第十五話:衝撃の真実
「実は、用というのは、見ていただければわかるかと思います」
俺はそう言って、エルに顔を覆っている布を取ってほしくて、手のひらを上に向けて、少し持ち上げるような合図をした。エルは、俺の意図を不安に思ったのか、布の端を少し強く握っている。それでも、俺の真剣な目を見たからだろう。本当にゆっくりと、その布が下がっていく。
エルの顔があらわになった瞬間、神父様の表情が固まった。
長年、多くの人々の笑顔や涙を見てきたその瞳が、信じられないものを目にしたように、大きく見開かれた。
神父様の声は、わずかに震えていた。
「伝説は…… 本当じゃったのか……」
その声には、初めて見るものへの純粋な驚きが込められていた。神父様はしばらく、陽の光を宿したような金色の髪、透き通るような白い肌、そして金色に輝く瞳を持つエルフの美しさに、心を奪われたようだった。
しかし、すぐに神父はいつもの落ち着きを取り戻し、鋭い視線を僕に向けた。
「このことは…… 誰にも話したことも、見せたこともないな!」
俺は頷き、神父様が不安げに書斎のドアに向かうのを見て、俺も急いでその後を追った。
エルも俺の後ろについてきて、神父様が教会の奥へ進むのを見守った。そこには、見慣れない重い木の扉があった。神父様は慎重に鍵を取り出し、扉を開けると、暗く冷たい空気が漂ってきた。その先に、地下へ続く階段が見えた。
「降りてきなさい」
神父に促され、僕とエルは慎重に階段を下りていく。空気は下へ行くほど湿っぽくなり、古い香りが強くなる。
地下には部屋があった。神父は重いドアを閉め、鍵をかけた。さて、僕たちは神父と二人きりになった。エルの顔は、再び神父の行動に、不安の色を濃くしていた。
神父様は深く息を吸い込み、口を開いた。
「誰にも見せていないのは正解じゃったな…… さて、どこから話そうか…… 伝説によると…… エルフは太古の昔にいたらしい。 並外れて美しくて、長寿で、 特別な力を持っていたと…… しかしその力と美しさを欲した人間達によって…… 絶滅させられたんじゃ」
神父様の声は、静かに、だが重く響いた。
「……しかし、神父様! 祖父から聞いた話とは違います! 祖父の教えでは、エルフは伝説の生き物で、この世にいたなんて記録は、歴史書にだって一行もないはずです!」
少し悲しそうに、神父は目を伏せた。
「古い歴史は一部しか語られていないからのぅ。だが…… かつての王族たちが、自分たちの都合の良いように歴史を書き換えたのだ。この教会には、真実の歴史が記された書がある。そしてもしエルフに出会うことがあれば、代々その者を助ける役目を担っている。」」
その言葉は、衝撃となって俺の胸に深く突き刺さった。
エルは不安げに、俺と神父様を交互に見つめていた。