異世界バトル閉幕
新人研修は程々に
「ここからは俺のターンだ」
こういう展開って久々だから、正直ちょっとテンションが上がっている。
異世界でも晩年はバトルらしいバトルはご無沙汰だったしね。
ましてや目の前にいる5人の悪魔は、各々が一瞬で世界を滅ぼせる力を有している。
ここまでの強敵は異世界ですら滅多にお目にかかれない。
てか、冒険者や騎士ですら一生でこんな窮地に晒される機会は皆無といえる。
彼らにも窮地はあるだろうが、それはもっと現実的なものだ。
5人の神代級の悪魔と対峙したのは、おそらく俺が人類初ではないだろうか?
まぁ、召喚したのが俺自身だから自業自得なんだけど...
あまり時間をかけると現代にどんな影響が出るかもわからんし、どうしてくれようか。
一人一人相手にするのも悪くはないが、万が一の事を考えると悪手だと思える。
しかも召喚した時と同じで、なんか小物感が漂いそうで嫌だ。
やはり、まとめて片付ける手段のほうが効率的で尚且つ、威厳を示せるのではないだろうか?
手段はいくつかあるのだが、どれにすべきか悩む。
まとめて焼き尽くす、氷づかせる、切り刻む、麻痺、毒、精神系の魔法...etc
どれもしっくりこないな。
それにこの手の攻撃って慣れてそうだし。
ダメージは与えられるが、驚きがない。
となると...
何かを察したのか5人の警戒心が上がり、先程よりも殺気も増している。
まぁ、これからやる事にそんなの関係ないけど。
「宵闇の晩餐」発動。
すると、5人の背後に突如漆黒の十字架が顕れ、瞬く間に張り付けにされる。
「う、動けない...まさか、これは...」
銀髪の悪魔は早くも察したようだ。
「もう君たちは何もできないよ。張り付けられた時点で終了だから。これで少しは俺に協力してくれる気になったかな?」
割と冷静そうな赤髪と青髪の2人も苦虫を噛んだような表情をしている。
「動きを封じたからってなんだってんだ?俺らにダメージは与えられてないし、消滅させる事も不可能。どうせこの魔法も維持できる時間は限られてるんだろ?お前の寿命が少し延びただけで、何もしてないと同義なんだよ!」
このポニテの悪魔はまだ察しきれてないようだね。
他の4人は黙り込んでいるようだが、安心してほしい。
俺は差別をするつもりはない。
最初から5人全員に等しく苦痛を与えるつもりなのだから。
「悪いけど、この魔法はただ動きを封じるだけじゃないんだよ。これはただの前準備」
「本番はここからさ」
すると、各々の目の前に暗闇が顕現する。
勿論、ただの暗闇ではない。
その深淵の奥から、歯茎が剥き出しで涎がダラダラの巨大な口が姿を顕す。
青ざめた表情を見せる者、何やら覚悟をしている者、まだ必死で抗おうとする者、それぞれのリアクションが見て取れるが、1つだけ共通している点がある。
それは「得体の知れないモノ」に恐怖を覚えたという事。
いくら隠そうが精神強化された俺の感覚は騙せない。
離れて見ているベルからも僅かにその感情が伝わってくる。
恐怖の象徴たる悪魔に恐怖を与えてこそ、効果覿面というもの。
我ながら中々、エグいチョイスをしたと思う。
「もうわかったから、さっさとこれを解除しなさいよ」
この後に及んでまだ末っ子悪魔は立場を弁えていないようだ。
「何がわかったんだ?」
その途端、得体の知れないモノが末っ子悪魔へ齧り付き、貪り始める。
「ガハッ...!!...い、一体何を...!?」
勿論、本当に身体を齧っているわけではない。
魂だけを齧り、貪っているのだ。
その姿は悍ましく、「得体の知れないモノ」は容赦無く魂を食い散らかしていく。
「先程、ダメージを与える事ができない、消滅も不可能と言ってた奴がいるが、なぜそんな錯覚をしているんだ?」
先程よりも更に恐怖の感情が伝わってくる。
「悪魔は無敵でも不老不死でもない。てか、ベルが俺の横にいる時点で本当は気づいていたんだろう?」
そう、彼女が俺に協力的な時点で自分ではこの人間を仕留めきれないと察したはずだ。
だが、自分と同じ神代級の悪魔が5人も揃っていた事で、無意識に危機感が薄れていたのだ。
本来なら、5人同時に召喚された時点で異変に向き合うべきだったが、やはりそこはプライドが上回ってしまったのだろう。
だからこそ、彼女らは俺に敵対するような行動を選択してしまったのだ。
まぁ、悪魔の頂点にいるような存在だし、敗北の経験など殆どどころか、下手すると皆無かもしれないしね。
そういう驕りは今のうちに改善してもらわなくては。
「わ、わかったから、もう...」
末っ子悪魔が息も絶え絶えで何かを訴えてくる。
先程よりは状況を理解したようだ。
だが、これで終わりではない。
「1人だけこんな目に遭うのは不公平だからね。ここからは全員で痛みを共有してもらおうか」
一瞬で青ざめた表情を見せる他の4人。
同時に「得体の知れないモノ」が彼女らに襲いかかる。
「「「「ギィィィィィ!!!!!」」」」
なんとも品のない断末魔だ。
必死で耐えているようだが、まるで無意味。
だがそこは彼女らにも神代級としてのプライドがあるのだろう。
勿論、俺も彼女らをこのまま消滅させるつもりはない。
彼女らの協力はプロジェクトに必須だからね。
程よいところで、この拷問も終わらせるつもりなのだ。
そんな事を考えていると、ベルがなんともいえない表情で語りかけてきた。
「彼女らを完全消滅させる気ですか?」
ん?
よく見ると5人の姿が半透明になっている。
どうやら、久々にこの魔法を使用したせいか完全に匙加減を間違えてしまった。
急いで魔法を解除するが全員、結界の底でうつ伏せになりピクリとも動かない。
「やべっ....やり過ぎた...」
「ま、まだ生きてるよね?」
画して現代初であろう、異世界バトルはあっさり閉幕した。




