感謝〜の立ち上がれ企業戦士!
夜遅くの残業禁止令が出たから、その分早朝に出社するというバカな発想を強要しないでほしい
ホント、頭が上がりません
今日は富田会長とディナー。
といっても、他人には聞かれたくない話が多いのでデリバリーで注文して、富田自動車の会長室でプチ寿司パーティー。
「まさか職場でデリバリーを頼むとは思わなかったよ」
「俺も。昔、ランチタイムで近所の定食屋とかに出前してもらった事はあるけど、流石にデリバリーを頼む勇気というか発想はなかったね」
「懐かしいね。今じゃそんな店は限られているから。それに、深夜に残業したとしても普通に近くの飲食店に出向いてササっと済ませていたよ」
「わかるわかる。牛丼屋とか遅くまで営業してるラーメンチェーン店とか行ってた」
「企業戦士あるあるだね。まさか君とそんな話ができるとは思ってもいなかったよ」
「今はこんなだが若い頃はガッツリ、サラリーマンをしていたからね」
「毎日、日付が変わるまで働いていたよ」
「それは中々のブラックだね。まぁ、昔の我が社も人の事を言えた義理ではないが、今は本当に働きやすい世の中になったよ」
「そうなんだ。俺は転職もそこそこしたけど、逆に美しいくらい漆黒な企業ばかりだったから、働きやすいってイメージが湧かないなぁ」
「若いのに相当苦労したようだね。道理でハードなリクエストが多いわけだよ」
「それを言われると耳が痛いなぁ。でも、ベルがいるから労働時間自体は結構、削れているでしょ?」
「その点に関しては何も言い返せないね。その気になれば、彼女は私の仕事を全てこなせそうな勢いだし」
「まぁ、それに関しては少し同情するよ。でも、アレはそういう存在だから気にしたら負け」
「元々のスペックが違いすぎる」
「彼女の正体については気になるところだが、深掘りするのはやめておくよ」
「それがベストだと思う。偉そうに聞こえるかもしれないがホント、その辺の引き際が見事だね」
「これでも富田自動車のトップだからね。君たち程ではないかもしれないが、それなりの修羅場を潜ってきた賜物さ」
「恐れ入るよ。その点に関しては他の協力者たちにも驚かされるばかりさ」
「彼らもとんでもない傑物だよ。会う時は未だに緊張する」
サラッと自分を傑物認定しているが、それを言うだけの資格がこの人にはある。
「ある意味、現代社会の支配者層に属する人たちだからね。協力してもらえて本当に光栄だよ」
「それは恐れ多い話だ。ただ、話を戻すけど、労働時間が減った分、精神的疲労が増す仕事が増えて老体に堪えるよ」
「またまたご謙遜を。といっても、最近は特にその手の案件が増えているから、本当にキツいなら減らそうか?」
「いやいや、そうは言ったがそれ以上にやり甲斐というか、良い刺激を受けているよ」
「正直、これまでも色々とチャレンジはしてきたが、流石にマンネリ化している点は否定できないからね」
「君から依頼される案件は新鮮で、緊張感も実に心地良いよ。この歳になって、成長していると実感できるとは思ってもいなかった」
「十分、会長も化け物だよ。ベルからも話を聞いているけど、未だに向上心が高く、仕事に対する姿勢は舌を巻くと話していたよ」
「それは光栄だね。あれ程の人物に褒められるとは。私もまだまだ捨てたものじゃないな」
「自画自賛ってwでも、俺もベルと同意見だよ。ここまで円滑にプロジェクトが進行しているのも会長の力があってこそだ」
「そこまで褒められると逆に警戒したくなってしまうじゃないか...まさか、本当に何か厄介事を持ちかけようとしてないか?」
「まさかまさか。今日は本当に何もなし。むしろ、その逆の事をしようと思ってね」
「本当に...?」
マジで警戒しているな...
それだけハードな難題を俺が何度も振ってきたという証拠なんだろうな。
ちょっと反省。
「最初に会った時に渡したパーツの解析、あんまり上手くいってないでしょ?」
「...それは確かに...判明した事は現代科学では解明できないって事くらいかな...」
「まぁ、それは仕方ない。だって俺自身、そこまで理解しているわけじゃないしね」
富田会長に渡したパーツはある意味、現代ではオーパーツと呼ばれる類のものだ。
ちなみに、オーパーツとはout of place artifactsの略。英語の略だとOOPARTSと表記される。
意味としてはその物が、発見された場所や時代とそぐわないレベルの出土品や加工品という事。
「けど、そのパーツ1つじゃ本来の性能を活かし切る事が難しいと思ってね」
そして、収納袋から例のパーツを3つ取り出す。
「これで合計4つ。これなら、次の段階に進めるでしょ?」
「色々とツッコミだい事はあるが、これは有難く受け取るとするよ」
「流石に研究チームもお手上げ状態だったからね」
「それは悪い事をしたね。マジで門外不出レベルのパーツだから、複数渡すのは躊躇いがあってね。それに現代科学というか、技術でどこまで解析できるかも興味があったんだ」
「その点に関しては、少々耳が痛い話だ。物が物なだけに、外部に協力してもらうわけにもいかなくてね」
「勿論、わかってるさ。だから解析できなかったとしても問題ないし、できなかったという事実さえ確認できれば今は十分なんだ」
「そういう事か。だが、これでようやく次に進めるよ」
「あぁ、完成したらぜひ運転させてほしいね。けど、あらためて聞くけど本当にこのまま研究を進めてもいいの?」
実は最初にパーツを渡した時もこの確認はしている。なぜなら、このパーツを搭載したマシーンが完成したとしても、それを公表する事はできないからだ。
マジで変な組織や国から狙われかねないからね。
今だって、結構綱渡りをしている状態だと思う。
「勿論、気持ちは当初と変わらないさ。私は会長である前に1人の車好きだからね。それは他のスタッフたちも同じ気持ちさ。最高の趣味をエンジョイさせてもらうとしよう」
エンジョイって...w
せっかく労働時間削っても、そっちで大幅に時間を取られたらマッチポンプ感が出て申し訳ないんだよなぁ...
でも、趣味とはっきり公言してるし、俺が気にするのも野暮だな。
そこは個人の判断に委ねるとしよう。
「そうと決まれば、早速スタッフを召集しなくては」
「え?今から仕事するの?」
「仕事じゃなくて、趣味だよ。なぁに、このパーツが新たに入手できたと知れば、すぐにでも駆けつけてくるような連中ばかりだから、心配ご無用!」
いや、既に23時を回ってるからね...
「ほどほどにね。俺はブラック企業に協力するつもりはないからな」
「勿論、重々承知しているよ。それに、この時間からオンラインでゲームをする若者だって珍しくないだろう?それと同じようなものさ」
ホント、いい歳して中身は10代みたいな若々しさだよ。
振り回される従業員に同情するね。
ただ、この会長の趣味仲間認定されるくらいだから、そいつらも中々の変態なのかもしれない。
完成した際には俺も搭乗するし、挨拶くらいはしたいものだな。
勿論、幻術やら変装で姿形は変えるけど。
従業員たちよ、健闘を祈る!




