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異世界帰りの町おこし  作者: 残業200時間
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震災の体験

空と地上って連動してるのかな?

 なんやかんや東京観光楽しかったなぁ。



 レイナ氏を連れてスカイツリーとか、ミッドタウンとか皇居周辺をお散歩したわけだが、意外と悪くなかった。


 最初から最後まで隠密スキルを使用していたので、買い物とかは一切できなかったけれど、東京の街並みや雰囲気を存分に楽しんでもらえたように思う。


 もう少し仲が進展したら、飛んで空中散歩を楽しむのも良かったがそれは次の楽しみにとっておくことにした。




 ちなみに最後にはプロジェクトの予定地に連れて行った。


 その中でも未だに立ち入り禁止とされている区域を案内したのだが、流石に言葉を失っていた。


 崩れかかった家屋や、草や蔦まみれの建物はこちらとしても考えさせられるものがある。


 異世界でも似たような光景を見たことがあるし、転移前も仕事の関係でこれらを見たことはあるのだが、現代で未だにこの状態の街並みを見るのは辛いところである。


 レイナ氏も「まるで忘れ去られたような場所だ」とか「逆にこれが人類の未来の光景なのかもね」とか、考えさせられるような事を思わず漏らしていた。


 

 だが、同時に「いつか訪れる未来の次の一歩に協力できる事は光栄だ」とも発言していた。


 どうやら彼は人類の未来はそこまで明るくないと想定しているようだ。


 俺もそこは思うところがある。


 でもこの発言自体は嬉しいね。


 ポジティブに捉えてもらえて何より。


 おそらく一般的な感覚の持ち主なら、この光景を見て例のプロジェクトの話を聞いたら引く可能性もあるわけだから。



 ちなみに震災から2年後に俺は仕事の関係でこの地を訪れたが、その時はもっと悲惨な状況だった。


 車で国道を走れたが、脇道には全てバリケードが設けられ、地元や他県から派遣された警察官が目を光らせていた。


 道が一本しかない為、渋滞が発生し唯一ある臨時のコンビニらしき店舗は駐車場が満車状態。


 店舗の中も殆どの商品が品切れとなっていた。


 そして暗くなるとパトカーなどから発せられる赤いランプが異様に目立ち、悲壮感をさらに際立たせた。


 俺は震災当日に偶然、震源地であるお隣の県で会社の研修に参加しており、震災直後に車を運転して地元方面へ戻ったのだが、その道中で目撃した光景がこの時はフラッシュバックしたものだ。


 帰りの道中はなぜか日中なのに空が薄暗くなり、雲が微妙に赤みがかっていた。


 そして急に雪が降り始め、しまいには吹雪となり完全なるホワイトアウト。


 本当に不思議な体験だった。


 それまで体験などしたことはないが、まさに世紀末といった哀愁が町並みに漂い、絶望が限りなく傍に感じるような感覚に陥った。



 もしかすると、この体験があったからこそ意外と異世界の生活にも早く順応できたのかもしれないね。


 【いざという時に誰かが助けてくれる】


 危機的状況で真っ先にそんな考えを持つ事は危険であり愚考だ。


 そんな考えは全て手を尽くした後でいい。


 やはり転移前に身をもってその体験をした事が、異世界での死を免れた大きな要因かもしれない。



 だいぶ話が逸れたが、思ったよりもレイナ氏と深い関係を築くことに成功した。



 これで残る交渉する人物は1人。


 だがこの人物はある意味最も危険な存在だ。


 当初は直接、交渉しようかと考えていたのだが、万が一のリスク回避と今後の仕事の割り振りも考慮して、交渉は秘書に任せる事にした。


 勿論、お目当ての人物と顔合わせくらいはする予定。


 但しそれは秘書が交渉を済ませた直後だ。


 べ、別にめんどくさいからじゃないよ?


 先の事を考慮して、秘書の手腕や立ち振る舞いも確認したいしね。


 

 ただ、問題なのはその秘書を用意できるかなんだよね。


 アテはあるのだけれど、アレが成功するかどうか...


 それなりに確信はあるけど、これまでよりちょっと特殊だからね...


 でも、やると決めたらさっさとやるのが一番!


 どうせ遅かれ早かれの問題だし。




 そして俺は人類史上、最大の禁忌を犯した。

 

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