異世界バトル開幕!!
筋トレしておいてよかった
「○した後、魂を回収して千年ほど絶え間なく苦痛を与えてあげる」
どうやら俺は死後、天国にも地獄にも行けずこの末っ子悪魔に拷問される事が決定したらしい。
てか、魂だけの状態でも意識ってあるのだろうか?
あるとしたら、マジで今のうちにこの悪魔を徹底的に教育しておかないとまずい...
最悪、完全消滅させないと楽しいはずの老後をビクビクしながら過ごす事になる。
「独占するのはよくないわよ。でも、千年後に譲ってくれるのならそれもいいかも♪」
妖艶な表情と口調で赤い悪魔が賛同している。
じゃあ、千年で終わらないじゃん。
期間も明言しないあたり、余計にタチが悪い。
「御託は後で聞いてやるよ。とりあえず死ね!」
ポニテの悪魔が脚を振り上げ勢いよく振り下ろすと、俺の頭上から理不尽な空気の塊と振動が襲いかかり身動きが取れなくなる。
普通の人間ならこの瞬間に圧死するか身体がバラバラになる程の威力だ。
「てか死んだら御託も言えないだろうが!」
「あら〜?あれで死なないなんて、本当に人間ではなさそうですね」
気だるげな美女が淡々とした表情で様子を窺っている。
人間じゃないなら、なんだっって言うんだよ...
まぁ、神代級の悪魔の攻撃を受けても無傷だけどさ。
それだって、魔法で無効化させてるだけだしね。
「安心するのはまだ早いんじゃない?」
すると黒い矢印の様なものが、凄まじい勢いで俺の心臓を目掛けて飛んでくる。
こんな状況で安心なんかしていないんだが...
咄嗟に矢印を躱す。
だが、それは誘導に過ぎなかったようだ。
「はい、これでお終い」
躱した先には銀髪の悪魔が待ち構えており、いつの間にか手に持ったサーベルを振りかざし、俺の首筋を掠める。
一応、防御魔法を纏っていたのだが、あっさりとスリ抜けてきた。
擦り傷程度で済んで本当によかった。
警戒していたつもりだが、明らかに見込みが甘かった...
「本当にまだ安心するのは早いよ」
え?
マジで軽くホッと一息ついたところで、フラグ立てるような発言は怖いんだが...
「このサーベルは私特製の猛毒ならぬ、疫病付きの一振りだから」
あぁ、そういう事ね。
「それなら心配ご無用。俺は毒や病原の全耐性持ちだから」
仕掛けてきた3人の悪魔が苦々しい表情を浮かべている。
「なら、こういうのはどうかしら?」
視界が真っ赤な薔薇の花弁で埋め尽くされた。
思考が若干、ボヤけてきたような...
それに薔薇とは異なる、妙に甘ったるい香りが鼻腔をくすぐる。
「どうやらこちらの耐性は弱いようね。これであなたは私の虜♪」
やっぱり真っ赤な色欲悪魔の仕業か!
だが、この程度は想定内。
「精神強化レベル3発動」
瞬く間に頭の中がクリアになっていく。
久々に思考のキレが向上する感覚が甦る。
「なぁ〜んだ、こっちの耐性もあるわけね。可愛げがないこと」
不服そうですね。
俺としても、こんな魔法には絶対に屈したくない。
女性からの誘惑といった類は最初から信じてないしね。
それは学生時代や社畜時代を通じて痛い程身に沁みており、身の程を弁えているのだ。
自分の人生でそんな都合のいい事はないと割り切っている。
悲しいが、それが現実。
でも、童貞ではないからね!
ちゃんと行動を起こして交際にまで至っているから!
まぁ、ハードル下げた相手に告白しても10回に1回成功したら御の字レベルの人生だけど...
少々、ネガティブな過去を思い出したが、精神強化をしているから無問題!
なんなら、少々憤りを感じているくらいだ。
「で、そっちの青髪さんは何も仕掛けてこないの?」
とりあえず、全員の力量を確かめたいと思っていたのだが、その考えは杞憂だったようだ。
いつの間にか俺の足元には大量の水が渦巻いており、瞬く間に渦に飲み込まれた。
「そういう傲慢な態度が私は好きじゃなくてよ?」
それは俺の台詞だ。
召喚主に躊躇いもせず、即死級の攻撃を次々に浴びせやがって...
今だって、渦によって防御魔法がどんどん削られている。
「ついでにこれも喰らっておきな!」
すると水の渦の中に大量の砂塵が紛れ込んでくる。
レヴィモスの仕業だ。
砂が混じる事によって、攻撃がより重さと厚みを増している。
先程の倍の速度ででガンガン防御魔法が削られていく。
「余計な事を...少々、無粋じゃなくて?」
「攻撃がヌルいんだよ!その証拠にまだピンピンしてるじゃねぇか!」
罵り合っているが、なかなか良いコンビネーションだ。
てか、ベルからは互いに敵対関係であると聞いていたが、意外と息が合っていると思うのは気のせいだろうか?
その分、ヘイトが絶賛俺に集中しているが...
それはそれでなんとも複雑だ...
そしてまだ口論が続いているが、その間も魔法の威力が弱まるどころか更に精度が高まり、俺は渦の中心に向けてどんどん飲み込まれている。
防御も削られ、このままでは中心に辿り着く頃には全身がバラバラになっている未来が待ち受けているだろう。
もちろん、そんな未来を享受する気はない。
気づけば結界も4枚破壊されている。
まだまだ確かめたい事はあるが、これ以上戦闘を継続するのは悪手だ。
何かの拍子で残りの結界を一気に破壊されかねないし。
とりあえず、この渦巻からの脱出を図らなくては。
「確かこんな感じだったかな?」
誰かさんのように脚を振り上げ勢いよく振り下ろす。
すると圧縮された空気の塊と振動によって、一瞬で渦が消滅する。
明らかに先程よりも警戒心を強める悪魔たち...
ようやく真剣モードに突入したようだ。
「遊びは終わりだ」
厨二全開の台詞が反撃の狼煙を上げる...




