これだから天才って奴は...
身辺調査を侮るなかれ
激動のようで実はそうでもない一週間だったなぁ。
テュラム会長や王子のように活発的に外で行動するかと思ったら、そうでもなかった。
外で仕事をしていたのは初日のイベントと、そこから三日後の支社への顔出しくらい。
所々、要キャの一面が表に出てはいるが仕事に集中している時は意外と冷静だった。
そして、意外と細かいところにうるさい、というよりかは真面目だ。
この一週間はエンジニア部門や開発部門といった本社内にある部署を中心に顔を出して、積極的に意見の交換や報告に耳を傾けていた。
その中には今後搭載されるであろう、新機能の搭載についても話し合われており、盗み聞きしながらも密かに胸が躍った。
バレたら完全に犯罪というか、それ以外の方法で制裁を受けそうだが...
そんな事も今更ではある。
テュラム会長や王子を尾行していた際も、社外秘に値するような情報はいくつか耳に入っているしね。
そんなこんなで、この「クリスティアン・レイナ」氏は仕事に関しては経営者というよりは現役バリバリのアイディアマンというか、クリエイター的な要素が強く、プライベートではこれまでの3人より遥かにリスクを抱える人物だという事が判明した。
仕事の面でもそれなりにリスキーな存在ではあるのだが、それ以上にプライベートでのある行動がマズい。
個人的には割り切れる範囲ではあるが、これが後々、世間に発覚した際の事を考えると悩ましい案件ではある。
レイナ氏自身も魅力的な人物ではあるが、会社自体も手放すには惜しい企業なのだ。
それに仕事に悪影響が出ているのなら話にすらならないのだが、そういった様子は見受けられない。
むしろ好影響を及ぼしている。
もちろんバレたらそれどころではない。上手い具合に活力にしているというか、バランスを取れているので一概に苦言を呈する事も難しそうだ。
クリエイターというか、天才タイプの悩ましい問題だ。
個人的には極論、成果の面でそれ以上の利益というか旨みがあれば問題ない。
ただ、他の協力者がそれを知ったらなんというか...
コンプライアンスに煩い時代だからね。
厄介な問題だが、その辺は仕事の貢献度合いで説得できる程、成果を上げてもらう事を願うとしよう。
割り切りは大事だ。
元も子もないが最悪、トップの首をすげ替えればいいしね。
それだけ企業単体で見ても魅力的な組織なのだ。
この人物と組織に求めているのは「発信力」と「拡散能力」だ。
プロジェクトの進行と優秀な人材を集める為にこの能力は必要不可欠。
というわけで、結局、レイナ氏のプロジェクト参加は必須と判断した。
ちなみに、今回はこれまでの様なニンジンは用意していない。
勿論、いくつか依頼したい案件はあるのだが、それはあくまで俺の我儘だ。
現時点でレイナ氏や会社には旨みはないし、素人の戯言に過ぎない。
ただ、自分で言うのもアレだが、実現すれば結構面白い案件だとは思う。
会社にとっても新機軸となりそうだし、事業の拡大にも繋がるからね。
あとはどこまで信用してもらえるか。
先に言ってしまうと、今回はこれまでよりも魔法の依存度が高い。
リスクは高いが、その価値は十分にある。
実は魔法の運用方法を寝る前とかに妄想してしまうのだが、ある程度制限を設けている以上、使える範囲は限られている。
となると、その運用にもいくつもの工夫が必要なわけで、一人の想像力では限界があると思っている。
なので、その点においてもアイディアが欲しい。
他の協力者にも追々、この件は相談するつもりだが、特にこのレイナ氏とこれから交渉予定の最後の一人にもそれを期待している。
勿論、何でもかんでもベラベラ話して、イタズラに利用される事態は危惧しなければならないが。
あくまで、大枠というかテーマをある程度絞って、それについてアイディアを募る予定だ。
そして、更に信用度が上がればその先も相談するといった形にゆくゆくはしたい。
人間関係って本当に難しい。
転生前の俺だったら、今の力を突如手にしたとしてもこんな事まで考えなかっただろうなぁ。
多分、最低限の収入だけ確保して、後は隠居生活をエンジョイする様子が容易に想像できる。
魔法の会得は大きいが、精神面での成長が良くも悪くも?異性界で飛躍した事は大きな財産だ。
30代で隠居をするには早すぎる。
動ける時には動かないとね。
さて、世界屈指のアイディアマンをどう料理してくれようか。
まぁ、あらかた想定はできているんだけど、彼の出方次第で対応を変えるつもりだ。
俺にあまり強引な手段をとらせるなよ。