表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/43

第十四話:久しぶりの再会

教会の重い木の扉に手をかけ、ゆっくりと押し開ける。

ギー、という少し軋んだ音と共に、朝の柔らかな光が中へと差し込んだ。

埃っぽくならないように、丁寧に磨かれた床が光を反射している。


「おはようございます、シスター」


教会の奥。朝日が差し込む場所で、シスターが丁寧にほうきをかけている。舞い上がる小さなホコリが、光を受けてキラキラと輝いている。僕は、その光景の中にいる彼女に、声をかけた。


「あら、おはよう!」


ほうきを置いて、シスターはにこっと笑いながらこちらを見た。

彼女の顔には、いつも優しい笑顔が浮かんでいる。


「今日は神父様に用があって来たんです」


そう言うと、シスターは僕の隣にいる、布で顔を隠した小さな人影に気がついたようだ。

興味深そうに、そしてちょっと面白がるようにその子を見ている。


「あらあら、一緒にいるその子は一体誰だい? 布で顔を隠しているけれど、美人さんだってわかるわ!」


シスターは身を乗り出して、まるで好奇心旺盛な子どものように、すごく興味津々だ。


「ああ、この子は…… ちょっと道に迷っていたところを助けたんです。異国の出で、言葉が通じなくて」


そう説明すると、シスターは目を丸くした。


「まあ!外国の子なの?こんな遠くまで、一体どうしたのかしら。まさか、悪いことでもして連れてきたんじゃないでしょうね?」


いつもの冗談だ。シスターのこうしたからかいは、周りの人々をいつも笑わせている。


僕は苦笑いで答えた。エルは、シスターが急に明るくなったからか、少し体を横に引いたみたいだ。布の影で、不安そうに瞳が揺れている。


「それで、神父様はいらっしゃいますか?」


そう尋ねるとすぐに、シスターはいつもの明るい笑顔に戻った。


「ああ、神父様なら奥の書斎にいるよ。さあ、案内してあげるから、こちらへおいで」


シスターに促され、エルと一緒に教会の奥へと進んだ。

飾り気はないけれど、どこもかしこもきれいに磨き上げられている。人々の祈りが、この場所を特別なものにしているんだろう。書斎のドアの前で、シスターは軽くトントンとドアをノックした。


「神父様、木こりの坊やがあなたに用があって来たみたいですよ」


奥から、優しく年老いた穏やかな声が聞こえた。


「おお、そうか。さあ、お入りなさい」


シスターはにっこりと僕に目配せをし、ドアを開けてくれた。そして、鼻歌でも歌いながら軽やかな足取りで、先ほど掃除をしていた教会の奥へと戻っていった。


部屋の中には、白髪で背の高い、優しい眼差しを持ったおじいさんがいた。分厚い本を前に静かに座っている。神父様だ。


神父様は、ぼくの顔を見ると、深いしわの浮かんだ、優しい笑顔を見せてくれた。


「ご無沙汰しております、神父様。今日は少しお話があって参りました」


そう答えると、神父様の視線は、僕の陰に隠れているエルにゆっくりと向けられた。


「久しぶりじゃのう、じいさんの葬式以来かの。して、用というのは隣にいる子かの?」


神父様は、僕が何か言うより先に、目を細めて、少し懐かしむような眼差しでエルの方を見た。


「……ふむ。お前さんは、この国の人じゃないな? 何か訳があって、わざわざこんな所まで来たんじゃろう?」


神父様の優しい声が静かな書斎に響く。

エルは、顔を隠した大きな布の奥から、俺と神父様のやり取りをじっと見つめている。

顔を隠している布はイスラム教徒の女性がつけているスカーフ(ヒジャーブ)をイメージしています。しかし一人暮らしをしている青年の家にスカーフがあることが表現しづらく、長い布を巻いてるというだけにしています。そこはあまり気にしないでください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ