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異世界帰りの町おこし  作者: 残業200時間
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バカにつける薬はない

研修中に突然、現場へ投入されるなんてよくある事だよね

 人間はどこまでも欲深い生き物だ。




 テュラム会長曰く、どうやら前社長を担ぎ上げていた役員の残党たちがクーデターを目論んでいるとの事。


 しかも俺が掘り当てた水源を自分たちの手柄にしようとしているらしい。


 ぶっちゃけ、それは無理があるだろう。


 だが、それもそうでもないらしく...


 「どうやら、例の競合社が絡んでるらしくてね」


 あぁ、前社長を誑かす為に企業スパイを送り込んだ会社か。


 「実は君が掘削したあの水源地はその競合社のグループ会社が拠点を構えている地区でね。こちらとしても手続きは万全だったんだが、後になって難癖をつけられてね...」


 そういう事か...


 ただ、ちゃんとあの後水源地は一度元通りの更地に戻しているのだ。


 そして、速攻で土地を買収し正式な手続きを経た上で再び掘削した。


 しかし、水源が発見された事が発表され慌てて競合社のN社がしゃしゃり出てきたわけだ。


 ここで疑問なのは、なぜ土地を買収した時点で抵抗してこなかったのかという事だが、グループ会社といっても末端中の末端なのだ。


 グループ傘下ではあるものの、N社との関連性が低いらしく、報告を怠ったと予想される。


 案の定、N社自体も末端企業を放置しているような状態だったので、気づくのが遅れた。


 で、今になってその地区の役人と土地を売却した民間人を懐柔したわけだ。


 そしてヴォルテクス社に不正な取引を迫られたと主張しているらしい。


 

 ベタなパワープレーだなぁ...


 しかも、最終的には例の役員たちに水源の権利を与えて自分たちで管理しようとしている節があるし。


 ちなみにN社が企業スパイを雇った件については不問にしていた。


 会長は社長を退任させる際、俺が用意した情報漏洩等の証拠を活用したのだが、N社については不問にしていた。


 正直、あまいと思ったが業界の事情とか俺は知らんし、下手に拗れても面倒だと思ったので俺もスルーした。


 だが、企業スパイがN社の役員と密会している様子はしっかりと録画しており、会話の内容も筒抜けだ。


 当然、その映像は未だ俺の手元にある。


 

 「手っ取り早く例の映像で反撃する?」


 渋い顔を見せる会長。


 「どうもそんな簡単な話で済みそうでなくてね...どうやら息子の勤務先付近に不審な人物がうろつていたり、事務所が空き巣に荒らされたとの報告が挙がっているんだよ」


 まるで映画とかフィクションの世界だな...


 N社は反グレ集団なのか?


 仮にもヴォルテクス社と競合するレベルの企業なのに、なんともお粗末というか時代錯誤な組織らしい。


 まぁ、組織というと何も知らない社員が気の毒だから、トップか役員、はたまた両方が時代遅れのチンピラなのだろう。


 例の映像を用いれば話は早いのかもしれないが、同時にリスクもある。


 なりふり構わず、報復として息子さんに直接手を出されても困るからね。


 それにN社と繋がっている前政権の残党も排除しなくてはならない。


 少々、面倒だな...


 会長も息子が関わっているだけに、下手に行動が取れないらしい。


 ただ、不安は大いにあるがこれは丁度良い機会かもしれない。


 おそらくこの話を切り出した時点で、会長もある程度覚悟はしているだろうし...


 


 「じゃあ早速、秘書に働いてもらいましょうか」


 「申し訳ないが、お願いできるかな。できれば君にもフォローに回って欲しいのだが...」


 やはり予想はしつつも、不安ではあるようだね。


 そりゃあそうだ。


 主人である俺ですら不安だもの。


 それに現代に召喚してからまだ2日程度だし。


 ベルの指導の元、絶賛現代社会について研修中なのだ。


 どこまでの知識というか、常識が身についているのか未知数である。


 

 「ちなみに期日とかある?」


 会長の表情が険しい...


 「可能であれば今すぐにでも何とかしてほしい。実は、息子の自宅周辺にもそれらしい連中がうろついているらしくてね...かなり焦燥しているようなんだ...」


 会長にしては珍しく動揺している。


 やはり身内が絡んでいるだけあって、予想以上に深刻に捉えているようだ。


 まぁわからなくはない。


 もし俺の身内に手を出されたら、始末しかねないし。


 だが、これはお互いにチャンスでもある。


 会長は秘書の力も確認できるし、俺は会長に貸しを作れるからね。


 それに協力者である会長の厄介な競合相手を大人しくさせれば、遠からずこちらの利益にもなる。



 

 「わかりました。今すぐにでも動きましょう。勿論、俺もフォローに入ります」


 内容が内容なだけに思わず敬語になってしまった。


 「ありがとう。経営者としては失格かもしれないが、まずは役員たちの件よりも息子の安全の確保を優先してもらえないだろうか...」


 「了解。ただ、自宅や勤務先にうろついている連中はすぐには捕縛しない。おそらく末端だろうしね」


 「そいつらの親玉を見つけて、更にそいつと繋がっているN社の人物も抑える」


 「勿論、その間は息子さんに警護、というか例の秘書をつけるから安心してほしい」


 「あまり大きな声では言えないが、核ミサイルが飛んでこようが息子さんの安全は保証する」



 ようやく会長の表情から笑みが溢れる。



 「どこまで本気なのかはわからないが、君が言うと冗談に聞こえないよ」


 「だが、安心はできた。私事で申し訳ないが宜しく頼む」


 今更だけど、このクラスの経営者に頭を下げられると何とも複雑な感情になる。


 「ダテにあなたたち経営者相手に、身一つでここまできてないからね。お任せあれ」


 


 さて、誰をテュラム会長の秘書に任命するべきか。


 と言っても、実は最初から誰にするかはある程度決めていたのだが...


 

 

 



 

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