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異世界帰りの町おこし  作者: 残業200時間
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禁断の出会い

ハラスメントって一体何種類あるのだろう...

 富田会長におねだりして、最新の車を融通してもらえないかな...




 絶品のハンバーガーを食べ終わり、再び車で移動しているわけだが、なかなか贅沢な時間だ。


 異世界から帰還してからは、車で移動する事はあっても市内でグルグルする程度だった。


 遠方はもっぱら自己召喚で大幅に時間をショートカット。


 まぁ、遠方といっても海外が多いから車では行きようがないのだけれど...


 国内で遠方だと富田会長を訪れる時くらい。


 それでも正面から堂々と門を潜るわけにはいかないから、部屋に直接転移をするし、車で行く意味がない。


 ちなみに、今回の目的地は県内ではあるが、我が県は国内でも5本の指に入るほどの土地面積を誇っている。


 なので実家から今回の目的地も関東県であれば、とっくに隣県に突入していてもおかしくない。


 それ故にこの移動時間は実に贅沢だ。


 特にベルのように効率よく何事もこなすタイプは移動時間など嫌悪しそうなものだが...



 「車での移動は嫌いじゃないですよ」


 これは意外な反応だ。


 実は乗車させたのはこれが初めて。


 富田自動車を担当させているだけに、この反応はちょっと安心する。


 「何せあちらの世界で一般的な移動手段は徒歩か馬車でしたからね」


 「それと比べれば天と地の差ですよ」


 「それにヨシがあちらで開発したアレは車とは似て非なるものですし」


 そりゃあそうだ。


 移動に数日かかる事なんてあちらの世界では当たり前。


 そして、俺というか知り合いの職人と開発したアレはある意味、超未来の乗り物だし。


 「意外と気に入ってもらえて何よりだよ。ちなみにこの車は新車で購入したけど、既に乗り始めてから10年も経過している。そして、富田自動車の車ではない。つまり...」


 「富田会長に新車を贈呈させればいいのですね?」


 「その通り!話が早くて助かる。といっても、露骨にお願いするのもあれだし、それとなく伝えておいてくれ」


 ベルが怪訝な表情を浮かべる。


 「それって一種のパワハラでは?」


 うっ...それを言われると耳どころか胃が痛い。


 「た、確かにパワハラになりかねないな...やっぱり今のはなしで!」


 「冗談ですよ。富田会長なら喜んで提供してくれると思いますよ?まぁ、文字に起こして第三者が見ればただのパワハラにしか見えないでしょうが」


 どっちなんだよ...


 「2人の関係性なら問題ないと思います。それに私も最新車の乗り心地は興味がありますし」


 もしかして、自分の車も用意してもらおうとしてない?


 いや、俺も人の事は言えないし普段の貢献度からすれば、ベルのほうが遥かに富田自動車に貢献しているのだ。


 そこはベルさんにお任せしよう。



 

 そしてようやく目的地の街に到着。


 街の入り口はごく一般的な街の風景だが、城の付近にもなると雰囲気が一気に変わってくる。


 風情と情緒があり所々、時代劇とかで見そうな瓦付きの壁、あと場所によっては地面がアスファルトではなく、石畳のようなものになっている。


 まずは街一番の名所である、城を見学し敷地内で抹茶とわらび餅を食し、次に伝統ある情緒MAXの庭園を散歩し、その後遅めの昼食で名物のソースカツ丼とラーメンをたいらげた。


 そして最後に当時の若い隊士が悲運な○を遂げた山を観光。


 結構、タイトなスケジュールだが意外と堪能する事はできた。


 で、中途半端に時間が余ったので隣町へ移動。


 移動時間は20分程度だし、ここまで来たらこの街も紹介するべきだと思ったのだ。


 何せ、全国的にも有名なラーメンと酒が存在するからね。


 で、到着早々に我が県きっての酒蔵に案内したのだが、これがマズかった...


 

 「あっちの世界ではワインをよく嗜んでたけど、それ以外の酒もイケるの?」


 「それ以外というか、ワインしかありませんでしたからね。なので、以前から日本酒には興味があったのですよ」


 それはよかった。


 ちなみに俺は酒の味がよくわからない。


 高級かそうでないかの違いも区別はつかないし、元々酒に弱いのだ。


 ただ、それは異世界に転移する前の話。


 転移後は問題なく飲めるようになったが、それでも味の区別はさっぱりだ。


 そして今日は運転手なので、飲酒は控えねばなるまい。


 本当はどうにでもなるけど。


 そしてベルさんが試飲をしたわけだが、そこからは試飲というかコンテストの審査員の如く、出された酒をひたすら飲み干していた。


 当然、酔っている様子はない。


 試飲なのに、おそらく合計で1ℓは軽くたいらげた。


 店員の方も流石に驚いたご様子。


 まぁ、見た目は大層美しい美人さんだけど、大酒豪ですからね。


 そして、試飲した酒を全て購入。


 見た目に反して実に豪快だ。


 しまいには、試飲している様子を製造者にたまたま目撃され、すっかり意気投合した様子だった。


 当然、俺は完全に蚊帳の外。


 こんなに近くにいるのに、孤独って感じるんだね。


 で、最後はしめのラーメンを食し大満足。


 俺は飲んでいないが...


 ベルはおじさんサラリーマンの至福のルーティンにすっかり虜になったようだ。


 


 「これがこの世界の至高ですか」


 帰りの車中で残念美人がボソッと呟いている。


 「至高って...まぁ、今の世の中って酒飲みが減ったしそもそも飲み会の機会が激減したからね。特に若い世代だと酒飲んで、その後ラーメンまで辿り着く者は少ないかもな」


 「それは確実に損をしていますね。この世界の若者はもっと外に出るべきです」


 いや、君だってあちらの世界では部屋にこもってワインばっかり飲んでたじゃん...


 「何か良からぬ気配を感じましたが、今は機嫌がいいので見逃してあげましょう」

 

 あれだけ飲んだのに、マジでシラフなんだな。


 「その気になれば、家で飲んでラーメンも作って食べられるし新たな趣味が増えそうで何よりだよ」


 「そうしたいのは山々ですが、そうはいかないでしょうね」


 ?


 「お酒は自宅でも飲めますが、あのラーメンを自宅で再現するのは不可能です」


 「インスタントやカップ麺も悪くはありませんが、一度あのルーティンを知ってしまった今、もう忘れる事は不可能です」


 余程ラーメン、というか酒を飲んでからのお店のラーメンという流れが気に入ったんだな...


 まぁ、現代に召喚してからあまり労う事もできていなかったし、新たな喜びを見つけられてようでよかった。


 「そうか。まぁ心配ないと思うが酒に溺れるなよ?」


 アルコールの耐性があるのはわかるがこの分だと再びワイン、更には焼酎やウイスキーなどにもドハマりしそうなので釘を刺しておいた。


 「愚問ですね。全てスマートに飲み干しますよ」


 ......


 

 そして、その後悪魔たちの間で度々酒宴が開かれる事になる。


 更に俺も巻き込まれる事もあるわけで...


 ハラスメントはダメ絶対...

 

 

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