入学編⑦
秋刀魚
「白哉おきなさい。おきて」
ん〜、
と火那のモーニングボイスが聞こえたが眠気が勝り、その声に反応出来ていたのかすら曖昧だった
「起きないの?白哉」
ん〜、
「…今ならキスしてもバレないわよね」
ん?
突然聞こえたとんでもない台詞に、白哉は寝ぼけながらもその頭で理解しようと努めた。
まさか火那の口からそういう類の単語が出てくるなんてありえない。ましてやそれが兄である俺に向けられるなんて尚更ありえないだろ。と思いつつもバレない程度の薄目で今起きている状況を確認しようとした
するといつのまにか白哉の上に跨るようにベッドへと乗っていた火那は目を瞑り髪を右手で耳の後に掛けながら顔を近づけて来ていた
それを見てかなり焦った白哉は
「ひ、火那!俺たちは兄妹だからそういう事はまずい!!…ってあれ?」
「何寝ぼけてんのよ、どうせまたバカな夢でも見てたんでしょうけど」
と白哉はベッドから飛び起き、気づけば火那が今部屋の入口から入ってこようとしている姿が目に入った
「なんだ夢か。そうだよな、火那が俺にキスなんて」
「は!?私が白哉にキス!?どんな夢見てんのよ変態!」
独り言が口に出ていたことに気付き、それを聞いた火那は顔を赤くしてキレていた。そう、火那はキスという言葉だけで照れてしまうようなピュアピュアマイシスターなのだ。
その後気を取り直した火那はご飯できてるから食べよといい2人でリビングへと向かい朝食をとった。今日も大変美味であった。
そして例のごとく白哉は食器を洗い、いつもなら2人で登校するはずだったが今日は白哉が1日自宅謹慎のため火那1人で学校へと向かった。
そして家に1人残った白哉は
「そういや昨日あのまま寝ちまったな。シャワーでも浴びるか」
と風呂場に向かい洗面台についている鏡を見ながら自分の顔に貼ってある絆創膏を剥がし、傷の状態を見ながら
「よし、これぐらいなら染みないよな。染みると痛いからなぁ。てか首元の血痕とれっかな?」
と確認した後シャワーを浴び始めたのだが
「ぎゃああああ!染みるううううう」
染みる痛みにもがいていた。
シャワーを浴びた後リビングへ向かい冷蔵庫に入っている冷えたサイダーと棚に常備されているお菓子の中からポテチを取り出し、テレビの前にある低めのテーブルの上に置いた。そして白哉はソファに座り、テレビをつけて録画視聴一覧から撮り溜めていたアニメを見始めた。
「平日の朝からポテチ食べながらみるアニメは最高だな!」
と自宅謹慎を謳歌していた。
アニメも終盤に差し掛かっておりとても盛り上がっているそんな時に固定電話のなる音が聞こえたので1度アニメを止め受話器を取った
「お、やっと出たか!俺だけど。お前携帯に何回か掛けても出ないからびっくりしたぞ」
支部長からだった
「なんだよ、俺いま今忙しいんだけど」
アニメがすげぇいいとこなんだよ
「何言ってんだ謹慎した分際で忙しいなんて、どうせやること無くてテレビや漫画でも見てたんだろ?それでよ、俺今日1日本部に行かなくちゃいけなくなったから平日の見回り頼むわ!給料は別でもう振り込んであるから!それじゃ」
一方的に頼まれ、そして切られた。
「…」
「…」
「ぶさけんなぁ!」
と叫びながら受話器を投げつけるように元の場所に戻した。
「給料先払いするとかやらざるを得ないじゃん…汚ぇ大人だなほんと。はぁ、にしても暑すぎだろ今日。それに首元の血は落ちないし、どうすっかぁ、」
とブツブツ文句を言いながらもバカだが根は真面目な白哉は見回りをするために駅前に向かっていた。
ふと道中でメイク落としなら血痕も取れるかも?と思いついた白哉はコンビニに寄ってそれを購入した後店内のトイレにある鏡を見ながらメイク落としで血痕を拭いたら見事に取れたので、つい店内で声を上げてしまった。
その後駅前に着いたのはよかったのだが、思った以上にあ暑く、どこか涼めそうな場所を探していた。
「あ〜、ゲーセンでも行くか。」
あれだぞ?決して遊びたいとかではないぞ?涼しいし治安も悪い場所と言ったらまず思い浮かべるのはゲーセンだろ?
と心の中で言い訳を吐きながら駅前にある4階建てのゲームセンターの中を見て回った。涼しい〜!
するとこんな時間にも関わらず制服を着た5人の学生を見つけたので白哉はそちらへと向かった。
その集団は黒髪でツーブロックのガタイのいい男と金髪でアップバンクヘアの男に、金髪と茶髪のギャル2人というみるからに不良そうな見た目をしていたが、その中にはもう1人弱々しそうな黒髪の男が細々と立っていた。
なんかあいつだけあの中では場違いなような
そう思った白哉は少し様子を見ることにした。
「おい浪川、早く金だせってコンテニュー時間が無くなっちまうだろうが」
「た、鷹堂くん使い過ぎだよ。ぼ、ボクもう手持ちがない…」
「あ?ないなら黙って下ろしてこいよ。口答えしたら殴るぞ」
「こ、口座にだってもう…あがっ」
それなりにガタイのいい鷹堂は口答えをした浪川を遠慮なく殴った。浪川はそのまま後ろへ吹っ飛び、顔からは鼻血が出ていた
「口答えすんなっつったろうが!!」
「あははは、タカやんやりすぎ〜」
「うわ〜いたそ〜」
「やりすぎっしょ〜」
とそれを見ていた周りの奴らは鷹堂を止めることなく笑っていた。
そういう事かと察した白哉はその不良たちに話しかけた。
「学生がこんな時間になにしてんだ?お前らも謹慎したのか?」
「あ?なんだよてめぇ」
白哉の質問を無視し、見るからにイラついている鷹堂にメンチをきられた白哉だったが、そんなこと気にせず再び言葉を続けた
「たまたまお前らがそこの男子殴ってる現場見ちまってさ?それであんたら学校はどうした?」
「何こいつ?正義のヒーロー?チョーウケるんですけど」
「というかどう見てもあんたも学生にみえるけど〜?」
「見たところ1人だし、タカやんも随分変な奴に絡まれたね〜。俺たちでやっとこうか?」
白哉の発言に残りの3人が反応してきた。というかいい加減俺の質問に答えてクレメンス
「まあなんでもいいけどさ、鷹堂?だっけ、お前そこの男子から奪ってた金今すぐ全部返せよ」
「あんたには関係なくな〜い?」
「てかいい加減ウザイんですけど」
「あっしらには浪川が好きで鷹堂に貢いでる様に見えるんですけど〜?」
「知らないのに口出さないでもらえます〜?」
というギャル2人に白哉はついイラッとしてしまい、思った事を口に出していた
「俺は鷹堂に聞いてんだよ出張ってくんなよお化けメイク。似合ってねぇからなそれ」
「はぁ!?ちょ、まじありえなく無い!?」
「なにこいつ!チョ〜うざい!絶対殺す!」
あ、つい本音が口に。
キレたギャル2人はいきなり勢いよく襲いかかってきた。が、難なく避ける白哉は偶然ポケットに入っているメイク落としを2枚取り出し、2人に急接近した。
「おっとこんな所にメイク落としが!食らえ俺の必殺!化けの皮剥がし-デモンズピール-!」
「…え?」
「…は?」
白哉のあまりにも早い早業に反応できていなかった2人は何が起きたのか分からず呆然としていた。そして白哉は2人に化粧がついた2枚のメイク落としを見せると、彼女たちは急いで鏡を取り出し、そして自分たちの顔をみた途端に両手で顔を隠した。
「う、うそ!最悪!!」
「しね!!ほんとにしね!」
「マジありえない…」
「うざい!しね!」
とついに泣きだしてしまった2人を見て焦った白哉は素直な感想を述べた。
「わ、悪かった!でもお前らメイクしてない方が可愛いからそのまんまでいいと思うぞ!うん、俺はそう思うね!」
「嘘つくなし!」
「昔から可愛くないから濃いメイクした方がいいよって周りから言われて笑われて育ってきたあっしらの気持ちなんて分からないっしょ!」
そ、そんな辛い過去があったのか。でもそんな風に言われるほどブサイクか?むしろ普通の子より全然可愛いような…
可愛いと感じた白哉からしてみればおかしな話だった。そのおかしさ故に色々と察してしまった
「あー、あれだ。どうやら女の嫉妬っての怖いらしいな。あんたら2人は周りと比べて可愛かったからそれに嫉妬した連中が2人に似合わないメイクさせて自分たちを可愛く見せようとしてたんだろうな。」
「か、可愛い?」
「あっしらが?」
「ああ、今でも充分に可愛いぞ。でもそのギャル口調もいいけどもっと女の子っぽい口調にしみるとより一層可愛くなるかもな!」
「…し、信じない。どうせまた笑われるし」
「でもあいつイケメンだし、イケメンに可愛いって…」
と白哉の言葉を聞いた2人の顔は先程よりも明るくなっていて、いい表情をしていた。ギャル2人とは決着がついた?ので再度白哉は鷹堂へと視線を向ける。
「今まで考える時間はあったよな。そこの男子に借りた分の金返す気になったか?鷹堂」
「…てめぇは浪川のなんなんだよ」
「お前が見るに堪えない行為をしてるから注意しに来たんだよ」
「てめぇの正義のヒーローごっこに付き合う気はねぇから帰れ。目障りなんだよ」
突然場を掻き回した白哉をみて明らかにイラついている鷹堂の忠告を白哉は無視し、そして浪川へ向けて言葉を発した
「浪川だっけか、お前取られた金取り返しいとは思わねぇの」
「ぼ、ボク!?」
突然話を振られた浪川は大きく動揺していた。だがそれは白哉に話しかけられたという事よりも恐らくその時鷹堂に睨まれているという事が原因だった。
「いいから教えてくれ」
「ぼ、ボクは取り返したい…い、いや鷹堂くんが返したくないならそれで…う、うん。やっぱり取り返さなくてもいいかな…」
と浪川は話してる最中にちらちらと鷹堂の様子を伺い、まるで鷹堂の機嫌を取るかのように言葉を選んだ。まるでDVされてる女みたいだった。それを見た白哉はイラつき、
「おい鷹堂、お前今すぐそいつに金返せ。手持ちがないなら黙って下ろしてこい。口答えしたら殴るぞ」
それを聞いた鷹堂は殺意を振りまき口を開けた。
「…誰に命令してんだてめ--っぁぐ」
台詞の途中で鷹堂は口から血を吐き、その場に蹲った。
「お前何口答えしてんだ?蹲ってないで早く下ろしてこいって言ってんだよ」
白哉は口答えした鷹堂の腹を殴った。そして蹲っていた鷹堂が反撃をしようとしてきたので
「ぐっ、てめぇ!!ぁがっああああ!」
顔面を踏みつけ、そのまま体重をかけて行く。
「お前がしてきた事はこういうことなんだぞ?自分がどれだけ醜く惨めな事をしてきてたのかをよく考えて反省しろ」
と鷹堂に向けて言葉を投げ、そして浪川の方へと視線をむけた。
「浪川、鷹堂以外から金を取られた事はあるか?」
と聞くと、後ろで一方的にやられた鷹堂の事を見ていたギャル2人と金髪男が割って入ってきた
「ちょ、待って待って!あっし…私たちはただそいつの近くにいただけで、浪川のお金使って何かしたとかは一切ないし!」
「そうそう、あっし…私たちは不良になればバカにしてきた女たちを威圧出来ると思って鷹堂と一緒に行動してただけだし!」
「俺もタカやんの近くにいれば面白い事がおきるかなって、そんな理由でいたから特にだよ〜」
よくもまあ抜け抜けと、一緒にいても止めなかったお前らも同罪なんだぞ。そして白哉は地面で寝ている鷹堂の首を元を掴み上げ
「鷹堂、お前はこれから浪川に金を返せ。手持ちや口座にもないなら親からでもなんでも借りてこい。逃げたりしたら許さねぇからな。そして浪川はこいつがお前に何か危害を加えそうになったり、加えられたりしたら警察よりも魔人対策本部第2支部に行け。第2支部は警察なんかよりも些細で小さい出来事でも動いてくれるからな。魔人が出ないから暇なんだと。後これ俺の連絡先。困ったら連絡しろよ?」
「え、?あ、はい。ありがとうございます。」
と浪川は白哉にお礼をいい、怪我した鷹堂を治療していた。
散々脅迫暴行を受けてた相手の怪我を治療するなんて、アホがつくほど律儀なのかお人好しなのかわからないやつだな。いい性格してるなほんと。
その後白哉は鷹堂が浪川にお金を返す所を見届け、5人はバラバラに帰って行った。
俺も帰るかと帰路に立とうとしたその時、帰ったはずの茶髪の方のギャルが話しかけてきた。しかもお化けメイク姿に戻っていた。
「あ、あの!さっきの鷹堂の件でのあんたの言葉を聞いてさ、私もしっかり反省してこれから強く生きようって、素顔を出すのはまだ少し恥ずかしいけどこれから頑張ってありのままの姿で生きて行こうって、そう思えたし!ありがと!」
「お、おう!その調子だ、がんばれ!」
と白哉は突然の彼女の意気込みに困惑したももの、がんばれと声援をおくった。改心したってことだよな?
「そ、それと。よかったら私と連絡先を交換して、ほしい、し」
「連絡先?ああ、いいぞ全然。」
「ほんと!?」
と喜ぶ彼女をみてどこか微笑ましく思い、互いに連絡先を交換した。そして互いに交換したあと彼女は自身の携帯を見つめ、首を傾げていた
「た、たたりみや?はくや?」
「それでたかみやって読むんだよ。そう言えば名前言ってなかったな、俺は崇宮白哉です。よければあなたのお名前を伺っても?」
「私も名前言ってなかったね、まじウケる。私は竜海 鈴。よろしく!」
と2人は今更自己紹介をした。
「そういえば、自分のこと私って言うようにしたんだな」
「う、うん。白哉がそっちの方がいいって言ってたっしょ?」
「そりゃ、あっしよりは良いだろ。今どき自分のことをあっしなんていう女子なんてそうそういないぞ?」
「まじ!?ネットでギャルは自分のことそう呼ぶって書いてあったのに!」
そう言う鈴にいつの時代のサイト見たんだよ。と少し笑ってしまった
それから鈴と少し会話してから解散し、家へと向かった。
そしてうちの近所にはブランコしかない小さな公園がある。その公園を経由すると家の前へと繋がる道路に出る事ができ、近道としてよく使っている白哉は今日も利用しようと公園に入ろうとしたその瞬間
頭から大量の水を被ることになった。
「ご、ごごごめんなさい!!」
「大丈夫ですか!?」
と赤髪の女の子2人が謝りながら走ってきた。
鈴みたいな子と付き合いたいです。