表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/43

第二十一話:装いと言葉、そして笑顔の輝き

青年は、神父様から借りた古い翻訳本を片手に、地下室でエルフ語の勉強に励んでいた。神父様の教えのおかげで、少しずつ理解が進んできたが、それでも難しいと感じることが多かった。


そんな時、静かな部屋の中でドアの向こうからシスターの元気な声が響いた。


「神父様ー、入りますよー!」


シスターがにっこりと笑いながら部屋に入ってきた。その後ろには、息をのむほど美しいエルが立っていた。さっきまで着ていた粗末な服とはまるで違う、淡い藤色のレースのドレスを身にまとっている。まるで春の妖精のようで、その姿はまばゆく、見る者を惹きつけた。青年は思わず目を奪われ、エルの姿を見つめていた。憂いを帯びた雰囲気はなく、まるで魔法にかけられたような、華やかで神秘的な印象を受けた。


神父様はその姿を見て、少し驚いたように言った。


「修道服を着せろと申したじゃろうが!なぜ違う服を着せておるんじゃ?」


神父様の声には少し怒りが混じっていたが、その目はどこか見惚れているようにも見えた。青年もまた、その美しいエルの姿にしばらく言葉を失っていた。エルの美しさは、まるで絵画から抜け出したかのようだった。


けれど、エルの表情は無表情で、どこか疲れた様子にも見えた。シスターは嬉しそうに言い続けた。


「だって、何を着ても似合うんですもん!だから、いろいろ着せてみたくなっちゃって!」


神父様は肩をすくめ、少し困ったような表情を浮かべながらエルを見つめていた。その後、神父様はゆっくり立ち上がり、言った。


「ちょうどよかった、もう時間じゃろう。勉強も一旦終わりにして、夕食にしよう」


シスターはその言葉にすぐに反応した。


「ちょっと待って!坊やの感想を聞いてないでしょ?」


神父様は少し呆れた様子で「そんなの後でいいじゃろ」と答えたが、シスターは譲らなかった。


「いや、絶対に聞いてもらわないと!だって、坊やもいるんだから!」


その姿に一瞬、心を奪われた青年だったが、シスターの屈託のない笑顔と言葉に、はっと我に返った。同時に、胸の奥で小さな火が灯るのを感じた。(そうだ)と彼は心の中で呟いた。(これは、覚えたばかりのエルフ語を試す絶好の機会だ)。緊張と期待が入り混じった鼓動を感じながら、青年は意を決して、エルフ語でエルに向かって言葉を紡ぎ始めた。


「エル…服…似合ってる…」


最初、無表情だったエルの顔に変化が現れ、次第に笑顔が戻ってきた。その瞬間、後ろでシスターと神父様はニヤニヤと微笑み合っていた。


青年は少し照れながらも、エルフ語を使うことができた自分に誇りを感じていた。

そして、何よりエルが笑顔を取り戻したことに、ほっとした気持ちがこみ上げてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ