第一章―Ⅰ―「風儀式」
【……待ったぞ。
ついに、この時が来た。
ククク……! ア~ハッハッハ!】
【あの若者が貴方様を倒してから実に500年。
ついに、魔力が戻られましたか?】
【ああ。ククク……あの憎き小僧……今、復讐してやる……!】
【しかし、相手はヒト。
とっくに死んでおるかと。】
【感じるぞ。風を。力を!
奴は転生したのだ。しかし、なんと弱い力……。
まだ、ガキか。しかし、魂は奴の魂!
クク……! 殺してやる! 殺してやるぞ!神風の騎士よ!
ア~ハッハッハッハッハ!】
【……お供します……】
~フロル島~
「はっ!」
カコン! と乾いた心地よい音が響く。
二人の少年が木刀で剣術の稽古をしているようだ。
「わわわっ!」
どすっ! と、片方の少年が尻もちをついた。
「やっぱり強いな、アルスは!」
「ラルだって! あの横切りは危なかったよ」
今の稽古は、アルスと言う少年が勝ったようだ。
「あはは……あっ! そう言えば!」
ラルが、思い出したように手を打つ。
「もう『風儀式』始まるんじゃないかな?」
「そうだな」
風儀式とは、フロル特有の儀式。
風と縁のあるこの島では毎年、風儀式を行う。
神風の騎士が生まれ、愛したこの土地では、神風の騎士のように、立派に育つように子供たちに風儀式をさせる。
「お~い! アルス! ラル! 儀式が始まるぞー!」
「分かったー! 行こう、ラル」
二人は、村の奥にある祠へ向かった。
~神風の祠~
二人が着くと、祠にはほとんどの村人が着いていた。
すると、長老が喋り出した。
「さて、みんな! 静かに! これより、風儀式を始める」
今まで騒がしかった場もピタっと静寂に包まれる。
「さあ、今年は風儀式なのだが、特別な風儀式だ。あの我らが英雄神風の騎士『リオン』が永眠し、伝説となって500年だ」
「へー、そうなんだ。何するんだろう。ねえ、アルス」
「500年か……長い……よな?」
くだらない会話をしていると、また長老が言った。
「でだ、今年は、この祠の奥にある『鳳凰玉』をみんなで拝み、鳳凰を召喚する。そして、その鳳凰に次の神風の騎士を選んでもらうぞ」
「なんだって! 神風の騎士を選ぶ?」
再びがやがやとみんなが喋り出す。
「静かに! これは、リオンの遺言だ。再び悪が動くのは、500年後。その時は再び神風の騎士を鳳凰に決めさせ、風の力を得て悪を滅せよ。とな」
……しばしの静寂。
ふいに長老が促す。
「さあ、行くぞ」
長老に続き村人も祠の奥に進む。
「神風の騎士……誰だろう」
ラルがつぶやく。
「さあな……。鳳凰か……早く見たい!」
「だね!」
気楽な二人である。悪はもう動き出しているのに。