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第三十五話:通行証と新たな街

アランとエルは赤髪の冒険者と別れ、静かな森を歩き続けた。やがて、遠くに人の道が見えてきた。アランはその道を見つけると、ほっと息をついた。


「これが、さっき言っていた街に続く道か……」


彼は無意識にそうつぶやいた。後ろを歩くエルは、どこか遠くを見つめているようだった。赤髪の冒険者が頭から離れない。エルには、その人物がどこかで見たことがあるような、誰かに似ている気がしてならなかった。それが何なのか、今もはっきりしないままだった。


アランはエルに気づかず、手に持ったエルフ語の辞書を開き、もどかしそうにページをめくっていた。時折、ため息をつきながらエルに声をかける。


「もう少しで街だよ。頑張って、エル。」


エルはうなずき、アランを見つめた。


二人は黙々と歩き続け、やがて森の向こうから賑やかな音が聞こえてきた。街の音だ。アランは耳を澄まし、微笑んで言った。


「ほら、もうすぐだ。街に着くよ。」


エルは軽くうなずき、二人は足早にその音に向かって歩みを進めた。やがて、街の入り口に大きな検問所が見えてきた。そこには数人の兵士が立っていた。


「ここか……」


アランは少し緊張した様子で、検問所に向かって歩き始めた。兵士の一人が二人を見て驚きの表情を浮かべ、声を上げた。


「おい、ここら一帯は通行禁止だぞ! なんで歩いているんだ?」


アランは慌てることなく、冷静に答えた。


「通行証を持っています。」


そう言って、腰のポーチから通行証を取り出し、それを兵士に見せる。兵士は一瞬、それを確認し、驚いた表情を浮かべた。


「これ……本物の通行証だ。」


兵士は少し動揺しながらも、すぐに冷静さを取り戻し、声を整えた。


「失礼しました。通行証は確認しましたので、どうぞお通りください。」


アランとエルは軽くお辞儀をし、そのまま門をくぐった。


その後、検問所の隊長がやって来て、兵士に声をかけた。


「誰か通ったのか?」


兵士は慌てて答えた。


「先ほど、通行証を持った二人組が通りました。」


隊長はその言葉を聞いて驚き、声を上げた。


「この時期に通行証? 上位の冒険者ならギルドカードで通すのが普通だが、通行証はまた別だぞ。あれを発行できるのは、貴族でも無理だ。冒険者ギルドのトップや王族くらいしか発行できない代物だぞ!」


兵士は震えながら答えた。


「でも、あの通行証は本物でした……」


隊長はその答えに納得がいかない様子で、何も言わずに二人が通った後をじっと見つめていた。その目には、明らかに疑念が宿っていたが、それ以上は何も口にしなかった。


一方、アランとエルは街の門を抜けると、賑やかな街の音に包まれ、目の前の活気に圧倒されながら歩き続けた。アランは感動したように周りを見渡しながら言った。


「すごいな、この街。僕が育った街よりもずっと大きい!」


エルもその広さや活気に心を動かされていた。言葉には出さずとも、彼女の心は震えていた。


二人は街の通りを歩きながら、アランは新たな冒険の予感に胸を躍らせ、エルは自分の中で解けない謎に思いを巡らせていた。それぞれが抱える疑問や期待を胸に、二人は新たな一歩を踏み出した。

アランが育った街に冒険者ギルドがないのは、あの街が現役を引退した冒険者たちが暮らす場所だからです。ワイバーンなどが襲ってきても、警備の人が簡単に退治してくれます。ギルドを置かない理由は、引退した冒険者たちがギルドとあまり関わりたくないため、あえて設置していないのです。アラン達は知りません。



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