時計の小話
眠い。時計を見ると12時半ぐらいのようだ。
昼だがまだ眠りたい。だから寝る。それで良いはずだ。だって休日なんだから。しかし……。
パラパッパッパー!パラパーッパパパパパー!
時計が喧しく騒いだ。
おかげで私は叩き起こされる。
この時計、いつもはピーピーピーという電子音なのに、何でこんなファンファーレみたいな音を?
寝ぼけた頭がハテナで満杯の私は時計を掴んで眺めた。裏側も。
いつもと変わらない目覚まし時計だ。
だが────
「お前に宝の在りかを教えよう」と時計は言い放った。
そして時計からビームが放たれ壁にかけてあるカレンダーに照射される。ビームは地図のようなものを描いているようだ。黒いラインが……火を灯す。
カレンダーが炎上。私は慌てて壁からひっぺがすと台所に持っていき、蛇口の水をかける。『地図』は黒こげで全く読めない。
時計は口上を続ける。
「宝の場所は、ここから東へ二歩。そこにある扉を開いた中にある」
(近いな。地図要らないじゃん)
言われた通りに進むと扉があった。
押し入れの扉だ。手前に開く。開くのは一年ぶりだ。
中は上下2段に別れているが、どちらも雑然としている。
上の段には古いぬいぐるみや予備の毛布など、下の段には古い書類や本、靴などがある。
(ん? これは?)
下段の隅に缶詰があった。気になったので手に取ってみる。
『高菜』と書かれている。
(たから……たかな……。そういうことか)
宝じゃなくて高菜。洒落か。
時計を見ると13時前、ちょっと遅いが昼時だ。腹も減ったし缶詰を食おうか、と賞味期限を確認。
(50年後? そんなに持つのか!)
食べずに保管することにした。
これはやっぱり宝だ。