禁忌を犯す決意
たまには身の丈に合った緊張感が必要
そういえば、誰を召喚しよう?
思い返せば、俺には肝心な悪魔の情報が殆どなかったんだった。
「で、ベルさんや、有力な候補者はいる?」
ベルが珍しく困惑した表情を見せている。
現時点でそこまで悩まれるとマジで不安しかないんだが....
「あくまで候補者という前提ですが、多少強引に挙げるなら希望通り5人程アテがあります...」
強引って...
どんだけ難ありの連中なんだよ...
「その5人は何が問題なの?」
「問題を挙げればキリがないのですが端的に言うと5人共、神代級の悪魔になります」
あぁ...なるほど...
ベルと同等の悪魔を5人か...
異世界でそんな奴らを同時に従えたなら、世界征服を目論んでいると断定されても文句は言えまい。
「他に候補者はいないの?」
「正直に言いますと、私も下位の悪魔には詳しくありません。数も多いですし」
「いや、ベルが最上級なだけで一般的には上位と言える悪魔はそれなりにいるでしょ」
「私からすれば下位の者たちに大した違いを見出せません」
普段は思慮深くて気遣いができる子なのに、悪魔に関してはなかなか辛辣...
「私たちの世界は力による上下関係がハッキリとしていますから」
「まぁ、多少見込みのある者たちもいますが、私の前では塵芥に等しいです」
どういう自慢だよ。
「一応聞くけど、候補の5人は具体的に何が問題なの?」
「性格ですね。能力は申し分ないのですが....」
そりゃあ大問題だ。
シンプル且つ最も無視できない問題。
「私程ではないにしても、彼女らも神代級ですからね。プライドが高く狡猾で、非常に好戦的です」
全員女性なの?しかもその上、脳筋系?
でもベルだって召喚早々、俺を襲ってきたわけだし人の事は言えないのでは?
「ちなみにですが、彼女らの中には召喚された瞬間に当時の王国を滅ぼした者がいますよ」
マジで?
「てか、召喚した連中は何の対策も無しに神代級の悪魔を召喚したの?」
「私も全てを見ていたわけではありませんが、召喚するだけで精一杯だったようですね。彼女を召喚する為に王国が総出で数十年の歳月を費やしていましたから。しかも王の寿命もあと僅かだったようですし」
数十年も要したけど、それでも相当焦ってたというか、急ピッチだったようだね。
寿命も間近だったって事は悪魔の召喚は王たっての希望だったのかな?
となると、不老不死とか世界征服的な事が目的だったのだろうか?
まぁ、いずれにしても分不相応だったのだろう。
でなければ滅びる事などなかっただろうし。
「聞けば聞くほど、物騒な情報ばかり耳に入るね」
「ある意味、私たちはそういう存在ですからね。他の4名も召喚された際には似た様なことをしでかしてますし」
ハァ...
一瞬で王国を滅ぼす様な連中が5人か...
ちなみに、軍事レベルに関しては異世界は現代の比ではない。
宮廷魔法使いであれば、1人で現代の大国を苦もなく滅ぼせるレベルだ。
そんな連中が何人も揃っていたにもかかわらず、瞬殺。
物騒なんてレベルではない。
ましてや、彼女らからすれば現代の軍事力なんて無に等しい。
下手をすれば、星ごと消されるのではないか?
「やはりこの件は保留にして、別の方法を模索しましょうか?」
保留ってのが引っかかるね。
つまり遅かれ早かれ協力が必要って事かな。
確かに、今すぐ俺たちの懐刀になるような存在って見つからないし、育成するにしても時間がかかり過ぎる。
これ以上の検討は時間の無駄だな。
「いや、彼女らを召喚しよう」
「でないと先に進めそうにないしね」
確かに危険で好戦的な存在だが、逆に言えば味方になればこれ以上ない頼もしい存在だ。
とはいえ、常にそんな連中が側にいる以上、スリリングな日々から逃れられそうにはないが...
だがこれ以上悩むのはナンセンスだ。
襲いかかってくるならそれに応じるまで。
悪魔は上下関係をハッキリさせたい生き物の様だし。
実際にベルも戦闘後には大人しくなったというか、会話ができる様になったしね。
「相変わらず豪胆ですね」
「町おこしの為に伝説級の悪魔を召喚するなんて聞いた事もない」
ん〜確かに目的に対してやりすぎな感は否めないが、時間がどれだけあるかわからないしね。
もしかすると、魔気の影響で俺の寿命が延びているのかもしれないが、その逆だって然り。
てか、これって結果的に、滅ぼされた王様と同じ事をしようとしてないか?
世界征服とか不老不死には興味はないが、伝説級の悪魔を召喚しようとしているのは変わらないし。
あとは俺の存在が彼女らに対して、相応か分不相応か...
ある意味、分水嶺に立たされてるね。
だが、たまにはこういう状況も悪くない。
「その5人の詳細を教えてくれ」
そして、憂鬱でありつつも密かに高揚感を覚えながら、召喚の準備に取り掛かるのだった。




