お茶を淹れるには、適温がある
アクセスしていただき、ありがとうございます!
企画最終日、4日目です!
本日は、2話連続投稿でーす( ≧∀≦)ノ
こちらは、2話目になります。
先に、1話目の投稿を読んでいただけると、幸いです。
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追記
次回は、日曜日。
通常通りの週一投稿に戻ります。
今度は、秋の祭りがあるかも??
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それでは、本編をどうぞっ\(^o^)/
約60年前。
日本で未曾有の災害が発生した。
そう、全土地震だ。
日本全国で同時多発的に発生した地震は、ライフラインを分断し、多くの被害をもたらした。
だが、問題は、地震による被害に収まらなかった。
13。
それが、突如として発生したダンジョンの数だ。
日本各地に、ある場所では都会の真ん中、はたまた山の中など、ランダムにとしか言い様のない分布で、それまで存在しなかったはずの入り口が、地震発生と同時にそこに産まれた。
地震による被害の直後であり、混乱を極めた当時、誰も直ぐにその入り口を管理できなかった。
そして、入り口があれば、そこから出入りするモノがいても、おかしくない。
地震による混乱が続くなか、それまで映画やコミックの中でしか見たことのなかった惨劇が、突如として巻き起こった。
モンスターが、街を闊歩するリアルな姿を、画面の中ではなく、自分の網膜に映し出す日が来るなんて、誰が想像しただろうか。巨大な昆虫、粗雑な武器を持ったモンスター、それらが突如として、人を襲い始めたのだ。あちこちがパニック状態になっていた。
幸いだったのは、モンスターに通常兵器が通用したことだ。
映画の中では、マシンガンを撃ち込んでも平気で追いかけてくるようなモンスターもいるが、そうではなかった。
地震による被害の回復に努めていた自衛隊や警察が、困惑しながらも、モンスターと市街戦や山岳戦を繰り広げ、次第に駆逐していき、それらモンスターが、あの入り口から出てきていることに気がつくまでに、そう時間はかからなかった。
全国で地震による混乱が治まり始め、いったい何が起こっているのか、やっと把握されるようになってくると、多くの議論が巻き起こった。だが、当初、その大部分は、入り口を塞ぐことに集中していた。
政府と国会は、地震被害への対応も迫られており、入り口に関しては、一旦、自衛隊が囲み、モンスターを外に出さないようにするという、消極的作戦が採用された。
時間が経つにつれて、今度は内部がどうなっているのか、その議論が活発になってきた。
フィクションの世界だと思っていた生物が、質量をもってリアルに存在していたのだから、興味が涌くのはしかたのないことだった。
太古の生物が、地震によって起き出してきた??
某国が、秘密裏にトンネルを掘って、科学的に作り出した生物を送り込んでいる??
はたまた、異空間と繋がった??
ありとあらゆる説が、ありとあらゆる場所で交わされた。
そして、とうとう内部調査の実施が決定した。
それこそ、映画が何本作れるかわからないくらい、様々な事態が発生した内部調査の結果、中には様々なモンスター生物が存在し、モンスター生物の核には色のついた水晶(後に、魔石と呼ばれる)があること、そして、未確認の鉱物が多種確認された。
資源に乏しい日本は、モンスターという問題はあるにしろ、未確認の鉱物を放っておくという選択肢を持ち合わせてはいなかった。
政府は、入り口とその内部をダンジョンと認定し、維持管理・調査の対象と定めた。
そして、初代ゲートが設置された。
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その後、約60年の間に、様々な変遷があったが、当初の自衛隊管理から、現在では専属のダンジョンキーパーが入り口と内部を管理することになっている。
変遷としては、まず、国と地域の共同管理となり、産・学の介入、特区の認定、全国に五つのダンジョンキーパー専門の学校の創設など、法整備を含めて、ダンジョンの管理が進められてきた。
長年、特区の中で、産官学共同による未確認の鉱物や魔石の研究などが行われた結果、着々とそれらの研究を活用した、世界的に見れば、特異な最先端技術の開発が活発に行われた。
故に、世界各地から優秀な人材が更に集まるようになり、それが加速的な開発研究の後押しとなり、更に更に特異な、独自の科学的進化を促した。
そのため、特区は、最先端技術の宝庫となり、産業スパイやテロの対象となることもあり、ダンジョンキーパーは、入り口の内外、両方の守護者となった。
そのために、ダンジョンキーパーは、特区の中に限り、武装が許可されているのだ。
ダンジョンとは、現代の日本において、一大産業となったのである。
ただし、魔石の活用などは特に、一般的な普及ができるほど調達ができないため、現在では特区の中でしか活用ができないなど、汎用性に関しては、未だに到達できていない部分がある。
ちなみに、あらゆる調査・測定の結果、連続した空間としては、ダンジョンは存在していない。と確定された。
これは、どういうことかと言うと、地表から地下への検証などを行った結果、科学的には地下には何の構造物も生物も存在しない。ということが判明したのだ。
ただし、そこには間違いなくダンジョンが存在している。
つまり、そこにあるはずのない異空間が入り口によって固定されており、入り口がこの世界と異空間の境界になっているということを意味している。
故に、ラストゲートとは、世界を隔てる最後の扉なのだ。
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付け加えると、最初に行われた調査によって、ダンジョンは暫定地下10階まであると認定された。
だが、現在、ダンジョンは確認されている限りでは、地下48階まで拡大している。
これは、鉱石の採掘などによる人為的拡大ではなく、自然発生的に起こったものであり、未だに原因は不明である。
現代の識別では、当初の暫定10階までを浅層とし、それ以降の階層を深層と呼称している。
未だ解明できない異空間接続、内部でのモンスターの定期的出現、ダンジョンそのものの自然拡張、様々な謎がダンジョンには内包されている。
ダンジョンの謎の解明、そのための調査、発掘、そして、世界を隔てるラストゲートの守護。
それが、俺達の職務だ。
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「班長、カタいですよぉ、カタすぎますぅ。そんな長くてカタイの入ってきませんよぉ。もっと柔らか~く、ファンタスティックな感じにしないとだめですよ!」
「ふぁ、ファンタスティック!?いや、それはどうなんだっ!?学生への講演だぞ!?」
今は、シノブに周辺の警戒をしてもらいながら、全員でビーコンと保全設備の交換修理を行っている。
今のところ、熱源感知等の各種センサーにも、特に反応はないので、広報部から依頼のあった地元の学校への講演依頼の内容を皆に聞いてもらっていたんだが、、そんなにオカタくなっていたかぁ。バランス難しいなぁ。。
蟻さんたちとの戦闘が終わって、魔石の回収まで済んだので、ビーコンエリアまで戻ってきて、作業を手伝っている。
ちなみに、俺のアシストスーツは、蟻の体液で汚れていたので、バギーシャワーで洗浄殺菌してあるから、清潔な状態に戻っている。
そもそも、ビーコンとは何か。というと、地上の基地からの電波は、なぜかダンジョンの中には直接届かないことがわかっている。そのため、定期的にビーコンをダンジョンの中に設置することで、深層まで進んでも、地上の基地局と連絡が取れるようになっているのだ。
ただし、ダンジョンにはモンスターがいる。そのために、ビーコンだけを置いても、イタズラに破壊されてしまう。だから、必ずセットで保全設備が設置される。
保全設備とは、簡単に言えば、自衛機能だ。半径5メートル以内に許可なく生物が入ってくれば、自衛行動を取るようにプログラムされている。
今回の蟻さんの場合、蟻さんとゴブリンが縄張り争いを近くでやっていて、蟻さんがゴブリンを高校球児も真っ青な速度で投げ飛ばした結果、保全設備とビーコンに直撃。反応する間もなく破壊されたというわけだ。
たまに、こういうことが起こる。
やめて欲しい。本当に。
まぁ、つまり、ダンジョンキーパーの主な仕事は、いくつもあるけれど、浅層管理部第三課に限って言えば、ダンジョンのモンスター駆除と、このビーコンの保守作業をメインに管理しているわけだ。
「よーし、電源入れるぞぉ~。班長、そっちは大丈夫かぁ~?」
「問題ないですよ、漣さん!」
「スイッチ~、オン!」
タツミは、こういう時音頭を取りたがる。
うちのナイスムードメーカーだ。
「ん~。よ~しよし。交換無事終了だなっ」
漣さんは、うちのメカニックだ。もちろん、戦闘も任せられるけど、メインはビーコンの調整や修理、シノブの管理も漣さんの仕事だ。
「っすぅ~~」
コマチは、うちの縁の下の力持ち。
まだまだ成長中の若手だ。
『ビーコン、保全機能、どちらも問題なく起動しています。お疲れ様でした、皆さん。』
シノブは、文句無しのうちの大黒柱だ。
シノブがいなければ、七班は機能しないかもしれない。それくらい、大事な仲間だ。
これが、俺の班。
白玉班だ。
『班長。多数の熱源を確認。照合します。・・・キャラバンが接近中です。』
「きたか。どうにか間に合ったな」
キャラバン。本来は、商人が隊伍を組むことを意味する言葉だが、ダンジョンキーパーでは、違う意味を持って呼ばれている。
ダンジョンキーパーには、大きく分けると、二種類ある。
浅層管理部と、深層管理部だ。
そして、深層管理部は、ダンジョンキーパーのエリートとされている。彼らは、基本遠征を前提としていて、深層を数日に渡って、調査管理する。
先にも説明したように、ダンジョンは、深くなるほど、モンスターの脅威度も跳ね上がる。
脅威度の高い層を数日に渡って、潜り、調査、発掘するには、実力がなければ、ついていけない。故に、深層管理部は、エリートと呼ばれ、基本的に多数のチームで同時に移動するために、キャラバンと呼ばれる。
つまり、キャラバンとは、エリートチームを意味している。
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バンッ
大型バギーから、人が降りてくる。
こちらは、ビーコンの交換作業が終わって、休憩したいところなんだが、そういうわけにもいかない。
なぜなら、降りてくる人が誰かわかっているからだ。
「白玉。久しいな。」
「織部管理監。ご無沙汰しております。」
「うむ。朝からすまなかったな、急な仕事を押し付けてしまった。」
「いえ!問題ありません!」
織部管理監。深層管理部の中でも、トップクラスの実力者で、昔俺もお世話になったことがある。頭の上がらない先輩だ。
太すぎす、細すぎず、だけど、そのスーツの下には、ぎっしりと筋肉が詰まっている。むっちりと、あらゆるエネルギーが、溢れる素晴らしい方だ。
「白玉」
「神埼」
「そんなところで仕事をしていて、楽しいのか、白玉。お前は、」
「神埼!!」
「はっ!」
「出会い頭に、仕事を終えたばかりの同期にかける言葉がそれか!つまらんことをするな。」
「はっ、、申し訳ありません。」
神埼は、俺の同期だ。今は、違う部署にいるが、学校時代からの同期なので、それなりに出会ってから、時間も経った。
神埼は、今では深層管理部のエースの一人になっている。
「白玉。」
「はいっ!」
「いつでも、帰りを待っているぞ。」
「はっ!管理監、ありがたいお言葉ですが、」
「わかっている。別に今すぐにとは言わん。気が向けば、茶くらい飲みにこい。最近は、誰も茶の相手をせん。つまらんやつばかりだ。」
「はっ!では、今回の遠征から無事に帰還されましたら、伺わせていただきます。」
「うむ。楽しみにしておる。ではな、邪魔をした。」
「はっ、お気をつけて。、、神埼も。気をつけて。」
「わかっている。言われなくても、、」
織部管理監と神埼が、バギーに戻っていく。
ふと、不思議な熱量を感じて、横を向くと、シノブがとあるバギーを睨んでいた。そのバキーからは、見かけたことのないサポートロボットが、やはりシノブを睨んでいた。
うーん、もしかして、サポートロボットにも、ライバル的な思考があるのだろうか?
織部管理監達に、挨拶をして、キャラバンが旅立っていった。
「班長。お疲れっ」
「あっ、漣さん。」
「やはり、力が入るか?さすがに」
「そう、ですね。肩の力抜かなきゃですね。」
「無理もないさっ。まだ、時間が足りないんだろ」
「かも、しれません。、、でも、まだ勤務中ですっ!仕事!仕事をしましょー!」
「そうだなっ。仕事しよーか。」
それから、他のビーコンの保守作業に移って、お昼休みまで仕事に集中した。
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「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?!」
「班長!?どしたんですかっ!?」
「お弁当がぁぁぁ」
せっかく作ったお弁当が、凄まじくギュッと片方に寄って、ギュュゥゥと凝縮されていた。
「ふわふわ卵焼きがぁぁぁぁぁぁ」
アラブルモードは、とうぶん禁止だ!!
俺のお弁当がぁぁぁ。
あぁぁぁ、まぁ、でも、形はどうあれ、味は満点だったぜぃ!!
これで、お昼からも頑張れる!
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こうして、今日もダンジョン管理の仕事をする一日が過ぎていく。