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異世界帰りの町おこし  作者: 残業200時間
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ニートだって休みたい

結局、フランスでまともに観光できたの初日だけだった

 会長の自宅を覗いてから一週間が経過した。


 初日はどうなるかと思ったが、意外にもこの期間で面白い発見がありましたよ。


 まずは会長が会長室で談笑していたのは初日だけ。


 正確には今日も出社して部屋に閉じこもっているが、会社に赴くのは週1程度というルーティンらしい。


 一週間だけの観察では断定できないが、実はこっそりスケジュール帳を確認した。


 すると、意外にも予定はびっしり。


 初日に疑った事を許してほしい。


 この人、めちゃくちゃ多忙です!


 休日はゴルフを楽しんでいたけど、そのお相手も取引先や仕事の関係者だったしね。


 で、会話の内容を聞いている限り、大半が社長の尻拭いっぽい。


 だからといって変に下手に出る訳でもない。


 物腰柔らかい雰囲気から談笑に持ち込んで、しれっと仕事の話を交える。


 社会人なら割と基本的なスキルだが、談笑と仕事話の繋ぎが恐ろしくナチュラルなんだよなぁ。


 基本ではあっても、それを極める事は非常に困難だ。


 だがテュラム氏はカンストしてると言っても過言ではないね。


 いい意味で狡猾だ。


 会長職に就任したのだから、本当はもっと楽にのんびり過ごしたかったと思うんだけどなぁ。


 前任の会長はそうしてたっぽいし。


 


 社長は想像していたよりも更に荒っぽい人格だった。


 そして会長は想像以上に優秀だった。


 


 社長が強引に推し進めている共同プロジェクトのパーセンテージやサービス面での緩和、アフターフォローの数々を完璧に近い形でこなしているのだから。


 しかも緩和しているという事は、社長本人とも交渉しそれを成功させている。


 社長からすれば、さぞかし気分が悪いだろう。


 だがそれで事が円滑に進んでいる事実は認識しているようなので、そこで軋轢が生まれる事もない。


 それに社外だけではなく、社員の相談にも割と対応しているし、逆に不安になるレベルで奔走している。


 そんな偉人がなぜあの人物を社長に就任させたとツッコミたくなるが、その点に関しては甘さが窺えた。


 なぜなら、社長は僅か2年で辞任した会長の兄の息子なのだ。


 どうやら、一部の役員の圧力と兄への後ろめたさで承認する形となったようだ。


 更に別の勢力からは会長の息子を推薦する声もあったとの事。


 調査したところ、息子はヴォルテクス社とは全く関連のない企業でのびのびと勤務している。


 会長は息子に自分の二の舞を演じさせたくなかったのだろう。


 おそらく、こちらが甥っ子の社長就任を承諾した理由の本命だね。


 テュラム氏が社長から会長に就任する流れも、定款に従ったまでだし、同情する余地がないわけではない。


 だが、社員や関連企業からすればいい迷惑だ。


 それに俺のプロジェクトにも支障が出る。


 


 てなわけで、この一週間のうちに社長の尾行もしていたのだが、こちらはとにかく動きが派手だった。


 


 会長もとい、叔父が自分の尻拭いに奔走しているなか、あろう事か勤務時間中に不倫相手とよろしくやっていたのだ。


 そして毎晩のように怪しげな会合とパーティーに顔を出していた。


 あまりにもテンプレなバカ社長ならぬバカ甥っ子。


 ある意味、1周、2周して貴重なサンプルかもね。


 挙句の果てに、競合他社に情報を垂れ流していやがった。


 といっても、本人はその自覚はないんだけど。


 毎回、会合やらの場に同席している人物がいたから、念の為に尾行したところ、ライバル社が雇った企業スパイだった。


 社長は毎回、この人物にパーティーやら会合のアテンドをしてもらっていたようだ。


 そして、酒の席で酔って社外秘に値する情報をベラベラと話していた。


 ホント、どうしようもないね。


 社長に就任した矢先にこんな人物が近づいてきたら、普通は警戒するだろうに。


 この人、宝くじで高額当選したら間違いなく破産するタイプだ。


 だが、こちらとしては好都合。


 証拠も押さえたし、追い出す大義名分もできた。


 問題は社長の後任だが、有力な人物が思い当たらなくもないが、そこは会長次第だろう。


 


 そしていよいよ「オリヴィエ・テュラム会長」との交渉だ。



 

 勿論、言い方は悪いが今回もニンジンを用意してある。


 

 

 会長室では最後の客人が去り、会長が1人(と、潜んでいるニートが1人)。


 この後の来客予定がない事も既に把握している。


 ではでは早速...


 

 「隠密」解除。


  声を上げずとも、明らかに目を見開く会長。


 

 

 以下省略...





 散々、前置きが長くなっておいて、肝心な交渉を省略する行為は納得がいかないかもしれない。


 


 だが、聞いてほしい。


 


 だってあまりやる事が変わらないし、既に説明した内容と重複するのだもの。


 なので、ここからの説明は極力被らず、新たに公開する情報だ。



 まず先に答えを言ってしまうと、交渉は成功した。


 社長の愚行の数々を暴露、そしてその証拠の提示。


 そこからの社長退任の提案とこちらのプロジェクトへの参加要請と条件提示。


 と言っても、富田会長に提案したようなコンペディションは現時点ではない。


 

 こちらの要求は、ヴォルテクス社が日本国内で遂行している水道局の買収と管理の取り止めだ。


 勿論、見返りは用意してある。


 一つ目はフランス国内で新たな水源の発見とそれの提供。


 二つ目は正確には日本国内においては、これから俺が開拓する町の水のみを購入して貰う事。


 


 フランスは干ばつ被害で歴史的に深刻な損害を受けた国でもある。


 しかもその問題は現在も続いている。


 


 その為、日常生活でもその影響が垣間見える。


 例えば、食器を洗剤とスポンジで洗った後、水ですすがない。


 他にも、シャワーは数日に1回。


 更には身体を洗った後も、水ですすがない。


 シャワーなどは浴びずに、タオルのような物に石鹸などで泡立て身体を拭く。


 ちなみにその際も泡は洗い流さない。


 勿論、これらに個人差はある。


 毎日、シャワーを浴びる者も少なからずいるだろう。


 それにフランスは多民族が集う国家だしね。


 

 又、水を重宝する別の理由としては、水道代が日本の倍以上の価格だから。


 この辺の知識は昔、TVで見て得た内容だが、現在でも大きな差はないと思う。


 

 一応、探偵ごっこをしている間にも生活面での観察はしたしね。

 (※勿論、入浴タイムは観察してないよ!)


 

 そんなこんなで、フランスは世界的に見ても水を重宝する国なのだ。


 

 そして俺の提案はその問題の解決に一役どころか二役も三役も買うもの。


 

 あらかた説明した後、会長に水質調査に用いる器具を用意させた。


 まぁ、簡易的なものだけど。


 そして「自己召喚レベル2」を発動。


 当然、スマホで現在地を確認させ、お決まりのリアクション。


 転移先は会長の自宅。


 そこでコップを取り出し水を汲ませる。


 更に今度は、例の新たな水源地へ転移。


 勿論、再びスマホで現在地をチェックさせる。


 

 ちなみに尾行の合間に「自然探知レベル2」を発動し水源地を割り出した。


 そして「身体強化」スキルを用いて速攻で掘削作業で水源を掘り当てる。


 やはりこの世界で魔法はチートです。


 使用しておきながら言うのもアレですが。


 てか、異世界でも自然探知は割と希少スキルだったけど。


 


 話は戻るが、「飛翔」スキルで会長を背負って穴に潜り、底に溜まっている水をコップに汲み取る。

 

 更に転移し、開拓予定の町の海岸へ到着。


 


 ここからが本番。



 その場で海水をコップに汲み入れ、予め用意しておいたテーブルの上に「会長宅」、「新水源地」、「開拓地」で確保した水を並べる。


 そして会長に水質検査をしてもらったのだが、どれも差はあれど、いずれにしても飲める代物ではない。


 とはいえ、この段階で開拓地の海水が所謂、危険領域ではない事に会長は驚いていた。


 何なら、会長の地元の海よりも良質な海水らしい。


 

 やっぱり風評被害は恐ろしいね。


 確かに国がちゃんと精査した上で実行した事とはいえ、この海にアレを放出しちゃったから無理はないけど。


 何なら、地元の漁港関連の組合や組織からも反対されてたしね。


 

 まぁ、簡易的な検査だけどホッと一安心


 

 そして例の夢の収納袋からオーパーツとも言える逸品を取り出す。



 ざっくり説明すると、ステンレス製の筒。


 中の中心にはフィルターのような物が設置してある。


 新たに空のコップを3つ用意して、先程の3つの水を筒に流し込み、空のコップに注ぐ。


 で、再び水質検査。


 

 

 するとあら、不思議。飲み水と言える良質な水に変化しているではありませんか。


 

 

 下手しなくても、戦争が起きかねないオーパーツをあっさり披露してしまった。


 案の定、富田会長と同じ様なリアクションが窺える。


 だが、富田会長とは別の変態だと思うんだよね、この人は。


 別に水が好きとかってわけではないから。


 ただ単に、生きる為に必要不可欠な資源なのだから。


 だからこそ、今回の提案を比較的通りやすいと見越せたわけだが。


 

 テュラム氏は我欲もそれなりだが、それ以上に共有力に多大な喜びを感じるタイプだ。


 だからこそ、クラブの会長にも上り詰め、現在の会社でも尻拭いをしている。


 それだけ聞くと実に普遍的かもしれないが、このレベルでそれを実現しているからある意味変態なのだ。


 ましてや経営者はもっと、自己中心的であるべきだとニートの俺ですら思う。


 でなければ、精神がもたないから。


 当然、会社ももたない。

 

 

 負担になるものは極力、排除して非道と言われながらも結果を残すことが経営者や企業の王道。


 当然、ある程度は排除したのかもしれないが、この一週間の行動を見る限り、この会長は抱え過ぎだ。


 だが、それで精神が崩壊している様子もなければ、疲弊している様子もない。



 これは異常だ。



 常にニコニコと振る舞い、裏で悪態をつくような素振りすらなかった。


 上に立つ者として甘い部分が垣間見えるが、こんな変態がいてもいいと思った。


 冷酷、冷徹、非情という概念が王道になっているが、あくまで道の一つに過ぎない。


 ある意味、邪道なのかもしれないが、そこを平然と歩く人物は超貴重だ。


 これから勧誘する者たちと少なからず、揉めるかもしれないがそれはそれで面白い。

 


 そういうわけで、「オリヴィエ・テュラム氏」は必要不可欠な人物と確信し、現在に至る。


 

 再び会長室に転移し、話をおさらい。


 まずは社長の退任と会長の社長職への復帰が最優先だ。


 そして復帰の狼煙として、先程の水源地の開発と発表。


 肝心の日本国内の水道局の買収と管理の撤退は暫く後だ。


 新しい水源地確保したので手放しますじゃ誰も納得しないしね。


 それにこちらの準備も間に合わない。


 例の筒の改良、又は量産、更には水を変換させる場所と施設も必要。


 開拓地で新たな組織を立ち上げ、そこから水を購入するルートも確立させなければならない。


 その為には、手間も時間もそれなりにかかる。


 又、ヴォルテクス社が他県の水道局を手放した後、後任がどこになるかも根回しする必要がある。



 と、こんな感じで話をまとめて富田会長にも渡した通信リングをプレゼント。


 軽い説明と談笑をした後、自宅に帰還する。


 

 はぁ...疲れた...


 

 尾行って思った以上に精神的疲労がハンパないね。


 異世界で経験してないわけではないが、面倒なので極力この手の依頼は避けていたし。


 探偵ごっこの合間に水源地探して、掘削作業しているほうが遥かに楽だった。


 「身体強化」をしているからではあるが。


 精神的疲労を回復する手段がないわけではないが、できればそこは頼りたくない。


 ただでさえチートを使用しているしね。


 些細な倫理観かもしれないが、この程度の疲労は受け入れなければならない。


 


 そう考えると、やはりテュラム会長は異常だが、頼もしいとも思えたのだった。


 

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