決戦前夜
大学の講義って現在も90分?
ベル先生による1時間の講義が実施された。
こういうの久々過ぎて、ちょっと疲れた。
てか、プレゼン資料をプロジェクターでスクリーンに移して丁寧に説明していたのだが、それ、どこから持ってきた!?
そんな物購入できる資金なんて渡してないのだが...
え、通販で購入した?
しかも俺の口座から引き落とし?
「来月の収入の範囲内で金額を抑えたので大丈夫ですよ」
すっかり管理されてるなぁ...
てか、来月こそ趣味とかに資金を投入しようと考えていたのに、早くも使える金額は相当制限されてしまいそうだ。
「所謂、初期投資というやつですね」
「ムムっ...」
まぁ返済不可能な借金をする程ではないし、そう言われたら仕方ない。
にしても行動が早過ぎませんか?
せめて相談くらいしてほしかったが、結果的には購入する流れになっただろうから別にいいか。
とはいえ、意外にもベルは最低限の報連相は心得ている。
本当に必要であれば都度、報連相は実施されるが俺がそこまで必要としていないと判断すれば、それらは行われない。
俺なんかより遥かに合理的なのだ。
無駄を嫌うとかそういう次元の話ではなく、素でそれなのだ。
これはベルというより、悪魔全般に言える事。
むしろ、当時は報連相など皆無に等しかった。
自分の行動が最も最善だと彼らは信じて疑わない。
だからこそ、今は当時に比べれば大分マシなのである。
人間の感情に敏感でありながら、感情に基づく行動には鈍感というか、真っ先に無駄と判断して排除する節があったのだから。
今は俺の性格もしっかりと把握し、その上で動いてくれる。
一応、主従関係にあるわけだが、俺の発言や行動を鵜呑みにするわけでもない。
それは非常に助かっている。
俺自身、欠陥だらけの人間だからね。
契約を交わしてはいるが、事実上は対等な関係なのだ。
だからこそ、互いの欠点を補完できる。
と言っても、あまりベルの欠点は思い浮かばないし、何か助けた記憶も殆どないが...
「で、以上がジョンソン氏とスターネット社の大まかな現状になりますが、ご理解頂けましたか?」
正直、簡潔にまとめてもらった事は理解できるが、半分程度しか理解できなかった...
ベルもなんとなくそれを察している様子。
「まぁ、今回の件は私が全権を任されていますから、問題ないです。」
「ですが、後で聞いていなかったという反論はなしですよ」
しっかり釘を刺された。
俺としては、実績やら会社の詳細はそこまで重要ではない。
いや、本当は重要ではあるんだけど。
ある程度の人格、資金、能力が備わっていれば問題ないのだ。
勿論、各々の得意ジャンルというか、秀でている事業も重要ではあるが。
とりあえず、今回の報告を聞く限りではそれらの点は問題なさそうだ。
と言っても、一般的な倫理観では多少問題があるが...
ワールドクラスの巨大企業の会長という立場を考えれば、十分許容範囲ではある。
異世界絡みの人物との関わりもなさそうだしね。
ベルもその点は最も警戒していたので、問題はないだろう。
「正直、半々程度の確率でこの世界では異端とされる者との接触があると見込んでましたがね」
そんな高い確率を想定してたの!?
「そららを抜きで、一代であれ程の組織を形成したという点は驚愕に値します」
悪魔にここまで言わせるとはやはり只者ではないね。
「で、交渉は上手くやれそう?」
すると、至って冷静な表情で...
「問題ありませんね。私にとってはあちらの世界での交渉と大差ありませんし、失敗するほうが難しいくらいです」
言うねぇ...
てか、その発言って完全に死亡フラグなんだが...
余計に不安になる。
「私ならこれまでの交渉よりも具体的且つ、スムーズに交渉を進められます」
ダメ押しまでしてきたよ。
あなた、この世界に来てまだ8日目ですよ?
その自信はどこから来るんだ?
確かに、ここ数日のベルの動きは把握しきれてないし、精力的に活動していたようだが...
異世界でもベルの行動は迅速且つ正確ではあったが、現代はまるで別世界だ。
それとも俺が心配しすぎなのだろうか?
「ちなみに交渉日はもう決めてるの?」
「明日です」
早っ!!
俺でも一週間は時間をかけたし、それでも相当に早いと実感していたが、今回はそれを余裕で上回る。
ベルを召喚して8日目だが、仕事を依頼したのは3日前だ。
流石に観察期間が短すぎると思うのだが...
「これ以上時間をかけても費用対効果が低いと判断しました」
費用対効果って...
「そこまで豪語するという事はちゃんと交渉カードは用意してるんだろうな?」
「愚問ですね。既に依頼された時点でカードを何にするか決めていました」
なんか引っかかる言い方だなぁ...
的を得てないというか...
「とりあえずスーツくらいは用意してくださいよ。」
ん?
「この世界では交渉時の正装はスーツなんでしょ?...まさか...」
そのまさかです。
今月の小遣いがまた減ってしまいそうだ...




