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異世界帰りの町おこし  作者: 残業200時間
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妄想友達

女は愛嬌、男は度胸

 闇世に紛れて静寂に溶け込む俺。


 

 厨二病全開で、レイナ氏のリビングに登場。


 実はこういうの結構好きです。


 お高そうなヴィンテージの椅子に座った状態で隠密スキルを解いたのだが、お目当ての人物はまだ俺の存在に気づいてくれない。


 しかもテーブルを挟んで俺の正面に座っているのに。


 例の事に夢中になってるの集中しているのか知らんが、登場して既に10秒は経過しているのでちょっと恥ずかしい。


 これまでの3人はすぐに気づいてくたのになぁ。


 タイミングが悪いと言えば悪いのだが、それを意図してスキルを解いた。


 ちょっと手順が異なるが、もうカッコもつかないのでスマホを取り出しパシャリと撮影。


 ようやく目の前の不法侵入者に気づいてくれたようだ。


 

 「こんばんは、クリスティアン・レイナ会長。お楽しみのところ申し訳ないのですが...」


 「だ、誰だ!?一体何が目的だ!?」


 なんか今日は一々カッコつかないなぁ。


 せっかくだから最後まで台詞を言わせてくれよ。


 まぁ、これまでの3人が冷静過ぎただけで、こういうリアクションが本来普通なのかな。


 新鮮なリアクションで何よりだが、いきなり目的を尋ねてくるあたりしっかりと危機感は感じているようで...



 「驚かせてすみません。」


 と言いつつ、再び隠密スキルを発動させ姿を消し、また解除して目の前に登場。


 「き、君はマジシャンなのか?」


 あぁ...これだけじゃ納得しないか。


 逆にこれまでの3人はよくこのツッコミをしなかったなと感心する。


 まぁ、彼らの場合は状況を察して先の事まで瞬時に考慮できていたからこんなリアクションを取らなかったのだろうが。


 説明もかったるいし、いつも通り自己召喚レベル2でレイナ氏を連れて転移。


 「ここがどこだかわかります?」


 「こ、ここは本社の開発局の会議室か?」


 「そうです。Z社、会長兼技術開発局長のクリスティアン・レイナさん」


 既にお気づきかもしれないが、このZ社は情報・通信業において世界でも屈指のモンスターカンパニーなのだ。


 主にSNSのアレが有名。




 そして再び転移し、レイナ氏の自宅のリビングに戻る。


 呆気に取られている様子だったが、すぐにその態度は豹変した。



 「す、すごいね!今のはどうやったんだ!?」

 

 そう言いながら自分の頬を思いっきりつねっている。


 どうやら夢でない事は理解してくれたようだ。てか、アメリカ人も夢と現実の確認それなんだ。


 「催眠術にでもかかっているのか?幻覚でも見せられているのか!?」


 忙しいおっさんだなぁ。


 演説の時や職場での威厳ある姿はどこへ行った。


 

 「夢でも催眠術でもないですよ。ただの現実です。」


 落ち着きがないので、デコピンの要領で空気の塊をレイナ氏の額に向けて軽く放つ。


 「ワッツッッ!?」


 ベタなギャグ漫画のリアクションかとツッコミたくなったが、リアルでそれが見れてちょっと感動。

 

 だいぶ加減したつもりだったのだが、空気砲の衝撃でその場で尻餅をつくレイナ氏。


 ちょっと悪いことしたなぁ。


 だが、起き上がるとその後は少し冷静になった様子。


 

 「信じられないけど、マジシャンではない様だね。まるで映画の世界に飛び込んだような感覚だよ」



 先程までオーバーともいえるリアクションをとっていたのに、余裕が出てきたのかな?


 日本人だからこそ違和感を感じるのかもしれないが、欧米人ってこういう状況でも自己主張というか、表現力に抜かりがないよね。ホント、洋画とか漫画で植え付けられた印象のままというか... 当然、個人差はあるだろうが。


 とりあえず会話ができそうでなにより。



 「確かに、突然こんな体験をしたらそういった感覚に陥るのはわかりますよ。私が言うのもなんですが」


 「君は何者なんだい?まさか宇宙人とか?」


 これまた今までとは違う質問だね。


 ある意味アメリカ人らしいというか。



 ちなみにレイナ氏は国籍はアメリカだが出身は南米だ。


 これまでの様子を見ていると典型的なアメリカ人としか思えないが、陽気な一面は意外とこういうルーツが原因かもしれないね。


 逆にアメリカ人っぽすぎて違和感あるくらいだし。


 

 「勿論、地球人ですがご存知の通り、只の人間ではありません。とりあえず、人間だけど映画やコミックのキャラクターの様な事ができるという認識でお願いします。」


 ぶっちゃけ少しめんどくさくなってきた。


 

 「益々持って興味深い存在だね。そんなムービースターが私に何の用だい?」


 

 やっとここまで話が進み町おこしの件、そして協力者の存在(個人名などの詳細は伏せてる)などについて話し、そのプロジェクトへの参加と協力を要請する。


 「要は、その町おこしの宣伝をうちが担当すればいいわけだ。だが、今のところそれをしたところで、私には大したメリットが見出せないのだが...ただ、私が要請を断るのも難しいというわけだね」


 お察しの通り、実は脅迫している様なものだ。


 部屋に登場して例の現場を撮影された時点でレイナ氏もそこは危惧していた。


 正確には観察期間にもその様子を盗撮していたわけだが、それも察してくれている様だね。


 ちょっと可哀想なので、もう少し話を進めるか。



 「実は町がある程度発展したら、とあるゲームというか企画を実行する予定なんだけど、そこに一枚噛んで欲しいんだよね」


 正直、最早威厳とかも感じないし、リアクションが意外と庶民的だったので親しみを込めて敬語を使うのをやめた。それにこの人物はフランクな接し方のほうが正解な気がする。


 そして企画の内容をレイナ氏に説明。


 まだ読者の皆様に詳細は話せないが、町の地下に大型施設を建築する予定だ。そこであるゲーム会社と提携してアクション型のゲームを開発し普及する予定。場合によってはそれを地上でも実践する。そこであるデバイスが必要になるのだが、そのデバイスとZ社のSNSの機能を連動させ情報の拡散、更にはゲームのシステム自体にも同社の新機能を組み込む。しかも、普及が進めば次々と他の企業からの依頼や協賛を得られる為、繋がりも利益も生まれる。


 まぁ、まだ俺の妄想の範囲なんだけど、これは絶対に実現させたい。


 そして、件のゲーム会社等には富田会長からアプローチしてもらい、企画の説明もしてもらう。


 いきなり俺が説明を始めても、説得力がないしね。



 だが今は自ら説明するしかないわけで。


 レイナ氏もここにきてようやく真剣な表情で考え込んでいる。


 ある意味、企画提案のプレゼンをしたのでちょっと緊張。


 そして返事は...


 

 「それっていつから始めるの?」


 「状況にもよるけど、早ければ2ヶ月以内に始動して5年以内に実現させたいね」


 

 実現させるつもりではいるが、現段階ではほぼ願望なのだ。


 細かい計画書があるわけでもないし、只の口頭での説明だからね。


 あとはこの途方もないプロジェクトと俺を信用できるかどうか。


 これって、相手側からすればギャンブル要素が高すぎるよね。

 

 いくら魔法を目にして体験したとはいえさ。


 

 ちなみに断られたら、記憶を消去する予定。


 思いっきり倫理から外れた行為だが、そこは割り切っている。


 背に腹はかえられんしね。


 何よりそれが一番平和的危機回避だから。


 

 「明日から動いてもいい?予定していた新部署もその企画を基軸に立ち上げるからさ。5年と言わず3年以内に実現しようよ!」


 おっと、まさか素人の妄想にここまで食いついてきてくれるとは!


 色々とアレだが世界のZ社の会長兼技術開発局長に自分の案が通ったと思うと、実に感慨深い。


 大胆さと度胸って本当に自分の世界を変えるんだな。


 とはいえ、最低限の算段はあった。


 

 レイナ氏を尾行し、企画開発部署の会議などを盗み聞きしていたが、議題の一つにゲーム開発が挙がっていたのだ。


 まだ発案段階で内容は定まっていなかったが、それならばこちらの企画に取り込んだほうがいいと判断した。


 何より、この企画はスケールが大きく、新たなビジネスジャンルの立ち上げにもなるからね。


 仮に成功した場合、創設時から参入していたZ社の利益は計り知れない。


 

 というわけで、その後はまるで子供のように夢中で妄想というかやりたい事を語り合った。妄想がどんどん広がり、他人が聞けばおじさん二人が何を言っているのだと呆れるというか、距離を置きたくなるような議論が繰り広げられた。

 

 何はともあれ、レイナ氏とZ社の協力を得ることに成功したと言えよう。


 

 同時に、少々意外なお願いをされた。


 

 「さっきのテレポートみたいなやつ、アレってどこでも行けるの?」


 「どこでもではないけど、一度俺が訪れた場所なら行けるよ。」


 するとレイナ氏が急に立ち上がる。


 「だったら、今から東京の街を案内してくれないか!?」



 どうやら以前から東京観光には興味があったらしいが多忙に加え、近年のパンデミックの影響もあり計画が頓挫していたようだ。


 Z社の会長を不法入国させるのは如何なものかと悩んだが、今回はこれまで3人のように事前にプレゼントを渡していない。あくまで、将来もたらされるであろう利益を語り合ったに過ぎない。


 なので、これくらいの願いを叶えるのはやぶさかではない。


 何なら、安上がりというか今後の事を考えると申し訳ないくらいだ。


 大学時代は都内で過ごしたので、何となく土地勘はあるし現代はスマホ様のお陰で何でもすぐに調べられるから

問題はない。


 勿論、姿形も消す。


 というわけでレイナ氏の願いを快く承諾した。 



 「それでは早速...隠密レベル2発動」


 すると大きな窓ガラスに映っていた俺とレイナ氏の姿が消える。


 

 「ア、アメイジング!!」


 喜んでくれて何より。



 そしてまだ殆ど店も開いていない早朝6時の都内へ転移した。

 


 

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