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黒狼さんと白猫ちゃん  作者: 翔李のあ
story .02 *** 旅の始まりと時の狭間
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scene .16 色持ちという呼称

 むかしむかし。これはほんとうに古く、このせかいにじゅうじんたちが生まれてまだ間もないころのお話。


 せかいでは、いろいろなしゅるいのじゅうじんが平和にくらしていました。


 時にはけんかをしたりもしましたが、みんななかよく、助けあいながら生活しています。


 そんなせかいを見て、りくの神さまは思いました。


『じゅうじんたちと、いっしょにくらしてみたいな』


 でも、神さまにはせかいを見守るお仕事があります。


 じゅうじんたちのせかいでくらすわけにはいきません。


 そこでりくの神さまは、そらの神さま、うみの神さま、じかんの神さまにそうだんすることにしました。


 はじめはみんな、困ったかおをしていましたが、ひとつのすてきなアイディアを思いつきます。


『そうだ、ぼくたちのぶんしんをせかいに送ろう』


 そのアイディアにさんせいした神さまたちは、じゅうじんたちのせかいに自分たちのなみだをひとつぶずつ落としました。


   ◇‐◇‐◇

   ◇‐◇

   ◇


 それから少しの時間がながれました。


 今日はなんだかさわがしい、じゅうじんのせかい。


 気になった神さまたちは、さわぎのちゅうしんをのぞいてみました。


 そこには、小さなじゅうじんがいました。あかちゃんです。


 そのあかちゃんは、ほかのおとなたちとはかみの色や目の色がちがっていました。


 神さまたちの落としたなみだをやどして生まれた、神さまのぶんしんだったのです。


 そしてそのあかちゃんがせいちょうすると、じゅうじんたちにはないふしぎな力をもっていることがわかりました。


 じゅうじんたちはおどろきます。


 そしてふしぎな力をもった、じぶんたちとちがう色をしたじゅうじんのことを“色もち”とよび、あがめるようになりました。


 それを見ていた神さまたちはよろこびました。


 じぶんたちのそんざいを、じゅうじんたちに知ってもらえたのです。


 そのご、まじゅつが生まれ、かがくが生まれると、しだいにじゅうじんたちは色もちのそんざいに気づかなくなっていきました。


 しかし、神さまはそのことをうれしく思いました。


 なぜなら神さまたちは長いじかんをかけて、あがめられるのではなく、いっしょにくらすゆめをかなえることができたからです。


 かみさまたちのぶんしんは、いまでもきっと、じゅうじんたちといっしょにせいかつしています。


 おしまい



「モモは何読んでるのー?」

「あ、シャルちゃん。せかいと色もちって絵本だよ」

「わぁ、絵がたくさんあって楽しそう!」


 自分の持ってきた料理本を一通り眺め終えたらしいシャルロッテは、モモが隣で読んでいた絵本を覗き込む。

 と、そこへ何冊も積み上げられた分厚い本の山が二人の元へ向かってやってくると、ドサリという音と共に机に腰かける。


「ふぅ……ほんとにすごいわね、ここ。何でも知りたいことがわかるって言うのはきっと本当だわ」


 船上でリージアと別れた後、他のメンバーも船内で食事や仮眠を取るなど各々自由に過ごし、何事もなく船は定刻通り世界図書館についていた。

 深夜の到着であったため、その日は宿を取り休息、そして現在に至るという訳だ。


「たくさん持ってきたのね、ロロちゃん」

「ふふん、せっかく来たんだから、満喫しないとと思ってね!」


 本の陰からひょっこりと出てきたロロは、いつものように得意気な顔をする。


「モモが持ってるのは……まさか絵本? 見かけ通りなんというか……」

「あ、えと、違くて! これは、私の村にロロちゃんくらいの子がいるんだけどね? その子にどうかなって」


 広げられている絵本を見たロロの感想を聞く前に、モモは焦ったように弁解した。

 さすがのモモも、ひと回り程も年下のロロに絵本を読んでいる子と思われるのは嫌だったらしい。


「ふぅん……まぁいいんじゃない? 家にもあるし、その絵本。ちょっと幼稚な気もするけど」


 そう言いながらロロはシャルロッテと反対側のモモの隣の椅子へ腰かけると、持ってきた本の一冊を広げた。そして、少しの間の後、再び口を開く。


「にしても図々しい話よね、誰が作ったのか知らないけど、色持ちが神様の分身だなんて。わたしが色持ちじゃなかったら、何様よ! ってその絵本を破り捨てるところだわ」


 その言葉を聞いたモモはハッとして絵本めくる手を止めると、自分の浅はかさを静かに反省する。

 純粋そうなココット・アルクスの少女がそう思うかはさておき、ロロの言う通り色持ちである自分からこの絵本を渡されるというのはいい気持ちがしないかもしれない。


「ロ、ロロ! 置いて行くなんてひどいよ」


 と、そこへ、前が見えていないのだろう、クロンがロロの倍程の本を抱えてよろよろとしながらこちらに向かってきた。


「お兄ちゃんがもたもたしてるからでしょ! もぅ、これだから我が家の男は……」

「そんなこと言ったって……」

「わぁお! これまた随分と好学なもんだね」


 文句を言われながらも、クロンが本を机に置き終えると、リージアが戻ってきた。帰りに利用する船の部屋を予約するため、案内所へ行っていたのだ。


「あ、リージアさん。予約は取れました?」

「まぁね、バッチシいい部屋を!」


 モモの問いかけに、リージアは少し悪戯っぽい表情をしながら答えると、辺りをきょろきょろと見渡した。


「……あれ? お兄さんは?」

「自分の調べものついでに、知り合いに頼まれたことも調べてくるってあっちの書庫へ向かったみたいです」

「へぇ~あっちって記録室じゃん。ロルフもなかなかに侮れないね」


 リージアは関心したように言う。

 世界図書館には、俗に言われる“本”はもちろん、世界中から集められた情報をまとめ書き記した本が相当数置かれている。その情報は、誰がどのようにして収集しているのかなどは謎に包まれているが、内容は驚くほど正確であると言われており、研究者などに重宝されている。そしてそれが、世界図書館と呼ばれる由縁でもあるのだ。


「ロルフに聞きたいことがあったんだけど。まっ、まだまだ時間はあるし、気長に待ちますか」


 そう言うとリージアもモモ達の近くの席に腰かけた。

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