第二章―Ⅱ― 「襲撃」
「よしっ! 行くか」
ぐっと伸びをし、アルスは言った。
ついにヨシュレルク火山へ向かうのだ。
【なんだか、嫌な予感がします。気をつけていきましょう】
「ん? 分かった」
アルスと鳳凰。
火山へ立つ。
~ヨシュレルク火山~
「あっちぃー。フラフラするー……」
アルスは汗をかきながらうわ言のように「あちー あちー」と言っている。
【えーと、気温は大体40℃くらいです】
「よ、40っ? ひええー……」
鳳凰の実体は、鳳凰玉の中なので、暑くもなんともないようだ。
アルスはそれを妬ましいように見ている。
鳳凰それを華麗にスルー。
「何しに来たんだったっけ?」
【宝玉ですよ。大丈夫ですか!】
「多分……?」
大丈夫には見えない。
するととつぜん!
『グウアアアッ!』
凄まじい雄たけびが聞こえてくる。
「なんだっ?」
【気をつけて! 魔の波動を感じるっ!】
「ええっ!」
またとつぜん
『アァァァァ!』
と雄たけび。
雄たけびのした方向をみると、そこには――
「あれは……?」
顔が焼けただれたヒト型の魔物。
サイガが居た。
『私……の、名前! サイガ!』
「サイガ……?」
珍しい名前だ、とくだらないことを考えてる場合ではない。
相手は戦闘モードだ。
【来ますよっ!】
「わーってるって!」
アルスとサイガ。
戦いの始まりだ。
『クアアッ!』
叫んだあと鋭い爪でアルスの頭を上から狙う。
「なんのっ!」
すぐさま風の刃を鞘から取り爪に当てて防ぐ。
その反動でサイガの身体が浮く。
その瞬間を狙い、風魔斬を打ち込む。
『クアアイ!』
かろうじて爪で防ぐサイガ。
両者一歩も譲らない。
「喰らえ! 真空波ァ!」
大きな真空の渦がサイガに放たれる。
直撃。
無数の切り傷が身体に出来るが、
『エエイィィ!』
腕をクロスし、振り下ろす。
パシュ!
と音がし、真空波が破られる。
だが、形勢はアルスに有利となった。
「なら! 真空斬り!」
剣を逆手(忍者がクナイを持つ時のような持ち方)に持つ。
そして、剣に風を集め、振りぬく。
ヒュウン!
風の渦が凝縮され、まっすぐ相手、サイガに向かう。
すると――
『双劣爪ォォ!』
シュウ、と伸びた頑丈な爪が真空斬りの風を切り裂く。
そして、相殺。
「くそお! か、勝てるのか?」
不安や焦り。
プレッシャー。
そして、恐怖。
【落ち着いて! 冷静を保たないと死にます! よく相手を見て!】
「分かった……!」
まっすぐ相手を見据える。
「一筋縄では行かないな……! そうこなくっちゃな!」
激闘はまだ続く。