第十一話:言葉にならない想い
朝、目を覚ますと、エルと名乗るエルフはすでに起きていた。
ベッドの端にちょこんと座り、じっとこちらを見つめている。
金色の瞳には、昨日見せた警戒の色がまだ少し残っているようだった。
「お、おはよう……。大丈夫、何もしないから……」
もちろん、言葉は通じない。でも、敵意がないことを伝えようと、落ち着かせようと必死に言葉をかける。しかし、エルの金色の瞳は、まだ少しの不安を感じさせるものだった。
それでも、俺は諦めずにゆっくりと近づく。
警戒しながらも、エルは昨日と同じように、小さく僕の目をじっと見つめ返した。
そして、少しの間、互いの目を確かめ合うようにしていると、彼の体の強張りが、わずかに和らいだ気がした。言葉は通じなくても、何かが伝わったのだろうか。彼の金色の瞳から、昨日のような鋭い警戒の色が薄れていくのがわかった。理解してくれたらしい。
今日は、街にある教会へ行こう。
こんな出来事、普通の木こりである僕には手に負えない。神父様なら、何か知っているかもしれない。そうと決めたら、まずは朝食だ。
台所に向かい、パンと温かい野菜スープを用意する。
エルフなら、きっと野菜は大丈夫だろう。
そっと二人分の朝食をテーブルに並べると、エルは興味深そうにスープを見つめた。
そっとスプーンを手に取り、少し口に運ぶと、わずかに瞳が輝いた気がした。気に入ってくれたみたいだ。
朝食を終え、教会へ行く準備をし始める。
エルには、まず服を着せないと。
森の中で出会った時のままでは、少し離れた街で目立ちすぎる。
自分が以前着ていた服の中から、少し大きめの上着とズボンを選んだ。
それに加えて、顔を隠すのに十分な長さの柔らかな布も準備した。鏡がない世界では、自分の顔がどれほど人目を引くのか正確には分からないけれど、エルフという珍しい存在が目立ってしまうことは避けたかった。せめて顔と尖った耳を隠せるように、布を使おうと思ったのだ。
「あの……これ、着てくれるかな? 今日、教会に行くんだ」
少し照れたように、服を差し出す。
言葉は通じないけれど、教会へ行くことを示すように、教会に行くことを示すために、身振り手振りを交えて伝えてみた。エルは、今着ている服では心もとないと感じたのか、僕が差し出した服を受け取った。
どうか、着てくれますように。