少女は語る4
「というわけで魔王を倒した勇者は諸悪の根源であるドラゴンを退治することになりました」
「ドラゴンってものすんごくおっかない化け物なんでしょ」「こわーい」
子供たちは絵本に描かれるドラゴンを想像して怖がったり興奮したりしていた。
「なぁ嬢ちゃん。確か人型の魔王ってのはドラゴンになる前の人間だった男が」「わーわーわーわー」
無理やり大声を出して大人の声を遮る。
「前はそういう風に話していたみたいだけど、そうじゃなかったみたいで。最近になって違うことが分かったらしいの」
本当は男性の言う通りだ。だけど、今の世の中にその話を広める必要はないと語り部たちで話し合われた結果、物語にアレンジを加えることになったのだ。当時を知る人は多くはない。それこそ、私たち語り部たちが真実を隠してしまえばなかったことにできるのだ。現に絵本や物語には人型の魔王に関する記述はなくなり、異形の魔王のみが魔王として語り継がれていた。
「それで、勇者は魔物たちの親玉のドラゴンを退治しに行きました」
私のように、生き残ってしまったものだけが本当の真実を知っているのだ。
思わず髪をかき上げながら耳に手を当てる。そこには人とは違う尖った耳の感触があった。
耳の尖った人間じゃない種族とは。大体の人はわかりますよね。