我儘x我儘〜そして巻き込まれるトップ経営者〜
経営者でも、実はパワハラに悩まされている
プロジェクトの先駆けとなるか...
当初から王子と町にフットボールアカデミーの設立を計画していた訳だが、先に王子が自国でアカデミーを設立してしまった。
複雑な反面、テンションも上がってはいるのだが、そうなると後の為にもこの事実を最大限に活かしたい。
これは町にアカデミーを設立した際に、王子と進めようとしていた計画だが、ここで前倒しするのも悪くない。
てか、王子もそれを織り込み済みで、アカデミーを設立したのかもしれないが...
そしてその予定していた計画が「国際リーグ戦」だ。
アカデミーでも国際試合やコンペディションは存在するが、国を跨いでのリーグ戦は存在しない。
もしかすると、どこかで存在するのかもしれないが、存在したとしてもおそらく小規模なものだ。
基本的に各国のアカデミー生は自国のリーグ戦が主戦場であり、プロ同様、年間を通してリーグの優勝を目指しつつトップチームへの昇格争いに身を投じている。
日本では高校サッカー、所謂、部活での全国大会が世間でも多く認知されているが、プロになる者の多くは各プロクラブのアカデミーから誕生しているのが現実だ。
勿論、部活出身者でも毎年多くのプロが誕生しているが、これは世界的に見ても異例ともいえる現象だ。
ちなみに日本では、学校であっても一定以上の条件を満たせば、アカデミーチームが参戦しているリーグ戦に参加可能だ。
つまり、全国大会に出場している一部の学校は全国大会とリーグ戦の両方で戦いを繰り広げている。
これも世界的には異例のシステムである。
欧州や南米のアカデミーは至ってシンプルなシステムだ。
そして日本よりも更にシビアな現実を学生の頃から体験している。
まず、アカデミーといっても更に年代別で区分されているのだが、当然区分が上がる事に人数が絞られ、クラブから実力不足と判断されれば、アカデミーから追い出されてしまう。
これは日本でも同じだ。
ただ、日本の場合はここで追い出されても、転校して部活でサッカーを継続する事ができる。
つまり、プロへの道はまだ繋がっている。
だが、欧州ではその可能性は皆無だ。
残念ながら、高校や大学の部活、体育会ルートでプロになる事はまずない。
プロになる為にはアカデミーに所属する事が絶対条件なのである。
なので、10代半ばでプロへの道を諦める事は珍しくない。
その代わり、日本と違い10代半ばから後半の年齢でトップチームへの昇格やデビューは珍しくない。
日本でも、高校生でありながらプロデビューした者は多いが、欧州の比ではない。
しかも欧州のトップリーグともなれば、既に日本で実績を残しているプロでも移籍は困難だ。
それを10代のうちに成し遂げてしまうのだから、ここでのタイムロスは深刻だ。
ましてや日本から海外へと移籍をすると、言語や文化の問題にぶち当たる。
実力はありつつも、この問題に対応できずに日本へ早期帰国する者が後を絶たない。
話が逸れてしまったが、王子とのプロジェクトの一環として、学生らの国際間のギャップを減らそうという目的がある。
要は早いうちに海外に目を向け、対策をする為に日頃から意識を高める。その為に何をするべきかという話。
そこで王子と計画していたのが先述した「国際リーグ戦」。
現時点で、海外のアカデミーとの試合はあるにはあるが、正直少ない。
しかも親善試合といった意味合いが強いので、どうしても欧州の強豪クラブは日頃のリーグ戦よりも緩んでしまう。
それはあまりに勿体無い。
ならば、リーグ戦にして賞金や称号といったメリットを用意してしまおうという話。
当然、いきなり欧州トップリーグのアカデミーを参戦させる事は難しい。
であれば、まずはアジア限定で試みようと王子と計画していた。
で、この計画を前倒ししようと王子に話した訳だが...
「それは俺も考えていた」
ですよね...
「ただ、すぐに実行できない問題が複数ある」
それはなんとなく見当がつく...
「本来のプロジェクトとの時期の関係かな?」
「正解だ。今回のアカデミーの設立と育成には自信があるが、一体どれ程の期間で各国の上位クラブと競い合えるレベルになるかが見当がつかない」
そりゃあそうだ。
その件に関しては育成も重要だが、既にある程度のレベルに達している選手の獲得の有無にかかっている。
そこに時間がかかり過ぎ、そうこうしている間に本来予定している町でアカデミーが本格始動してしまったら中途半端な結果を招く事になる。
正直、そちらのプロジェクトもまだ具体的な計画は立てられていないので、なんとも言えないが。
だが、王子が既にアカデミーを設立した以上、何としても本プロジェクトの前にある程度、形と成果を残さなくてはならない。
それに、アジア限定とはいえ各国の上位クラブを参戦させるだけの理由と利益の用意も必須だ。
だが、それにはアテがある。
「アカデミーに関しては自力で成長させるしかないね。ただ、これも前倒しになるが、富田会長を早々に巻き込む必要がある」
最早、富田会長は俺の中でドラえもんに近い存在だ。
「だが、この件というか、我々の本プロジェクトへの協力についてはまだ彼には話していないだろう?」
「まぁね。本プロジェクトの計画が具体的にまとまってから話そうと思っていたし」
「富田は他の案件にもいくつか関わっているし、すぐに対応できるものなのか?」
「彼は日本でもトップクラスの経営者だ。その力というか、器を侮ってはいけないよ」
本人がいないところで勝手にドヤってしまったが、彼にはベルもついているし何とかなるだろう。
てか、またベルに小言を言われそうだが、それくらいは受け入れる覚悟をしなくては。
「俺が近日中に富田会長と話をつけてくるよ。そして、そこで了承を得られたら王子から富田自動車と王子の会社の共同で国際リーグの発足を発表してしまおう」
富田会長、勝手に話を進めて申し訳ない。勿論、プロジェクトにかかる費用の大半は王子持ちで、ちゃんと利益というか、メリットを提示するので許して欲しい。
「もしこの話が上手くいけば箔がついて、王子のアカデミーにも日本や各国の優秀な人材が集まりやすくなるかもしれないしね」
「では、リーグの発表と同時に私が設立したアカデミーの宣伝も存分にしていいという事だな?」
「イエス。だから俺が富田会長と話をつけたら、その件も含めて3人で話し合おう」
「それは構わないが、どうせなら3人で最初から話し合った方が早くないか?」
いや、あんたのスケジュールだって相当えげつないでしょ?
「このプロジェクトの為なら私の都合など、どうにでも都合がつけられるさ」
「なので、全面的に富田のスケジュールに合わせる。それに、お前やレヴィモスがいれば移動時間は皆無だからな」
まぁね。
ある意味、俺らは世界最速の交通手段を持ち合わせているのだ。
それを有効活用しない手はない。
「そうと決まれば、試合観戦の前に富田会長と連絡を取ってスケジュールの調整をするとしよう」
すっかり蚊帳の外になっていたレヴィも呆れた様子で俺たちを見ている。
「お前らの我儘っぷりも相当だな」
悪魔に褒められてしまった...ではなくて、悪魔と比較した上での皮肉かもしれないが、それ以前に主人と王子に向かって何て言いようだ!
まぁ、ここまでの内容が内容なだけに強く反論はできないが...
かくして、この後富田会長のスケジュールを抑える事にも成功し、このプロジェクトは急加速していく事になる。
ちなみに、王子との試合観戦は俺の推しクラブが王子の所有するクラブに3-0という結果で完敗した...
これで王子とのプロジェクトは一旦、持ち越しで次話からは別の話になります。




