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scene .14 ×××
「あれほど油断するなと言っただろ」
暗い部屋の中で男が女に向かって言う。
「ごめんなさい……でも、色持ちは一人って……」
「オレに口答えをするな」
女に背を向けるようにマントを翻し、男は目をつむった。――そうなのだ。他にも能力を持った奴がいるとは聞いていなかった。もしかして……いや、そんなはずはない。男は頭に浮かびかけた考えを否定する。
「……今日のところはもういい、休め」
「わかったわ」
そう言うと女は、コツコツとヒールを鳴らしながら男に近づいた。そして、長い指で男の背中をつぅっと触りながら言う。
「きっと大丈夫よ、私も最後まで……」
「うるさい! 黙れ!」
突然出された大きな声に、女はビクッとすると、小さくため息をつき「おやすみなさい」そう言って部屋を出て行った。
うさぎと薬草と蛇 end ***