第一章―Ⅳ― 「神風と鳳凰、立つ」
【では、行かなければなりません】
「わかってる」
今日は、アルスがフロルを立つ日。
ある者は応援し、ある者は悲しみ。
そして、ラルは――
「ラル? おーい! ラルー!」
アルスがラルを探していた。
別れを告げに来たのだ。
「あ、居た。ラル、そろそろ行くよ」
「ああ、がんばってね」
「おう! 任せとけよ!」
ラルは笑ったが、どこか寂しそうだった。
自分も行けたらいいのに……と思っているに違いない。
「気をつけてね! まあ、アルスは剣術がうまいしなぁ」
ハハッと笑うが、やはり目が笑っていない。
「……行けたらいいのに……」
ボソッと言ったのをアルスは聞いたが、何も言わなかった。
「じゃあ、行くな」
「うん……」
アルスが、町の広場へ向かおうと言った。
いよいよ出発だ。
【行きましょうか?】
「頼む」
最後にアルスは村人に別れを告げる。
「がんばれよ!」
「リゾルなんてさっさと倒して戻ってこいよ!」
口々に応援、祝福。
そして、
「アルス、帰ったらまた、剣術教えてね!」
「……うん。きっと教えるさ! ラル!」
拳と拳をコツンと当て、ニィと笑う。
【行きますよ!】
バサァッ! と鳳凰が羽を広げた。
その瞬間、空間に渦が出現する。
「じゃあ、行ってきます!」
タンッとジャンプし、鳳凰玉を持って渦へ、飛び込んだ。
神風と鳳凰、立つ。
渦は、消えた。
第一章 風が知らせる時 完結