つよつよなシュワシュワ強炭酸 ver2
まず、申し訳ないです!
前話の前書きにも追記したんですが、前話を投稿してから、読み返してみて、自分の白玉像とのズレがあると思いまして、書き直しました。
基本的な流れは、変わってないんですが、ちょこちょこ書き換えたり、書き足したり、一部は大幅に変更したりしています。
お手数ではありますが、こちらの投稿を差し替えということで、読みなおしていただけますと、幸いです。
本当に申し訳ないです!
改めまして、こちらが正式な投稿になります。
ご理解の程、よろしくお願いいたします。
また、夜には次話の投稿も行いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本編をどうぞっ!
廣瀬さんの希望理由を読んでから、昔が思い出されて、妙にむず痒いものがあるというか、心臓がきゅゅゅぅぅと絞られてるような感じがある。
まさか、新人のプロフィール資料を読んで、こんなにダメージをくらう日が来るとは、恐るべし部長!ニヒルな笑みが思い出されて、さらにくぅぁぁぁ!となる。
けど、新人が配属になった以上は、仕事の仕方や流れとか説明をする必要もあるし、本当に大変なのは、俺じゃなくて、新人の廣瀬さんの方だ。
恐らく、知り合いもほとんどいないこの特区で、慣れないことばかり。それって、かなりのストレスだと思う。
どうなるかはわからないけど、しっかりサポートしてあげないといけない。
織部先輩や榎田先輩が、昔の俺にしてくれたことを、今俺がしなきゃいけないんだが、、
、、、ああ!もう!!
昔のこと思い出すと、なんかもう、うわぁぁぁぁぁ!!って感じで、今すぐゴリゴリにトレーニングして、忘れたい!!昼からは、トレーニングする!絶対!!
よし!とにかく、切り替え切り替え!
そのために、資料を読んでるフリをしながら、こっそりと呼吸で心を整える。
ふぅぅぅぅ(はいて~)
すぅぅぅぅ(すって~)
ふぅぅぅぅ(深くはいて~)
すぅぅぅぅ(深くすって~)
ふぅぅぅぅ(いらないものをはきだすイメージで~)
すぅぁっ
ふぅ。
よし!やるぞ!
「まなみょんがだめなら、まなみんは?」
「いえ、ですので、廣瀬と呼んでいただければ」
「まなみんも、却下ですとぉっ!?王道も邪道もダメならば、残された道は、もはや、、」
「あの、タツミさん、ですから、廣瀬と呼んでいただきたいんですが」
廣瀬さん、ガード堅いなぁ。
タツミが攻めあぐねてるのは、ちょっと珍しい。
でも、流すんじゃなくて、ちゃんと答えてるあたり、優しさも見える。
こないだのロミマで会った日の事を思い出しても、廣瀬さん、ちょっとツンツンはしてたけど、あべこべな感じでツンツンだったし、最終的には礼儀もちゃんと心得ていたように思う。
うーん。
あべこべな感じか。
廣瀬会長の孫で、四校を常に主席、実地研修でもトップ。
差別するわけじゃないが、ルーツもさながらに、女性でトップを取り続けてきたわけだ。
DK大学は、学術方面でももちろん素養が必要になるが、同時に体力・胆力・技力等、あらゆる能力を、男女の貴賤なく計り比べられる。
なぜなら、ダンジョンは誰であろうと、等しく敵意を向くからだ。
確か、近年の学生の男女比は、7:3といったところだったはずだけど、どうしても武術・戦闘方面での成績は、男性が上をいきやすい。
これは、筋力や骨格の差もあるが、どちらかといえば、大学入学までの積み重ねが差に出やすい面がある。
そもそも、この国に、武術を習う習慣は根付いていない。
故に、幼少期や中学の部活から始めるスポーツや武道等をベースに、身体が出来上がっていく。
単純に、そのベースが違いとして、大学入学後の成績に影響しやすいという話だ。
だが、資料の成績を見れば、廣瀬さんは全科目でトップを取っている。これは、センスだけでは、絶対に無理だろう。
幼い頃からの積み重ねに、寝る間も惜しんでの、相当な努力がなければ、到底獲得できないことだ。
そもそも、誰であろうと、トップであり続けること自体が、至難の道なんだ。
さらに、DK戦闘術を修めることは、正直過酷だ。
あまり言いたくはないが、DK大学の学生も、DKも、性格の良い連中ばかりではない。
当然ながら、廣瀬さんも、いろいろと、かな~~り苦労してきたんだろうなと思う。
これは、推測であって、間違っているかもしれない。
だけど、あのあべこべさは、ある種の努力と苦労の結果なのかもしれない。
『深層管理部目指してます!』か。
廣瀬さんには、しっかりした目標なり目的があるんだろう。
まぁ、何かの縁で俺の班になった以上は、俺にできることはしてあげたい。
部長達には、部長達なりの思惑があるんだろうけど、それはそれ、これはこれだ。
余計なことは考えないようにしよう。
俺は、いつも通りだ。
そして、廣瀬さんを深層管理部へ送り出せるように応援する。
それだけだ。
シンプルが一番。
やることが明確になったなら、後は実行するのみだな。
「あのぉ、廣瀬さん、ちょっといい?」
「ぁぁっ!はい!白玉班長!!」
「おっ!元気だねっ!うん。それは、いいことなんだけどさっ。せっかくなら、もう少しリラックスしようっ!これから、短い間かもしれないけど、一緒のチームとして動くんだから、緊張してたら、もったいないよ」
「リラックス、ですか?」
「そう、リラックス~」
「さすが、班長!つまり、まなみんという王道の」
「タツミ!ハウス!」
「わんっ!って、何さらすんですかぁ、新人さんの前でぇ!」
「はい、じゃあ、深呼吸してみよ~」
「班長がスルーするぅ~」
「じゃあ、まずはいて~」
「えっ、え、はい??深呼吸ですか??」
廣瀬さんが、何事!?って感じで、タツミと俺を見比べながら、キョトン顔をするという、ちょっと器用なことをしている。
「そう!はい、タツミも~、漣さんも~、シノブもぉ~、ご一緒に~。はいて~~、吸って~~、はいて~~、ほらっ、廣瀬さんもっ。はいて~、吸って~、みんなの呼吸を感じてぇ~」
「え、え、え、はいて~?吸って~?」
「そー!いいねっ!はい!みんなで、合わせてー、はいて~、吸って~、はいて~、吸って~、最後にぃ~、深くはいて~~~。はい、オッケー」
『深呼吸すると、気持ちいいものですね、班長』
「そうだろぉ~?シノブぅ~?わかってるねぇ~」
「さ、サポートロボまで!?な、なんなんですか?いきなり?」
「肺には、新鮮な空気を送ってあげないとね。ここがオフィスってのが、ちょっとあれだけどさ。でも、ちょこっとスッキリしなかった?」
「す、少しだけですけど」
「でしょー?いいよねっ、深呼吸!さてっ、少しリラックスできたところで、改めて、白玉です。七班の班長やってます。白玉でも、班長でも、好きに呼んでくれたら、嬉しいです。よろしくね?」
廣瀬さんに、握手をしようと手を差し出す。
「よ、よろしくお願いします、、し、班長」
おずおずとだけど、廣瀬さんが握手に応じてくれた。
ここからだ。ここから、廣瀬さんとの関係を作っていく。
「じゃあ、初日だし、施設の案内をしたいんだけど、今からいいかな?」
「あ、あぁ、はい!お願いします!」
うーん、さすがに、ちょっと引かれたかな?
でも、まぁ、いきなりリラックスってのも、無理があるか。
だけど、さっきよりも廣瀬さん、肩の力は少し抜けた気がするな。
「漣さん、タツミ。廣瀬さんをあちこち案内してくるので、午前は自由業務でお願いします。それから、午後からチームトレーニングに予定を変更したいので、準備お願いしますね。」
「あいよっ」
「はーい」
「助かります。それとぉ、シノブ」
『はい、班長』
「急ですまないが、午後からどこか空いてるトレーニングルームある?多目的の方が嬉しいんだけど」
「一つ空きがあります。予約しますか?」
「よろしく。午後一杯取っていいから」
『アクセプト。・・予約完了しました。』
「ありがと、シノブ。あと、午後からの件、コマチにも連絡お願いね。ほんでぇ、廣瀬さん、急で申し訳ないんだけど、トレーニングウェアとか持ってきてないよね?」
「すみません。準備不足で。でも、寮に取りに帰れば、あります」
「いやいや、こっちが急に決めたことだから、謝る必要はないよ。でも、あぁー、寮か。時間あるかなぁ。うーん、無料のレンタルのもあるんだけど、嫌だよね?」
「レンタルですか?サイズが合っていれば、問題ありませんが?」
「うーん、まぁ、どっかで時間つくろっ!ごめん、やっぱり都合の良いところで、ウェア取りに行ってもらっていい?着なれてるやつがいいと思うからさ」
「わかりました。言ってもらえれば、そのタイミングで行かせてもらいます。」
「うん。お願いね。じゃあ、施設の案内するから、ついてきて」
「はい!」
廣瀬さんには、まずは、このチームに慣れてもらいたい。
そのために、昼からは皆でトレーニングだ。
それに、津々見さんや篠宮さん達、七班のサポートメンバーも知って欲しいし、できれば、仲良くなって欲しい。
みんないい人ばかりだし、この危険な仕事をやる以上は、信頼関係がなければ、やっていけないからな。
七班での初日は、楽しい一日で終わって欲しい。
☆☆☆☆☆
それから、実地研修である程度は見て回っているだろうけど、浅層管理部の三課として関係する場所や人を改めて紹介・説明するということで、管理棟を初めとして、関係部署やお世話になる人達のところを歩きまわった。
実務棟で、オペレーターの津々見さんにも挨拶を済ませて、今はラボピットで篠宮さんに挨拶をしようと向かっているところだ。
俺は、挨拶巡りついでに、皆さんにお花見の招待と、空きスケジュールをライデンしてもらえるようにお願いしたりもしていた。
「ID確認しました。ゲートへどうぞ」
廣瀬さんが、少し緊張気味にODへのゲートをくぐっている。
その気持ちわかるなぁ。
俺も最初は、ピリピリしたもんなぁ。
そういえば、先週蟻退治した日に、渡り廊下から見えた女性は、廣瀬さんだったのかもしれないな。
ふと、そのことを思い出した。
自分よりも大柄な男性を投げ飛ばしてたけど、その夕方に、ロミマで、もなかまちゃんふりかけか。
そう考えると、なんだかギャップがすごいな。
でも、もなかまちゃんふりかけを好きな人に、悪い人はいない気がする。ふりかけを嬉しそうに選び取っていた廣瀬さんを思い出す。
なんというか、不思議な人だ。
そして、自分もゲートを潜り、三課のラボピットへ廣瀬さんを案内しようとしたところだった。
「おぉぉ、誰かと思えば、廣瀬じゃねぇか。浅層管理部に配属になったんだってな!?あっはっはっはっはっ!深層の一課希望だったのに、浅層の三課??ああ~あ、いい気味だ!ちょっとできるからって、女が調子にのるから、そうなるんだよ!どうせ、研修でも上官に色目使ってトップ取らせてもらったんだろ?でも、残念だったなぁ、エリートコースからの脱落、お疲れ様でしたぁ~、あっはっはっはっはっ!」
「宮地」
廣瀬さんが、唇を噛んでいる。
そこは、ちょうどODに入ってから、浅層管理部側と深層管理部側のラボピットに別れていくラウンジみたいな場所だ。そして、深層管理部側の通路から、ちょうど人が来たみたいなんだが、俺からは直接見えない位置にいるが、正面のガラスに反射して見えるあのクズ丸出しのアホは、なんだ?
「俺は、もちろん深層に配属になったぜ?誰かさんとは違ってな!!ちゃぁ~んと、実力で評価してもらったからよぉ!五校の主席だった俺が、やっぱり本当はトップだったんだよぉ!廣瀬ぇ~、そのうち、顎でこき使ってやるからよ、浅層でせいぜい這いつくばってろよ、廣瀬ぇ~。ぁぁん」
おぉ、なるほど、廣瀬さんの同期か。
にしても、あそこまでのクズは、初めて見たな。
さすがに、人格に問題ないか?
DKに入れていいのか、疑問だぞ?あれ?
廣瀬さんの背中しか、今は見えないが、小さく震えているのがわかる。
どうするんだ、廣瀬さん??
止めに入ってもいいが、ここは少しだけ様子見させてもらおう。
「宮地。」
「ぁぁぁん?なんだよ、負け猫?」
「私は、一課に入る。いつか必ず。」
後ろ姿しか見えないが、キリッと廣瀬さんが睨み返したのがわかる。
「あっひゃっはっはっはっ!無理、無理、無理!さらに恥かくだけだって、やめとけやめとけ!あぁ、お慈悲で、俺が上司にお願いしてやろうか?可哀相な負け猫を拾ってあげてくださいよぉ~ってな!あっひゃっはっはっはっ!使えねえ浅層で、せいぜい魔石拾いくらいにしとけよ」
俺の時も、いろいろ言われたけど、あそこまでのクズはマジ奇跡レベルで初めて見た。後で、報告案件だわ。
ていうか、俺に気づいてないのか、あのクズ?
廣瀬さんは、さらにその背中を震わせているし、手をかなり強く握りしめている。ありゃ、そのうち血が出るぞ。
おそらく、きつく睨み返すところで、踏みとどまってるな。
俺なら、もうド突きたくなりそうなもんだが、、廣瀬さん、よく我慢したな。
DK同士の喧嘩は、御法度だ。
あれだけの言葉に耐えるとは、廣瀬さん、よほどDKに思い入れがあるんだな。
強いな、廣瀬さん。
うん。
こっからは、班長の仕事かな。
「やぁやぁ、君も新人君かな?」
とりあえず、宮地君にもしっかり見えるところまで、進み出る。
「んな!?誰だ、あんた!」
ほんとに気づいてなかったんだな。
マジでびっくりしてるよ、宮地君。
わりと大柄な体格だね?
もしかして、あの時廣瀬さんに投げられてた男かな?
「班長!」
廣瀬さんが、何か言いそうになったけど、まあまあと手で制して、宮地君に向き合うように位置取る。
「俺?俺は、白玉。使えねえ浅層の三課で七班の班長やってます。よろしくな」
宮地君に、握手を求めるように手を差し出す。
「あぁ、っんだよ、浅層かよ、驚かせるなよ」
なんか無駄にテンション上がってた宮地君が、握手をし返してくれる。ついでに、ニヤニヤしながら力一杯ギュッと握ってきた。
なるほど、先輩であろうと、浅層なら侮っていいわけだ。
それに、その程度の握力を自慢されても、困る。
ここは、にこやかにスマイルスマイル。
「にぃ~」
「ぁぁん?なんだ、てめっ!?んがぁっ!」
ズダンッ!!
この技は、油断してる時が一番かかるからなぁ。
瞬間で、握り落としてあげた。
すごい音がしたけど、大丈夫かな、宮地君?
「痛ぇっ!?なにしやがんだよっ、この!あぁん!立てねぇ!?いたたただっ!」
「別に何もしてないぞ?ただ、握手したら、君が勝手に膝から崩れ落ちただけじゃないか。ほらっ、手伝ってあげるから、早く立ちなって?」
今、彼は絶妙に片足で膝立ちできているところだ。
頑張れ、宮地君。
「おぃっ、なんなんだよ!痛てぇっ、離せよっ!」
「えーと、宮地君だっけ?あんまり暴れない方がいいよ?暴れるほど、関節が極っちゃうからさ」
「あぁん!うるせぇ!こんなもんっ!いでぇ!いててて!」
「ちゃんと忠告したのにぃ。」
ギリギリ落ちることも、立つことも、ベクトルを変えることもできないところで保ってるから、宮地君が暴れるほど、自分で痛いことになるわけだ。
「なぁ、宮地君。使えない浅層なんだろ?そんな浅層の俺に技をかけられて、起き上がれないとは、情けなくないか?」
「うるせぇ!なんなんだよっ、てめぇ!いでぇぇぇっ!」
「だから、暴れると痛いよって言ってるのに。なぁ、宮地君。君も、五校の主席だったんなら、わかるはずだ。トップであり続けることの大変さが、想像できるはずだ。例え、他校であっても、条件は同じ。なら、相手に敬意を払うことだって、できるんじゃないか?競い合うことと、蹴落とすことは違う。ほらっ、もう立てるだろ?いつまでそうしてるつもりなの?」
すっと手を離すと、宮地君は手首をさすりつつ、こちらを窺いながら立ち上がった。一瞬、廣瀬さんの方に目がいったように見えた。
「うるせぇ。うるせぇんだよ!エリートの俺達深層に、使えねぇ浅層が説教してんじゃねぇよ!騙し討ちで技かけやがって!」
宮地君が、腕を伸ばしてきて、俺の胸ぐらを掴んだ。
「宮地!班長を放しなさい!」
「説教すんなっ!うるせぇんだよ!」
宮地君の目には、俺が映ってるようで映ってないのかもしれないな。胸ぐらを掴んだまま、考えなしに距離をグッと詰めてきた。
しょうがないなぁ。
俺も若い頃は、無駄に熱かったこともあるし。
「今度のは、痛いよ。受け身とってね」
宮地君の目をしっかり見据えて、言葉をかけた。
「ぁん?」
宮地君のピントが、やっと俺に向いた。
では、お覚悟を。
宮地君との接触点である腕を中心に、彼の軸を少しだけふっと浮かしてあげて、そのまま左側やや斜め、彼の肩口方面に小円の一歩を歩く。
「ぁっな!?」ビダンッ!「がぁはっ!」
中心を崩された宮地君は、なす術もなく、後ろ手に倒れた。
客観的に見ると、宮地君の脇に入って、そのまま後ろへひっくり返したように見えるかもしれない。
もちろん、頭だけは打たないように注意したけど、かなり痛い一撃だったはず。その証拠に、宮地君が苦悶の表情を見せている。
そのまま、腕を捕って、うつ伏せに回して、腰も抑えて、拘束状態にする。こうしておけば、拘束された側は、何もできなくなる。
「俺達、DKは喧嘩は御法度だって、習わなかったの?宮地君?」
「はなせ!はなせよっ!ほんと、なんなんだよっ、てめぇ!」
「おぃっ、なんの騒ぎだ!?て、白玉?それに、寝転がってるのは、宮地か?」
「おぉ、黒沢じゃん。元気してた?」
深層管理部側から騒ぎを聞き付けたのか、走ってきたのは、黒沢だった。
彼女は、アシンメトリーのウルフカットにメッシュ入りという、わりと派手な姿だが、立派な俺の同期で、深層管理部三課で班長をしている。
「誰に言ってんだよ。元気に決まってるだろ。それよか、なにしてんの、うちの新人に?」
「ん?黒沢の班なの?宮地君?」
「そうだぞ。うちの期待の新人だ。叩き甲斐のあるやつが入ってきたんだから、私より先に叩かないでくれるか?」
「ふむ。人は叩いちゃだめだぞ、黒沢?」
「昔から、鉄と人は、熱いうちに叩け!って言うだろ?」
「うーん、気のせいか、俺達、身に覚えがありすぎて、辛くない?」
「それを言うなよ。泣きたくなる」
「だろ?うーん、でも、まぁ、黒沢の班なら、安心かな。ほれ、宮地君、立って立って」
「うぐっ。なんなんだよっ!?あんた!?」
「だから、白玉だってば?ほらっ、、稽古したくなったら、いつでもおいで」
宮地君を立たせてあげながら、そっと耳元で囁いておいた。
「っ!?黒沢班長!助けてくださいよ!」
「ん?どーせ、お前がつまらんことしたんだろ?白玉は、悪ふざけで力を使うことはないからな。後で、反省文出せよ、宮地。文句があるなら、後で聞いてやる。とにかく、すまんな、白玉とぉ、そこの美人さん。後は、こっちで引き取るよ。」
「すまんな。黒沢。」
「いいって。私とお前の仲だろ。、、それよか、私に免じて、許してやってくれよ、なっ?」
黒沢が、俺の肩をポンポンしてから、ニコッと笑った。
俺が許すも何もないんだが、この場はこれで収めるべきだろうなと思って、頷いておく。
それに、謝るなら、宮地君が本当に謝ろうとしないと意味がないからね。今の彼に、それは期待できないだろう。
「うんうん。あぁ、それより!私に花見の話が来てないんだがっ!?どういう了見だ、白玉!私をのけ者にする気かっ!?」
地獄耳かよっ!?
順番ってものがあるだろうよ、、
「いや、黒沢には後でライデンしようと思ってたところだし。」
「そ、そうか?なら、待ってるぞ!ほらっ、行くぞ、宮地」
「いてえっ!引っ張らないでくれよ、班長っ!」
「じゃあな、白玉と、そっちの新人さん!また会おうっ」
黒沢に引っ張られて、宮地君は実務棟の方へ消えていった。
「あぁー、ごめんね、廣瀬さん。勝手に割り込んだ上に、場を切り上げちゃって。」
「いえ、、あのっ」
「ん?」
「すみませんでした!私のせいで、ご迷惑をかけてしまって、、」
「いやいや、あれくらい問題じゃないよ。気にしないでいいから。むしろ、大事にした、俺こそ、ごめんて感じだし。」
廣瀬さんは、頭を下げたまま、うつむいてしまった。
どうしたものかなぁ。
むぅぅ、新人教育難しいっ!
「あの、班長、、」
「んん~?」
「さっきの、、宮地を抑えた技は、合気道ですか?」
「え?あぁ、いんやぁ、理合は、確かに合気に似てるけど、あれを合気って言ったら、本家の人達に怒られちゃうよ。我ながら、失敗失敗、あはは」
「は、はぁ?」
廣瀬さんは、目をぱちくりさせている。
「ねぇ、廣瀬さん」
「はい、」
「頑張って、一課目指そう。応援してるからさ。深層一課行きなよ、絶対。廣瀬さんなら、大丈夫だから。見返してやろう、実力でさ」
あれだけの嘲りに耐えた廣瀬さんを、必ず深層一課まで連れていく。
決めた。
七班の目標が、増えちゃったな。
俺の古巣へ、廣瀬さんを連れていく。
☆☆☆☆☆
「いてえって、班長!もう、いいだろっ!引っ張らないでくれよっ!」
「もうっ!あんたはっ、なにしてんのさっ!相手の間合いくらい測れるようになりなさい!」
「はっ、間合い?んなもん、わかるわけねぇだろ!」
「こんの、アホ!その程度もわからないで、エリートエリート言うんじゃない!恥ずかしいなぁ!」
「んなっ!そこまで言わなくてもいいだろ!班長!」
「いい!覚えときなさい!白玉は、対人戦において、もし、あいつが本気を出すつもりになれば、深層も含めて、誰も勝てない!それくらいの実力者なの!普段、温厚で優しいやつだけど、逆鱗にだけは触れちゃだめなの!いい!わかった!?キレた白玉を宥めるとか、私はごめんだからねっ!」
「はぁぁ?嘘だろ?なんで、そんな強えぇやつが深層じゃなく、浅層の、しかも三課なんかにいるんだよ?」
「それは、、あー、もう!いろいろあったんだよ、このアホ!ほら、行くよっ!」
「はぁっ?!おいっ、置いてかないでくれよ、班長!おいっ、てば!」
☆☆☆☆☆