悪魔への供物ならぬ、対価の支払い
ぶっちゃけ、生意気な親戚な子にお小遣いあげたくない
皆さん覚えているだろうか?悪魔への対価の支払いを...
現在、俺に協力している悪魔には給料を支払い、給与以上の働きをしてもらっている。
同時に、6人の悪魔それぞれの要望を給与以外に支払わなくてはならない。
その気になれば断る事もできたが、給与の額が額なだけに俺も申し訳ない気持ちがあり、承諾する形となった。
ちなみに要望の内容は固定されていない。
勿論、俺が応えられ範囲に限定しているので、基本的にぶっ飛んだ要望はなし。
こういった点でもベルの日頃からの悪魔たちへの勉強会が役立っている。
現代の常識をすり込ませているからね。
とはいえ、毎回ドキドキではある。
直前まで内容はわからないし、なんだかんだ相手は悪魔ですから...
だが、今日というか本日のお相手に関しては俺も楽しみにしている。
6人の悪魔の中で唯一の癒し枠だからね。
「主、準備はできた?」
軽快で可愛らしい声が実に心地良い。
「あぁ、準備万端だ。早速移動するか」
本日はアシュロスこと、アシュへの対価の支払日。
要望は秋葉原の観光案内だ。
ちなみに支払日はそれぞれのスケジュールの都合があるので、常に日時は固定されていない。
とりあえず、毎月1回と決まっている。
本当は2人で千葉にある某ランドへ行く予定だったのだが、それを知った他の悪魔たちからストップがかかった。
結局、ランドへ行くなら全員でということになり、こういう制度はあまり好きじゃないが、年に1回の社員旅行という形で持ち越しとなったのだ。
ぶっちゃけ、ランドに行く事自体は乗り気ではない。
アシュだからこそ俺もOKしたのだ。
悪魔とはいえ、女性6人と彼の地へ訪れるのはなかなかハードルが高そうだし。
てなわけで、早速転移して辿り着いたのが、ここ秋葉原。
アシュは漫画やアニメ、二次元創作に最近どハマりしている。
そこで本人からの要望もあり秋葉原を案内することになった。
「人間多い...」
俺も10年、いや、異世界に転移していた期間も含めると約20年ぶりの来訪だが、人混みがエグい...
アシュは日頃からテュラム会長の秘書兼護衛として、パリにいる時間が多いのだが、そのアシュからしてもこの人混みには驚いているようだ。
「一応、大都市東京の中心地に近い所だからね。それに今では外国の観光客も多いし、何よりオタクの聖地だから」
「日本って、人口密度高すぎ...」
「町に秋葉原作って」
なかなか大胆な提案だな...
「う〜ん...今のところそういう予定はないけど、それもありかもな。秋葉原のような街って国内では殆ど無いに等しいし。街というか、もう1つくらい同規模の区画があっても面白いかもね」
「絶対に面白い...!...主には期待してる」
そう言われたら、やるしかないですな。
既に皆さんお気づきだろうが、俺はアシュに対して甘々なのである。
年齢で言えば、俺よりアシュのほうが遥かに上で、古のご先祖様ってレベルすら軽く凌駕しているのだが、この可愛らしい見た目と、話し方、何より意外と中身はしっかりしており、俺の扱い方もベルに次いで優れている点がお気に入りたる所以だ。
俺からすると、妹というよりかは可愛らしい親戚の子供、又はツンデレだけどデレ成分多めの仕事ができる部下っていう感じ。
いずれにしても可愛がらない理由がない。
「とりあえず、お昼前だしランチでも食べに行くか」
「賛成。当然、あそこに行くよね?」
「勿論。以前から約束していたからね」
人混みを避けながら、少し中心地から外れた場所へ移動。
道中もいかにもといったマニアックな店舗が多く、アシュの目は忙しそうだ。
正直、PCのパーツとかは詳しくないのだが、それでも気になるといえば気になる。
その辺は既にアシュのほうが俺より詳しそうなので、後で色々教わるとしよう。
そして辿り着いたのが、メイド喫茶。
某作品で有名になった店舗で、メイド喫茶の元祖とも呼べる聖地だ。
で、ちょっと並んでからようやく入店。
「いらっしゃいませ!ご主人様!」
ベタだが、これぞメイド喫茶の最初の醍醐味。
早くも非日常的な空間に引き込まれる。
そして隣にいる美少女悪魔は、全身が小刻みに震えている。
アシュが視聴している作品に何度か登場した場所でもあるので、感動に打ちひしがれているご様子。
そして、席へ案内され2人揃って飲み物とオムライスを注文。
当然、オムライスが到着した際には魔法のケチャップのメッセージと、萌え萌えなおまじないをかけてもらい大満足。
味はまぁまぁといった具合だが、ある意味ここも某ランドと同じで雰囲気や世界観が重要なのだ。
当然、帰り際にはチェキ撮影も行った。
アシュもご満悦といった表情だ。
で、店を出る前に俺はトイレに寄ったのだが、戻るとアシュが店員さんと話しており、何やら受け取った様子...
「お待たせ。何かもらったの?」
「名刺。てか、スカウトされた」
これは俺が迂闊だった...
思えばここに来る道中や店内でもアシュに向けられる視線には気がついていた。
だが、俺は少々浮かれていた事もあり、気にしないようにしていたのだ。
そもそも、人混みに出向くのなら隠蔽スキルを使用するべきだったかもしれない...
こんな可愛い子が1人でいたら、誰かしらに声を掛けられるに決まっている。
だが、くれぐれも俺が親バカならぬアシュバカでない事を、敢えて強調させてもらうとしよう。
事実として、外見、内面共に抜群に可愛らしい子なのだ!
「メイド、興味ある...」
これはまずい...
彼女たちにはある程度の自由を許容しているが、このままでは大注目の新人メイドになりかねない...
「そうかそうか。俺もアシュのメイド姿は見てみたいが...」
すると美少女悪魔が俺の言葉を遮り...
「なら、たまにメイド姿で主に給仕してあげる」
!!!!!!!
何この子!?...マジでいい子過ぎる...!!!!
「マジでやってくれる?」
「マジ。だから帰りにメイド服買って」
そういう事なら喜んで。
思いっきり掌で転がされている気がするが、それでも構いません。
「わかった。今回は特別ね。勿論、他の皆には内緒だぞ」
まるで、孫に溺愛するお爺ちゃんだ。
よもやこの歳でこんなセリフを吐く事になろうとは...
「主、ありがとう。町にもメイド喫茶作ってね。あたしが店長やるから」
この瞬間、俺の独断で町にメイド喫茶が設けられる事が決定した。




