第一章―Ⅱ― 「鳳凰と騎士」
みんな無言で進む。
会話などしてはいけない! そう言った者など誰もいないのに。
「さあ、着いたぞ」
長老が口を開いた。
着いた場所は祠の奥の丸いホールのような構造になっていた。
そして、中央にクリスタルのような透明の物が浮かんでいる。
「なんか、神聖な所って感じだ……そして、なぜか懐かしいような……」
アルスは呟く。
鼓動が速くなるのをアルスは感じていた。
「さあ、みんな見てくれ。このクリスタルの中を」
みんなが一斉に見つめる。
中には、水色のような、見かたによっては淡い瑠璃色のような色をした宝玉が収められていた。
みんなが沈黙する。
そして、同じことを思っていた。
誰が鳳凰に選ばれるのか、と。
「そろそろ始めるぞ」
長老が念じ始める。
「……、……」
ブツブツと呪文のような言葉をうかべる。
「誰が神風の騎士になるんだろう」
「ホントだね。アルス」
二人が喋り終わると同時に、パッとクリスタルの周囲が光り出す。
「カアッ!」
長老が叫ぶと光は最高潮へ。
「うわあっ! 眩しいっ」
みんな目を開けてなんかいられなかった。
「……治まった?」
目を開けるとそこには、この大きなホールのような部屋の天井に付くほどの巨大な鳥が居た。
身体は薄らと黄緑に光り身体全体は翠だった。
「あ、あれが鳳凰……」
みんなは絶句。
「あなたが、鳳凰ですか?」
【ええ。私が鳳凰です。ついに、500年が経ったのですね】
「その通りです」
鳳凰の発する言葉は深く、心に響く様な声だったが、聞いていて心地よかった。
【早くも、長い時でした。リオンが倒したあの敵がまた、蘇る。そのためには風の力が必要です。今、神風の騎士の役目を継ぐヒトを決めましょう】
みんなが息を飲む。
もちろん、アルスもラルも。
【神風の騎士リオンの末裔よ私の元へ来なさい】
鳳凰がそう言った刹那アルスの身体が光った。
「え? え? 何これ?」
明らかにパニック。
スーッと鳳凰の方へアルスは引き寄せられる。
【あなたが、神風の騎士の末裔です。アルス】
「……えーーーー!?」
アルスの叫び。
なぜか一呼吸おいてからだった。
一斉にみんながざわつく。
「アルスが……?たしかに、納得もできるよな」
「でもまだ13歳よ?」
口ぐちに意見を言うが、アルスが風の力を貰うことに反対する者はいなかった。
「静かに! 今、決まった! 神風の騎士はアルスだ!」
「おーー!」
「がんばれ!」
「応援するよ!」
みんなが新たな神風の騎士の誕生を祝福した。
納得できない者達も無理やり納得した。
「アルス! すごいじゃないか! おめでとう」
「え? ああ、ありがとう! がんばるよ」
その日、新たな神風の騎士誕生を祝い宴が開かれた。
鳳凰は鳳凰玉の中に戻り、夜が明けたら説明すると言った。
そして、夜が明けた。