魔法のシビアな事情とシビアな懐事情
雇用する際は慎重に
「まさかこの歳で消費者金融にお世話になるとは...」
とりあえず、一晩で5人の住居を作る事には成功した。
といってもベルの時と同様、壁の中に空洞を作って結界を張っただけだが。
これで海岸の断崖絶壁の中に5人とベルの部屋、会議室で合計7部屋。
イメージ的にはアリの巣みたいな感じだろうか?
但し、各部屋は繋がっていない。
しかも各部屋には結界も張ってあるから、無断で侵入する事もできない。
まぁ、悪魔たちが本気を出せば出来なくもないんだろうけど。
一応、各部屋の結界は本人の了承が得られないと入室できない。
魔法ってこういう時、ホント便利。
結界を張る際に、その部屋に住まう本人の魔気をちょっと混ぜて組み立てるだけ。
正直、原理の説明は難しい。
生物は当たり前のように呼吸をしているが、その原理を正しく理解した上で呼吸している生物がどれだけ存在するだろうか?
最早、そういうレベルの話。
極端な話、魔法は魔気とイメージ、強靭な精神力と肉体が全て。
ただ、これらの項目全てを一線級まで揃えられる存在は殆どいない。
例えどんなにイメージを具体的に思い描けていても、それに足りうる魔気がなければ意味がない。
そして、そのイメージを発動した際に耐えうる精神力もなければ意味がない。
当然、肉体の強さもそこに加わる。
シビアだが、全てが揃わなければ魔法を発動できないのだ。
だからこそ、自分の身の丈に合った魔法の習得を大半の者たちは目指す。
どの程度の魔法までなら行使できるかを正確に把握するだけでも莫大な時間がかかる。
あと、意外かもしれないが強靭な肉体が必須という点も魔法使い泣かせではある。
肉体強化は戦士らの得意分野だからね。
ある程度まで鍛えれば身体強化の魔法で補完もできるのだが、そのある程度にたどり着くのが難しい。
更に、せっかくそこまで鍛えたのに身体強化の魔法を習得できないというオチもある。
戦士などの近接戦闘を得意とする者たちは、身体強化の習得にそこまで苦労しないのだが、魔法使いはそうはいかない。
身体を強化するイメージが乏しい、もしくは沸かないのだ。
だからこそ、魔法の学習と肉体の鍛錬は同時に行うべきなのだが、魔法使いを目指す者たちは当然のように肉体の鍛錬を怠る。
怠る理由としては、単純に鍛錬が嫌なのと、鍛錬をしなくてもある程度おいしいポジションに辿り着けるからである。
だから、俺やベルから言わせればそんな奴らは戦力としてカウントするに値しない。
本物の強者の前では案山子みたいなもんだからね。
だが、彼らの大半はそんな強者と対峙する事なく、または知る事もなく人生を終えるので仕方ない。
話は脱線したが、魔法とは使われる側も使う側も理不尽という話。
ちなみに、今回のイトリでの買い物は最低限のベッド周りの商品だけ。
単純に予算が厳しいというのもあるが、彼女らの趣味嗜好を把握していない点と、この世界の常識を把握してからのほうが効率が良いと判断したから。
とりわけ、寝具類だけはすぐに必要だったので急いで購入した次第だ。
ベル同様、店舗に訪れた彼女らのリアクションは中々に見応えがあった。
驚いてくれたようで何より。
但し、ベルも含めて6人の美女を引き連れる事になったので、周囲の視線が常に突き刺さった状態だった。
彼女らはそんな事は微塵も気にしていなかったが、元隠キャの俺としては地味に堪えた。
何はともあれ、最低限の生活環境は整えた。
テーブルとか食器類などは収納していた異世界の物を代用。
照明は各々が魔法で代用してもらう事にした。
彼女らは食事をしなくとも生き延びられるが、何も提供しないわけにはいかない。
食費だけでも地味にキツい出費だ。
早いうちに収入額を増額する手続きというか、交渉をしなくては...
とりあえず、今からテュラム会長にアポをとろう。
早ければ、今日中か明日中には再びフランスへ発つ事になる。
勿論、また不法入国になるわけだが...




