悪魔たちの秘密の会話
曖昧なご褒美は極力避けるべし
※今回はベルことベルレティ視点でお送りします。
その議題はヨシが不在の彼女らの勉強会で、突如浮上した。
リリエル
「ご主人様って何者なの?」
やはり聞かれてしまった。
それも当然と言えよう。
突然見知らぬ世界に召喚されて、更には人間に敗北してその人物の配下になってしまったのだから。
私自身も当時は信じ難い出来事だった。
私たち神代級の悪魔は敗北というものを知らない。
もし敗北する事があるなら、同じ神代級の誰かという程度の認識だった。
それがある日唐突にその常識を覆されてしまったのだ。
アラスリュケ
「そろそろ説明してほしいものですね。むしろこの世界の常識よりそちらの方が気になりますし」
レヴィモス
「オレも同意見だ。確かに我が主に敗北はしたが、その人物について知る権利はある」
アシュロス
「てか、それって初日の段階でするべきだったんじゃない?」
ベルゼル
「説明求む」
こんな時ばかり、仲良く結託しないでほしい。
こちらもあなたたちの受け入れ準備や、各協力者たちとの連携作業で多忙を極めていたのだ。
勿論、いずれ説明するつもりではいたが。
ベルレティ
「本人がいない所でペラペラ話すわけにはいきませんが、差し障りない程度にはお話ししますよ」
「まず、何者かと言われれば人間とお答えするするしかないのですが」
レヴィモス
「あれが人間?どう考えてもオレたちと同じか、別の”超越”した何かだろ?」
リリエル
「あら、自分の主人に対してあれ呼ばわりはまずいんじゃない?」
レヴィモス
「別に本人がいない所でならいいだろ?本人の前ではちゃんと弁えるさ」
アラスリュケ
「慢心しないほうががよくてよ?またあんな目にあいたいの?」
レヴィモス
「べ、別にビビってなんかいないさ....ただ、その助言はありがたく受け取っておこう」
あまり表には出さないが、やはりあの件は相当、彼女らには堪えたようだ。
正直、私でもあれの恐怖に耐えられるかは微妙である。
ベルゼル
「で、本当に人間なの?」
ベルレティ
「正真正銘、人間ですよ。確かにデタラメな強さではありますが、それは間違いないです。それは、あなたたちも気づいたでしょ?」
私たちには相手のステータスを見通せる目がある。
それに狂いはない。
その目は間違いなく、ヨシを人間と認識している。
ただ、彼であれば私たちの目を誤魔化せる術を持ち得ていてもおかしくはないが、その可能性は低いと思われる。
当時からステータスに新たなスキルが追加される事はあっても、基本情報に変化はないからだ。
確かに当時から異常な存在ではあったが、その頃はまだまだあの世界では駆け出しの段階であった。
その証拠に晩年の彼は駆け出しの頃とは比較にならない、”理から外れた”強さを手に入れていた。
駆け出しの頃に私は敗北したのだから、彼女たちの事は笑えない。
アシュロス
「だからこそ質問してるんだよね〜。人間であの領域に辿り着くなんて見たことも聞いた事もない」
リリエル
「鯔のつまり、そこなのよね。人間とは認識できても、実際の実力はそれを遥かに凌駕しているし」
「何をどうしたら人間が私たちを圧倒する程の存在になるわけ?」
実はその質問に対する心当たりはある。
だが、本人不在の場で話すことではない。
ベルレティ
「私をあちらの世界で召喚した時点で、異常な存在でしたからね。その辺りは私でもお答えできません」
アラスリュケ
「ほ〜ん...やはりあなたはあちらの世界で召喚されたんですね」
あ、それすらも説明していなかったか。
私らしくもない。
この抜けた感じ、私も彼の影響でも受けてるのかしら?
ベルレティ
「その通りです。あちらの世界でも彼と行動を共にし、各地を転々としていましたね」
レヴィモス
「ようやく、疑問が1つ解決したぜ」
?
私以外の全員が頷いている。
「あっちの世界で結構派手な戦闘を繰り返してただろ?それを見る事はできなかったが、妙な気配というか波長だけはこっちにも届いてたんだよ」
そういえば、これまでの彼女らの発言や行動には疑問があった。
あれ程の大規模な戦闘を繰り返していれば、彼女らが覗き見をしないはずがない。
見ていれば最初から彼の存在を知っていたはずだ。
ベルゼル
「不思議だったんだよね。ある日を境に急に人間たちの世界を見れなくなった」
「まるで何かに妨害されていたみたいに...」
なるほど...それならこれまでの発言にも説明がつく。
但し、妨害されていたかもしれないという点は気になるが、もしや...
アシュロス
「十中八九、主の仕業だろうね」
やはりそうなるか...
正直、心当たりはまるでないが彼ならやりかねない。
リリエル
「謎は深まるばかりね。私たちが干渉できない程の魔法もそうだけど、そもそもなぜそんな事をしたかも疑問が残るし」
アラスリュケ
「結局は堂々巡りになりそうですね。まぁ、まだ言えない事もあるんでしょうけど...」
ベルゼル
「それはそのうち話してくれるんでしょ?」
「今はその段階じゃないってだけで」
合理的な思考で助かる。
これ以上の質問は現段階では不毛だから。
アシュロス
「それよりも、こちらの要望にどこまで応えられるかが気になるかな」
リリエル
「そうね。金銭以外にも、可能な範囲で要望は叶えると話していたし」
アラスリュケ
「悪魔相手に要望に応えるだなんて、本当にいい度胸をしてますよね」
レヴィモス
「オレは最初から何を要求するか決まっているから、本当に楽しみでならないよ」
ベルゼル
「私もなんとなく決まってる。正直、それが叶うなら金銭は割とどうでもいい」
新米のくせに中々に太々しい事。
まぁ、私もこの世界ではまだまだ新米の部類ではありますが...
ヨシもなぜ、わざわざあんな事を言ったのだか...
ある意味、彼らしいとも言えますが。
「とりあえず、今日はここまでですね」
「諸々の疑問はそのうち、彼が話してくれるでしょう」
これくらいは彼に丸投げしても許されるだろう。
それ以上にこちらは色々と手を尽くしているわけだし。
「あ、ゼルはちょっと残って。この後、ヨシから話があるらしいから」
2人で何を話すかはある程予想がついているが、私は深入りしない。
何となく、同席しない事が正解だと察した。
面倒事は極力避けるに越した事はない。
何だか、私もヨシに似てきたような気がするのは気のせいだろうか?




