誇示は程々に
丸投げする覚悟がない奴は丸投げをするな
完全に監督監督不行届ですわ...
どんな手段を用いて交渉していたのかと思いきや、とんでもない事実が発覚した。
基本的にはこれまで俺がしてきた交渉を参考にしていたのだが、看過し難い事をやらかしていた。
まずは俺と同様、転移やちょっと魔法を披露し、ニンジンを用意して話を進めていたらしい。
そこから話が発展し、ジョンソン氏が現在、スカイネット社で進行しているプロジェクトのちょっとした愚痴を
零したのが事の発端だった。
なんでも、アメリカ国内で新たな倉庫兼オフィスを建築予定らしく、同社史上、最大規模の施設になるらしいのだが、いざ工事を開始したところ、とんでもない事実が発覚したらしい。
この施設は地下5階まで建築予定なのだが、なんと予定地の地下に東京ドーム1個分以上の強固な岩盤が発見されたのだ。
そのせいで、当初の予定よりも更に1年以上の工期がプラスされるらしい。
岩盤の除去にかかる費用が追加されるが、それ自体はスカイネット社には問題ない。問題なのはやはり工期との事。
既に人事の異動や採用等にも動いており、彼らの予定が大幅にズレる事も大きな問題で、更には既存の倉庫や支社を売却し、新たな拠点に統合する予定でもあったので、その辺の調整にも相当骨が折れるそうだ。
だが、それを聞いたベルがとんでもない行動に打って出た。
なんとその場で予定地の場所を聞き出し、グー○ルマップで確認後に会長を連れて「自己召喚」で現場へ転移したのだ。
何、そのチート!?
基本的に自己召喚で訪れた事のない場所には転移ができない。
勿論、例外はあるのだが莫大な魔気を消費するし、精度も欠ける為、全く違う場所へ転移する可能性も高くコスパが悪い。
そしてベルが本来使用できる自己召喚はレベル2までだ。
今回の自己召喚は間違いなくそれ以上のレベルになる。
「そもそも、なんでそれをしようと思ったの?」
すると無表情で
「なんとなくできそうな気がしたので」
と言い放ちやがった...
現代の文明利器をスキルに応用するなんて、俺は全く考えていなかった。
単純にそこでベルに出し抜かれのが悔しい...
まさか、現代に召喚されて9日目の新参者に先を越されるとは...
現代に戻って完全に平和ボケしていた事を痛感する。
まぁ、新たな発見自体は嬉しいんだけど。
だが、とんでもない事はこれだけじゃない。
むしろ、これはまだ良いほう。
問題は転移後に、その岩盤を完全に破壊した事だ。
てか、正確には破壊というか溶かしたわけだが...
「そんな光景見せたら、殆ど脅迫してるようなもんじゃん!」
「そうですか?ジョンソン氏は興味津々で、「溶解」で発生した液体を採取できないかと相談してきましたよ」
ま?
その状況でなんて事しようとしてるんだよ...
しかも、科学者とかでもないのに、採取して何する気だったの?
「勿論、断りましたけど、今後の成果次第では提供するとも伝えておきました」
んんっ....
何とも言えないが、確約したわけではないし、それはまぁいいか。
当然、提供するにしても使用目的はちゃんと確認するけど。
「にしても、武力に近しい現象を披露したのはマズいだろう...」
だが、そんな苦言も何のそのと言わんばかりに切り返された。
「ジョンソン氏には必要な措置だと判断しました。岩盤の除去は予定外でしたが、元々それ以外で武力を示すつもりでしたよ」
さらっととんでもない事言ってるよ...
「ちなみに本来は何をするつもりだったの?」
「色々悩みましたが丁度、アメリカ本土に大型台風が近づいていたので、その付近まで転移してそれを消し去る場面を見学してもらう予定でした」
うわぁ...
天災を排除するって...
ある意味、岩盤破壊よりもインパクトが強いようなぁ...
でも、岩盤を容易に溶かす光景も攻撃的な感じがしてなんとも...
まぁ、ジョンソン氏の興味を引けた分、今回は「溶解」で正解だったのかな?
「ジョンソン氏はこれまでの交渉相手の中でも最も警戒すべき人物でしたからね」
「今後の計画の為にもある程度の牽制は必要だったかと」
ベルにそこまで言わせるとはね。
これまでのような交渉だったら、成立したとしても後に反旗を翻される可能性が高いと危惧したのかな?
そもそも恐怖で萎縮してしまうような人物だったら、期待外れもいいとこだし、ベルにはお説教&制裁が必要だったが、結果的にはそうはならなかった。
まぁ、内心では溶解を見た以上、警戒はしているだろうけどね。
問題はそれを見ても表面上は平静を装う事ができるかどうか。
今回は平静どころか、積極的な行動に出ようとしたくらいだから問題ない。
今後の仕事を進める上でそれは朗報とも言える。
色々言いたいことはあるが、終わってみれば結果オーライという形に収まった。
そもそも、俺は丸投げしたわけだから、そこまで強くは言えないのだ。
主人としてこの程度は受け入れなくては愛想を尽かれかねない。
今後の為にもこの優秀な秘書を労うとするか。
だがそんな俺の考えを察したのか、可愛げのない言葉を投げかけられた。
「当然、インセンティブは現金でお願いします」
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