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第十二話:見知らぬ場所へ

朝のやわらかな光が、窓から静かに差し込んでいた。


昨夜は木こりの青年が用意してくれた居心地の良い寝台で、久しぶりに穏やかな眠りにつけた。

木こりの青年は、起きてから誤解が解けたことに安堵したのか、何かを用意している。


やがて、テーブルの上に、温かい野菜スープとパンが並べられた。

彼はにこやかに、まるで「どうぞ」と言っているかのように手を差し伸べてくる。


「……ありがとう」


小さく呟き、差し出されたスプーンを手に取る。

その優しさと温かさは、冷えていた体にじんわりと染み込んでいった。


食事を終えると、彼は新しい服、上着とズボン、そして顔を隠すための長い布を手に持って戻ってきた。

身振りを交えて「これを着てほしい」と伝えようとしている。

なぜこんな物を? 少し戸惑うけれど、彼の真剣な眼差しを見ていると、何か理由があるのだと感じた。


今着ている服を脱いで、新しい服に袖を通す。


上着は少し大きめだが、暖かい。

ズボンはサイズが違うみたいで、ちょっと穿きにくいけど、なんとか着れた。

それから、渡された布で顔を隠した。


着替えているあいだ、木こりの青年は恥ずかしそうに背中を向けていた。

そうか、今の私はエルフの体なんだ。

こういう気遣いには疎かったけれど、今はちゃんと考えないといけない。


着替え終わった音に気づいたのか、彼はドアの方を見て、軽く手で「こっちへ」と示す仕草をした。


「……?」


どこへ行くのだろう?

不安もあったけれど、彼を信じて、あとに続くことにした。


彼の家の先には、少し整備された、歩きやすい土の道が深い緑の森へと続いていた。


手をつながれ、森の細道をゆっくりと歩いていると、やがて木の車輪の音がカタコトと響いてきた。

現れたのは、一台の馬車。馬車の上には、お腹の出た、穏やかそうなおじさんが座っていた。昨日出会った彼とは違うが、どうやら顔見知りらしく、二人は笑いながら言葉を交わしている。


言葉はまったくわからなかったけれど、その空気はあたたかく、穏やかだった。


馬車に乗ると、おじさんは私を一目見て、一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐに優しく笑い、彼と何かを話しはじめた。


やがて、手綱が動かされ、木の車輪が再び音を立てて、馬車がゆっくりと進み始める。

ギイ、と小さな音を立てて、馬車は数メートル進んで止まる。そして照れたように頬を赤らめながら、こちらに手を差し伸べてくれる。


その手に、そっと自分の手を重ねた。

彼の力強い腕に支えられて、馬車の座席に上がると、揺れる心地よさに、緊張していた心がふわりとほどけていった。


木々のあいだを吹き抜ける風が、ほんのり熱くなった頬を優しくなでる。

隣に座った彼は、時折こちらを見つめている。

その視線は、どこまでも温かい。


これから、私たちはどこへ向かうのだろう?


胸の奥に小さな期待と、ほんの少しの不安が、静かに揺れていた。

辞書引っ張ってきて編集してます。

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