周りを見回した。木の香りがする、小さな空間。正面には、何故か自分に見惚れている木こり。私は、一体どうなってしまったのだろう?なぜ、森の中でエルフになっていた?そして、これから、どうすればいいのだろうか……。温かいお腹とは裏腹に、冷たい不安が、再び少し胸に住み着き始めていた。


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