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勇者の日記2

 異世界に転移してきて一か月。この世界の常識を色々と教えられながら訓練の日々。どうにもこの世界に来た日から身体能力が向上しているのか、何をしても体が軽い。数kgはあるはずの剣を軽々と振り回せる身体能力はまるで別人の体のようですらある。


 この世界に来た当初の怒りは少しは薄れてきた。だが、ホームシックというべきだろうか。帰りたい欲求は日に日に強くなっていく。白米が恋しい。ジャンクフードを食べたい。ゲームをしたい。そのストレスは全て剣を振るうことで無理やりにでも解消する毎日だ。


 まず初めに教えられたことは、魔物と魔王についてだった。この世界には魔王と呼ばれる存在が二人、いや一人と一匹がいるようだ。人型の魔王と異形の魔王。そしてその魔王を守護する眷属たちを魔物というらしい。


 人型の魔王は人間の少女のような姿をした魔王のようだ。そして、その眷属と呼ばれる魔物たちは人型の姿をしているらしい。人型の魔王を頂点とし、一つ目の巨人サイクロプス。ハーピーやラミアと呼ばれる半人型の魔物。そしてその底辺としてゴブリンがいるらしい。


 もう一匹の異形の魔王の姿はまるで肉片を繋ぎ合わせて混ぜ合わせたような醜悪な姿らしい。異形の魔王を頂点とし、その下にはキマイラと呼ばれるあらゆる生物を繋ぎ合わせた化け物。ワイバーンや数多の昆虫系の魔物。その底辺としてスライムがいるらしい。


 かろうじて人の形に近いものは人型の魔物の眷属。それ以外が異形の魔王の眷属らしい。


 それと、よくあるファンタジー世界のようにエルフや獣人と言った種族もいるらしい。ただし、精霊やドワーフといった種族はいないようだ。よく獣人と人型の魔物を間違えることがあるようだ。獣人は性格が闘争的で、たまに本能に支配されて暴れまわる者のいるらしく、コボルトと見分けがつかずに討伐されることも少なくないらしい。


 ちなみにエルフも獣人も大きな国を持たずに集落単位で細々と暮らしているらしい。エルフはその身に宿る強大な魔力が争いを生まぬように。獣人は闘争本能に支配されて争いを起こさないように。それぞれが確固たる意志を持って国を作ろうとしていないらしい。


 ちなみにではあるが、僕にはエルフを凌駕する魔力が宿っているらしいが、その全てが身体能力の向上に回されているらしい。そして、その効力も日に日に強くなってきている。今では剣を軽々と振れるどころか剣の重みすらほぼ感じなくなってきている。垂直飛びで本気を出したら10m飛べた時には、これ以上身体能力が上がってどうなるのかと思った。


 そして、最低限の知識と訓練が終えたと判断された僕は魔王討伐の指示を受けて王国を後にすることになった。本音を言えばさっさとドラゴンに元の世界に帰る方法を聞きたいところだ。だが、最悪なことにそのドラゴンはこの世に一匹しかおらず、しかも何の因果か魔王の住まう世界一高い山の頂上で世界の始まりから世界を見守り続けているらしい。はっきり言っていい迷惑だ。


 ドラゴンに会うためには魔王を倒さなくてはならないという出来すぎた状況に疑念が浮かぶが、本当にそれ以外の方法は無いようだった。あるいは僕を召喚した魔法を扱える古代の魔法ならば送還さえ可能だったのかもしれない。しかし、王城に残された書物は召喚による物のみでそれ以外の書物はないらしい。そもそも、召喚の書物すらかつて魔王城に攻め込んだ兵士が死に際に王に渡してくれと託した物らしかった。


 つまり、どうあがいても元の世界に帰ることと魔王は切っても切れない関係性のようだ。


 明日から旅を始めるが、お供として獣人の戦士とエルフの魔法使いが同行するらしい。獣人の戦士は歴戦の兵士という佇まいの王国一の剣術使いで僕の師匠だ。ちなみに50歳らしいが、獣人は老化が遅く肉体の衰えを感じさせない剛の剣は凄まじく、なんでも魔王城から書物を持ってきたのは彼らしい。多くの仲間の敵討ちのために同行するらしい。


 そしてエルフの魔法使いは可愛らしい少女のような見た目だが、なんともう200歳を超えるらしい。エルフはその魔力の異常性から成長が止まり不老長寿らしい。ちなみに少女なのはこの娘だからであって、エルフが少女なわけではないらしい。魔力の扱いが王国一らしいのでついてくることになった。飛行する魔物を討伐する為の人選らしい。


 話を聞く限り二人とも変わり者でそれぞれの集落で過ごす退屈な日々に嫌気がさしてきて王国に来たらしい。何はともあれ、三人で魔王を討伐して元の世界に帰りたい。


いや、帰るんだ。

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