最重要課題
1人は楽だけど、適度に話し相手がいないとマジで詰む
ようやくこの課題に向き合う時がきました。
ここまで色々と外堀を埋める作業を繰り返してきたが、結局はここの問題を解決しないと何も始められない。
町を復興、発展させたくてもそこに人がいなければ意味がない。
ヴァーチャル空間なら話は別だが...
町内は未だに「帰還困難区域」が存在しており、国から居住の許可を得られない状況なのだ。
そしてその最たる原因が放射線だ。
年々、放射線量は減少してきているのだが、それでも完全クリアとは言えない状況。
これが復興を遅らせている最重要問題。
まずここの課題をクリアしない事には、人も集められないし施設も建てられない。
このプロジェクトを思いついた時から、この問題について塾考してきたのだが、なかなか踏み切れずにいた。
正直、放射線を除去する手段はある。
だが、10年以上も国がこの問題を解決できていないわけで、除去したところで色々と問題が生じるのだ。
まぁ、ここまで話が進んだ今となってはそんな事も言ってられないし、既に決意は固まっているのだが、要は手段というか手法に悩んでいる。
そんな時に彗星の如く現れたのが、ベルゼルことベルさんである。
この問題については1人で抱え込んでいたので、何気に助かります。
ベルにも相談はしていたけど、彼女は多忙を極めているのでこの件に関しては深く関わらせないようにしていた。
実際、彼女の能力を考慮すれば大した負担ではないのかもしれないが、結局ゼルが秘書を放棄した分ベルがカバーする事になったので、こんな俺でも少なからず罪悪感は感じているのだ。
なので、その分ゼルに協力してもらうのはやぶさかでは無いはず。
で、ゼルに早速相談したのだが、実に悪魔らしい回答を得られた。
「後でごちゃごちゃ言われるなら、無視するか滅ぼしちゃえばいいんじゃないの?」
「いや、俺は独裁国家を築くつもりはないからね」
「でも、プロジェクトの内容からして、最終的にそうなってもおかしくないんじゃない?」
「ん...確かに町とはかけ離れた発展を遂げる予定だけど、争い事は極力避けたい」
「もしかして、他の皆もそんな印象持ってる?」
「たぶん持ってる。お館様がこの町に拘るのは理解しているけど、最終的にはそうなるんじゃないかって」
おいおいベルさん、こいつらの教育大丈夫か?
いや、最終的にはそうなる、と言っているという事は客観的に判断した上でそうなりそうというだけで、彼女らの願望とかではないという事だ。
「確かに巨大プロジェクトではあるんだけど、俺自身はそういった願望はない。だって、そんな事になったら面倒くさいだろ?」
「お館様の実力ならそこまで面倒な事にはならないと思うけどな」
「そんな事したら、あちらの世界みたく科学や文化の発展が乏しくなるぞ?」
「それはゼルも困るだろ?」
「困る。要はある程度、人間の数は維持しておかないといけないんだね」
ちょっと引っかかる言い方だが、つまりはそういう事である。
「綺麗事は好きじゃないが、人の数だけ希望というか可能性があるとは思ってるんだよね」
「ただ、現状ではその可能性の多くが日の目を浴びる事なく埋没してると思うんだよ」
「勿論、一昔前に比べれば一人一人がチャンスを得る機会は増えてると思う」
「でも、まだまだ可能性というか発見されてない才能があるはずなんだ」
予定では、この町は学園都市とも呼べる代物に変貌する。
復興、発展だけじゃなくあらゆるジャンルの育成の場としても活躍する見込みだ。
しかもその人材は国内外を問わない。
だからこそ、人口を減らしたりましてや他国と敵対関係になるわけにはいかないのだ。
「なるほどね。この世界はこれだけ発展しているけど、まだ発展途上なんだね」
「然るべき場で各々の適切な能力を伸ばしていけば、また新しい何かが生まれる可能性が増える」
「そういう事。悪魔には劣るかもしれないが、人間の知恵と数は意外と馬鹿にできないのさ」
「その為にもまずはこの町を人が居住できる環境に戻さなくてはならない」
「だから、ゼルの力も貸してくれ」
「勿論、そのつもり。でも、何をするかもう決まってるんでしょ?」
「あぁ。後は実行するだけだ」
「で、何をするの?」
「まずは放射線を俺が独占する」




