入学編⑧
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公園を突っ切ろうとした時、突然大量の水が白哉を襲った。
「うおあっ!?」
白哉は突然自分の頭上だけ激しいスコールが起きたような惨状に困惑していた
「つ、つめてぇ。」
というかちょっと寒い。昼はあんなに暑かったのにな。夕方になると急に冷えるアレやめて欲しいわ。
と心の中で気候に愚痴をこぼしていると
「ご、ごごごごめんなさい!」
「大丈夫ですか!?」
公園から赤いボブヘアーの顔がそっくりな2人の女の子が大きな声を上げ、こちらへ慌てて駆け寄ってきた
「お、お怪我はありませんか!?」
「怪我、していませんか?」
「い、いや全然平気!怪我なんてしてなないよ」
全力で駆け寄って来て謝る2人に白哉は少し圧倒されたが、動揺しつつも自分は無事であると告げた
「でも、本当にごめんなさい」
「な、なにかお詫びを!」
「いや!気にしなくていいから本当に!それに今日暑かったからさ、水を浴びれて涼しくなれたことにむしろ感謝を言いたいぐらいだから」
白哉は沈んだ表情をしていた2人をみて励まそうとした。
そして1つ気になったことがあったのでそれを質問することにした。
「ところで、2人はこんなとこで何をしてたんだ?」
「えと、魔法の練習を、していました」
「魔法の練習?」
「私たち2人とも魔法の操作が不安定で、この公園でいつも練習をしているんです」
「なるほどな、それで俺がその水魔法を食らったって訳か」
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」
「服、ちゃんと弁償します…」
2人の話を聞き、軽い冗談のつもりで言った台詞は見事に2人へグサッと刺さったようで1人は謝罪しながらお辞儀を繰り返し、もう1人は目に涙を浮かべながら自身の財布を取り出し震えながらお金を渡そうとしてきた。きっとなけなしのお小遣いだったんだろう。
「わ、悪い!軽い冗談のつもりだったんだ!そんな事しなくていいから!」
と謝罪した白哉はふと公園の先にある歩道で2人のご婦人がこちらを見てなにやらボソボソとしている様な姿が見に入った。
あ、まずい。あのご婦人たちめっちゃこっちみてなんか話してね?…実際俺被害者だけど、傍から見たら今の状況はどう見ても俺が変質者だよなぁ。まずはこの状況を何とかしないとだな
そう思った白哉は今の状況をなるべく早く収めるよう努めた。
「弁償とかも考えなくていいよ、だからお金しまってくれ。な?」
「ですが…」
「じゃ、じゃあさ!お詫びとして2人とも10分ぐらい俺の話し相手になってくれよ。」
「そ、そんなことでいいのですか?」
「それで許す!」
「…わかりました」
白哉の出した要求に少し不満げだったが2人は頷いた。その後立ち話もなんだからと2人をブランコに座らせ、白哉はブランコの周りにある手すりに腰をかけた。
「そういえば2人は双子なのか?」
「双子、です。」
「私が姉のムイで、この子が妹のムツです」
「ああ、そういえば名前。俺の事は白哉ってよんでくれ」
「はい」
「わかりました」
「この町ってもしかして双子が多かったりするのか?前に駅前で真っ白な双子にも会った事があるし、実は俺も双子なんだよな」
軽く自己紹介を交わし、双子であるムイとムツに前にあった双子のことを話した。するとそれを聞いたムイは少し悩み、なにか考える仕草をしていた。そしてその隣でムツはぼけっ〜と空を眺めていた。
「駅前に真っ白な双子…もしかしてシナ姉とシヤ姉のことかな…」
「確かにシナとシヤって名乗ってたな。姉って事はまさか…」
「はい、私たちの姉です。このぐらいの時間によく駅前にいるはずですよ」
「!?姉妹が双子で、さらに姉と妹も双子?…どんな確率だよ」
世界にも中々いないだろそんな姉妹。
「はは、凄いですよねほんと。でも白哉さんも双子だったんですね。」
「そうだな、しかもお2人さんに負けず劣らずの可愛い双子の妹がいるぞ!」
「それは機会があれば会ってみたいですね」
「ああ、後で必ず紹介するよ。そして8時間ぐらい火那の可愛いところについて演説してやる!」
「そ、それはちょっと…」
火那のことになるとつい熱くなってしまう癖を治したい。
そう思ってはや数年。治る気配はありませんでした
「…くしゅん!…そろそろ冷えてきたし帰って風呂はいる事にするわ」
「そ、そうでした。改めて今日は本当にすみませんでした。ほら、ムツも!」
「…ごめんなさい白哉さん」
「平気だよ、それになんか楽しかったしな!後これ俺の連絡先。絶対に火那の事紹介してやるからな!」
「た、楽しみにしています。」
「わたしも、火那さん?に会ってみたい、です。」
「おう!それじゃまた後でな!」
そうして3人は解散し、白哉は冷えた身体を温めるために走って家に帰った。そして玄関の扉を開け「ただいま」と一言いい、いつものようにリビングへと向かった
玄関から濡れたままリビングに向かった白哉を見た火那は無言で呆れた目をしながら浴室の方へと指をさしていたので、白哉は素直に浴室へ向かい、先に身体を洗ってから湯船に浸かった。
「ふぃい〜、温まるわ〜。」
しっかし今日はギャルと仲良くなるは双子に水かけられるはで色々あったな。この街ってほんとに双子多いような。それに
「魔力制御の不安定…か。」
ムイとムツが言っていたことを思い返した。
人間は空気中にある魔素をゆっくりと体内にある魔力器官に馴染ませ、そこで魔力を生成する事で魔法を扱えるようになる。その馴染ませるために必要な期間は、一般的に産まれて空気に触れた時から8年かかる、つまり魔法は8歳から使えるようになるということである。しかしごく稀に身体が魔素に順応できず、魔法が扱えるようになったとしてもその制御が不安定になってしまう人もいる。ムイとムツがいい例だろう。
人間は各々魔力保持量の最大値が決まっており、仮にそれを越える様な魔力を得ると体に負荷がかかり耐えきれなくなった魔力器官は崩壊していくと言われている。
「安定させる為には自力で魔素に順応するしかないから、あの2人にはめげずに頑張って欲しいな」
順応してない身体に俺の魔力上げてもどうなるか分からないしな。そう呟き風呂から出た。
そしてその後はリビングへ向かい火那と夕飯を食べた。食事中に火那からなんであんなに濡れてたのかを問われたので事の真相を説明すると、なんで自分の魔法で乾かさなかったのよとド正論を言われてしまった。はい、忘れてました。
「っくしゅん!ああ、」
「ねえ、顔色もいいとは言えないし、ほんとに風邪引いたんじゃないの?」
「おま、バカは風邪引かないんだぞ」
「…いいからはやく寝なさい。」
火那に早く寝ろといつもより強めの声色で言われてしまったので、素直に言うことを聞き早く寝ることにした。
毛布被ってても寒い。ひっさびさに風邪引いたな。にしても水被っただけで風邪引くとか貧弱過ぎないか俺。鍛え治すか
と心の中で呟いているとピロンと枕元にあった携帯がなった。
「ん?メールか?」
メールを確認すると、1番上に「すず」という名前があった。というかよく見たら色んな人からメールが来ていたことに今更気づいた白哉は、今度からこまめにチェックしないとな、と反省をした。
1番上にあった鈴からのメールの内容は『すずだよ〜!はくやっちいま何してるの〜?』というものだった。
俺は今わりと体調が良くないので寝るところですよ〜
恐らくみんなにみんなメールを返信していたらいつになっても寝れないと察した白哉は全員に「俺は今から寝る!おやすみ!」と返信し、眠りについた
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鈴は携帯とにらめっこしながら悩んでいた。
「うぅ…なんで1メール送るだけでこんなに緊張するんだし〜!」
登録したよ!よろしくね!とかでいいよね?でもつまんない女だって思われたらどうしよう…白哉イケメンだしあの鷹堂ボコしちゃうぐらい強いから絶対モテるだろうし…まじどうしよ〜!と悩んでいると、
「すず〜!ごはんよ〜!」
と下からお母さんの声が聞こえたので
「はーい」
と返事をしてから1回のリビングへと向かった。そして両親と夕飯を食べている最中に、白哉に出会って改心した事を2人に言う事にした。
まずは2人に私の決意を話す!1歩ずつがんばってこう
「…ねぇお母さん、お父さん。私明日からちゃんと学校行って勉強するね」
「…!?す、すず!?あ、あなた、今あの鈴が自分のこと私って!」
「あ、ああ俺も聞いたぞ!すず?何かあったのか?」
両親はすごく動揺していた。
「べ、別に。なんとなくこのままじゃ行けないなって思っただけだし」
それを聞いた2人は目をうるうるさせていた。
「鈴が不良になっちゃった時はなんだか自分を偽ってる感じがしたけど、今はもうほんとにいい顔してるわね。お母さん凄く嬉しい。それと人間って言うのはね?急に自分を変えたりする時はほとんどが恋人や憧れる存在に出会えた時なの。だからもしかしたら鈴にもそういう人が出来たのかもしれないわね、あなた?」
「鈴に恋人だと!?お、おおお父さん頑張って受け入れるから、明日にでも家に連れてきなさい。」
「な、ちっ違うし!!それにお父さん顔怖い怖い!」
2人の言葉は完全に図星だった。年の功ってやつかな?白哉のことすぐに感ずかれちゃった。私ってそんなにわかりやすいのかな、
「あと鈴ちょっといいかしら?」
「うん、どうしたの?」
「あのメイクだけはお母さん許せないわ!」
「うむ、あれに関してはお父さんも反対だな!」
「な、なん…は、はい。もうしません。」
白哉だけでなく親にまで言われてしまった。でもそうだよね、もうあんな仮面を被らないで強く生きようって決めたんだしね!
不良になってからあまり親と会話していなかった分、今日の夜は楽しかった。それにいっぱい心配させてたんだなって分かったし。私も大人にならないと!
やがて自室に戻った鈴はなかなか送ることが出来なかったメールをすんなりと送ることが出来た。親に話したことによってどこか吹っ切れたのだろう
「でもやっぱり緊張したぁ!…白哉今何してるのかなぁ。なんて返信してくれるのかなぁ。メイクしてない私の事可愛いって言ってくれてたなぁ。」
携帯に反射して見えた自分の顔はやたらとニヤけていた。だらしない顔してるなぁ私。--ピロン
「!?きた!ど、どうしよう!!」
白哉からの通知に心臓がバクバクと鳴らし、とてもテンパっていた
ま、まじ緊張する!うう、ええい!
と半ばやけくそに内容を確認した。
「……ねるんかーい」
「いま何してるの?」ってメールを送って、そこからなんでもいいから会話が広がればいいなと思っていたのに!まさかのいきなり会話終了!
「はぁ、でもまあ白哉らしい…か。…私も寝よっと」
鈴は一筋縄では行かなそうな白哉にどうアプローチして行こうか考えているうちに、いつしか眠ってしまっていた。
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翌朝目が覚めた白哉は、起きようと身体を動かそうとしたが、思うように動かすことができなかった。
あー完全に風邪引いちまったな。身体が重い。頭が痛い。眠い。火那には悪いけどあとは任せて寝かせてもらおう。学校への連絡とか色々頼んだわ。俺は起きてると辛いから寝てダルさを忘れようとおもいます。
と心の中で面倒をかけてしまう火那に詫びを言いながら白哉は再び眠りについた。
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いつもの時間になっても白哉が起きてこない事に気がついた火那は恐らくまだ寝ているであろう白哉を起こすために部屋へと向かった。
「入るわよ?ほら、いつまで寝てるつもり〜?遅刻するわよ。」
「…」
言葉をかけても起きる気配がない白哉に近づき顔をみると、どこかつらそうな表情をしていた。それを見て昨日の様子から察した火那は白哉のおでこを触ってみると予想以上の熱さをしていた。
「まさかほんとに風邪引くなんてね。めずらしい」
冬に半袖半ズボンで外を駆け回っても風邪引かなかった白哉がねぇ。きっと今までの疲労が溜まってたのね。…白哉は誰よりも町を守ろうと多くの魔人を倒したり、毎日見回りしたりしてきたんだもん。がんばりすぎなのよ。
「これを機にゆっくり休みなさいね、学校へ連絡はしとくから安心して。」
そう言い火那は白哉に氷枕を用意し、おでこに冷えピタを貼り学校へ向かった。
楽しんでいただけたらこれ幸いです