徹夜〜のヒャッハー!
社員旅行なんていらんから、その分現金を支給してほしい
まさか2日連続で会談する事になろうとは...
昨夜、富田会長と会談したばかりだが、翌日の昼に朗報が舞い込んだ事により急遽、また会う事になった。
ちなみに、あの後会長は本当に社員(趣味仲間)を招集し朝方までミーティングを行なった。
企業戦士たちよ、マジでスマン。
実は俺も隠密を使用して、こっそりと立ち会っていたのだが正直、詳細はよくわからなかった。
俺が渡したパーツにも関わらず、その本人がここまで理解できないのは地味にショック。
まぁ、本質は俺のほうが理解してるとは思うんだけど、何せ細かな性能等についてはさっぱりだ。
むしろその点については、彼らのほうが理解している。
ミーティングの内容をざっくり説明すると、例のパーツをどの様に組み込んで車本体を完成させるかという話だったと思う。
だったと思うというのは、俺が内容を細かく理解できていないのと、途中で退席したからに他ならない。
だって、1時間程度で終わるかと思ったら、全く終わる気配がないんだもの。
で、今は昼を少し過ぎた頃なのだがめっちゃ眠い...
といっても5時間は寝たのだが、それでも地味にしんどい。
企業戦士をしていた頃は5時間睡眠が平均だっただけに、ブランクを実感する。
それに、異世界でも平均睡眠時間は似たようなものだったんだけどな...
ちなみに目の前の富田会長は元気溌剌だ。
とても還暦越えの人間とは思えない。
ホント、昔からベテラン戦士たちのタフさには驚かされっぱなしだ。
まるでロボットというか、疲弊した様子も見せずに深夜残業を毎日こなしてるんだもの。
まぁ、プライベートがほぼ存在しないので殆ど受刑者のような生活を送り、心が無の境地に達していたのかもしれないが...
ただ、目の前の人物はそういった心境ではなさそうだ。
「結局、今日は何時に出社したの?」
ちなみにここは昨日と同じ富田自動車の会長室だ。
普通に出社日なので、ベルも普通に同室内で黙々と事務作業をこなしている。
「9時出社だね。先程も言ったように6時までミーティングをしていたから、流石に老体に堪えるよ」
その割には妙に肌艶がいいのは何故だろう?
アドレナリンとかホルモンがバグっているのだろうか?
「まるで大学生だね。今日は早めに切り上げたら?」
「ミーティングに参加した社員たちも、通常通りに勤務しているのだからそうはいかないさ」
「律儀だね。ただその代わりといってはアレだが、その分ベルさんに頑張ってもらうとしよう」
そう発言した瞬間、鋭い視線が背中に突き刺さる。
「今日は俺が夕飯奢るからご勘弁を。また新しいラーメン屋をピックアップしてあるからさ」
俺はブラック企業の社長ではないので、ちゃんとフォローは欠かさないのだ。
「まぁいいでしょう。ただ、この仕事量がラーメン一杯で釣り合うかは疑問ですが」
うぅ...流石に現代にすっかり馴染んできたこともあり、この手の切り抜け方法は厳しくなってきたな。
「なら、居酒屋に行ってから締めのラーメンにしようじゃないか。実は馬刺しが美味い居酒屋があってね...」
「それならば問題ありません。仕事が終わったら直行しましょう」
前言撤回。
どうやらまだまだこの手法は通用しそうだ。
「俺が言うのもおかしいが、会長もちゃんと社員を労わりなよ?」
自分で言っておきながら、つい最近までニートだった奴が言うセリフではないなとつくづく思う
しかも、今もそれに近い生活をしてるしね。
ただ、企業戦士たちの事を想うと流石に気の毒過ぎて...
「耳が痛い話だが、心に留めておくとしよう。こっそり月給と賞与に上乗せしておこうかな」
またしてもベルからの視線が突き刺さる。
俺がふっかけた話だが、ちょっとした意趣返しをくらった格好だ。
流石、天下の富田自動車の会長。
「ところで、朗報とは一体どういった内容かな?」
すぐに話を切り替えてくれて助かります。
ベルの様子を見てすぐに状況を察してくれたのだろう。
むしろ、ここまでが全て計算通りなのかもしれないが...
「正式発表はまだだけど、レース場の建設と市街地コースの整備許可が概ね承諾されたよ」
「本当かい!?昨日に続き良いことづくめだね」
「ようやく、実感が湧いてきたよ...」
「会長は他の協力者の案件に奔走しっ放しだったからね」
「こちらとしても、申し訳ない限りだがやっと軌道に乗り始めてホッとしたよ」
あくまで町側の許可が下りないと計画は実行できない...というか、実行しないからね。
強引に進めればどうにでもなるのかもしれないが、それは俺が望むところではない。
それに、そこまで好き勝手にやりたいなら他にもっとやりやすい候補地はある。
だがそれでは意味がないのだ。
あくまで富田会長とのプロジェクトも町おこしの一部に過ぎないのだから。
といっても、どのプロジェクトも真剣に取り組んでるし入れ込んでいるんだけどね。
「それにしてもよく、あの計画書で許可が取れたね?」
「まぁね。まだまだ詰められていないし、おそらく今後、変更箇所も多数発生するだろう」
「やはり、あの秘書君が絡んでいるのかな?」
「ご明察の通り。ただ、あくまで最も貢献してくれたのは町長なんだ」
「その町長を説得したのが彼じゃないのかい?」
「それも少しはあるんだけど、なんと、町長もあの作品の大ファンなんだよ」
「それは意外だね。あの作品は私や町長の世代よりも、君の少し上の世代がターゲット層のはずだからね」
「確かにね。ただ、実は町長も昔は峠で結構、無茶していたらしいんだよ」
「なるほどね。それなら納得だ」
「更に追加情報だけど、町長は初めて購入した車から現在まで、ずっと富田自動車一筋なんだって」
「まさか、我が社のヘビーユーザーだったとはね...我が社自慢の新車をプレゼントしたいくらいだ」
「まぁ、それは時期を考慮してかな。と言っても、富田自動車のヘビーユーザーの時点で多少周囲から変な目で見られるだろうけど」
「それもそうか...ただ、酒くらいは飲み交わしたいものだね」
もし実現したら町長も大喜びだろう。
実は富田会長が町に来た時点で相当テンション上がっていたのでは?
全然、表情には出していなかったけど。
にしても、ちょっとした運命を感じなくもないね。
そういうのはあまり信じたくないけど。
ただ、こういうのを都合良く捉えるのは悪くない。
要は、気の持ちようなんだから。




