第二話:とまどいながら、森のなか
見慣れない森の中で、全裸のまま立ち尽くしていた。
冷たい空気が肌をなで、遠くから鳥のさえずりが聞こえてくる。
心細さと不安が胸の奥にじわじわと広がっていく。
「まずは、何か着るものを探さないと……」
それにしても、この胸、本当に大きいな……。前かがみになると、足元が少し見えづらいくらいだ。
意を決して、歩き出した。全裸で森の中を移動するのは心許ないが、このままではどうにもならない。
(これ、本当に私の体なの……?)
深呼吸して、覚悟を決める。このままじっとしていても始まらない。とにかく、動くしかない。
注意深く周囲を見ながら、少しでも体を隠せるような、枝のついた大きめの葉っぱを探す。
しばらく歩いたところで、運よく、太めの枝にいくつか大きな葉が付いたものを見つけた。
「これなら、持ちやすいし、隠せる部分も増えるかも……」
その枝を拾い上げ、葉っぱを体の前や後ろに持つようにしてみた。完全に隠れるには心もとないが、体を隠すには、直接葉っぱを持つより安定するかもしれない。それでも、やはり胸のあたりがもたついて、なんだか落ち着かない。
「少しはマシになったかな……」
人の手によって作られたような道はないかと、注意深く森の中を見回した。踏み固められた土や、道の両脇に刈られたような跡はないだろうか。
(もしかしたら、この先に何か……人の気配があるかもしれない)
一縷の望みを託し、人の道を探して、森の中をゆっくりと進むことにした。金色の長い髪が、背中でサラサラと揺れる。まだ慣れない自分の姿が、どこか現実離れしているように感じた。特に、この大きな胸のせいで、体のバランスも少し悪く感じる。
(そもそも、この世界に、人っているのかな……?)
不安と好奇心が胸の中で入り混じる。
新しい世界のはじまりは、まだ何も教えてくれない。