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黒狼さんと白猫ちゃん  作者: 翔李のあ
story .07 *** 神授せし力と偽りの天使
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scene .25 目まぐるしく変わる戦局

「魔石持ち……」


 青ざめた表情でエルラが魂鎌を胸元に強く抱きそう呟く。現れたレイロカの額には男性の拳ほどの大きさの赤紫色の魔石が輝いていた。

 ロルフも知識でしか知らないが、長い間生き続けた、もしくは戦闘を繰り返し強い力を得たレイロカはその身に魔石を宿すという。魔石の色はそのレイロカが得意とする能力により変わるらしいが、過去に観測された例も少なく、何色がどのような能力なのかはさすがに未解明である。ただ一つ言えるのは、今まで出会ったどのモンスターよりも強いだろう、ということだ。

 ヴェロベスティがこちらの存在に気付いてもすぐ飛び掛かってこなかったのは、これが理由だった訳か。ロルフはレイロカの知識に加えて忘れかけていたヴェロベスティの知識を呼び戻す。ヴェロベスティは頭の良いモンスターで、自分たちの生存確率を上げることができる場合は、“稀に”こうして自分よりも格上の存在に従って行動することがあるらしい。

 ロロの話によるとこの先に進んでも扉を開けることが出来ないかもしれない。その上、出られたとしてもそこは街中だ。場合によっては大惨事を引き起こす可能性もある。

 ――闘うしか、ないか。

 ロルフはレイロカから視線を離さないようにしながら、ゆっくりと階段端の大きな箱の影にモモを横たえた。そして腰に通した魔道ポーチに手を添える。


「――っ!」


 魔道ポーチの転移先がヴィオレッタの金庫になっている事を思い出し、ロルフは心の中で舌打ちした。魔術瓶が入っているポーチをロロに渡しておけば多少は身を守る術になるかと思ったのだが……ここに来てポーチの中身にアクセスできない事が支障となるとは。

 レイロカはもちろん、ヴェロベスティが二人の元に行かないように気を張って戦闘するしかない。


「ロロはモモといてくれ」


 ロルフは一段ずつレイロカたちを刺激しないように降りながら、ロロにそう囁いた。

 ロロも気力の残っていない自分が足手まといになる事は理解しているようで、静かに頷きゆっくりと階段を登る。


「二人の魔力の残量は?」


 ランテとエルラの横に並ぶと、ロルフは二人に問いかけた。


「あるよ? モリモリ満タンだけどさ、アイツに……」


 弱者の最後の戯れを許そうと言わんばかりの余裕そうな面持ちでこちらを見つめるレイロカに、ランテはゴクリと喉を鳴らす。


「アイツにうちらの魔術なんて通用するんかな」


 ランテがそう言って引きつった笑顔を作った次の瞬間、エルラが「来ます!」そう叫んだ。すると、レイロカが一歩、踏み鳴らすように足を床に打ち付け、それを合図にヴェロベスティがロルフたちの方へ飛び掛かった。幸いレイロカは様子を見るためか、自分が出るほどの獲物ではないと判断したか、現段階では戦闘には加わらないらしい。

 現状一人一体。後にレイロカとの戦闘が残っていることを考えると全ての力を使うべきではないものの、それでも今のロルフたちであればヴェロベスティ程度のモンスターだけならば背後に回らせずにどうにかなりそうだ。


「脚を狙え!」


 ロルフは二人にそう指示を飛ばす。

 攻撃力だけを見ると大した強さではないヴェロベスティではあるが、足が速く素早いため攻撃を命中させにくい。魔力を無駄に消費する事を避けたい今、動き回られるのは非常に厄介である。だが、逆に言うと動きさえ止めることが出来れば戦いやすい相手だ。


「はいはーい!」

「わかっています!」


 元々身軽なランテは、その場にある箱や壁を使いながら、ヴィオレッタとはまた違った軽快な動きでヴェロベスティを翻弄していた。ヴェロベスティは自分たちのフォーメーションを崩されるのを嫌うため、動きを止めるのには効果的だ。

 そして、その隙を逃さずにエルラが魔術を放つ。見事な連携だった。

 ランテの、いや、二人のお陰で思っていたよりも簡単に片づけられそうだ。国から出たことがないと豪語していたため、あまり戦闘経験はないと思っていたのだが、これ程の精度で連携ができるということは、それなりに場数を踏んでいそうである。

 そんな事を思いながらロルフは二人の邪魔をしないよう、自分に向かってきた個体を中心に攻撃を入れ……


「カハッ」

「ランテ!」


 一瞬の出来事だった。観戦を決め込んでいると思ったレイロカの角が、壁を蹴り宙に浮いたランテの体を階段とは反対側の廊下へと叩き落としていた。幸い角先には触れず打撃だけで済んだようだが、もしあの勢いで角先に触れていたら体を貫通していただろう。

 ロルフはランテに駆け寄ろうとするエルラの背中を狙うヴェロベスティに氷魔術を放ち注意を逸らすと、元々自分を狙っていたもう一体の重力を最大に上げた。


「エルラ、止まれ!」


 ヴェロベスティは二人のお陰で一体は既に戦闘不能状態だが、まだ二体残っている。それに、戦闘態勢に入ったレイロカの近くを通るのは非常に危険だ。ランテが気を失ってしまった今、エルラにまで戦線離脱される訳にはいかない。

 ロルフの声にエルラは足を止めると、視線をランテからレイロカに移しその場を離れるように後ずさる。


「ランテは大丈夫だ。コイツらを何とかしよう」


 ロルフは、元の位置まで戻ってきたエルラを落ち着けるようにそう声を掛けると、目の前で床に全身を這いつくばらせるように動きを止めるヴェロベスティを解放した。この力は相手の反発する力が大きければ大きい程消費する気力が増加する。ヴェロベスティは力こそ強くはないが、瞬発力が大きいためか思っているより気力を消費してしまった。

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