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黒狼さんと白猫ちゃん  作者: 翔李のあ
story .07 *** 神授せし力と偽りの天使
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scene .18 交錯する思惑

 少しずつ怪訝な顔になっていくクドゥから、「何て失礼なのかしら」そう言ってヴィオレッタは顔を逸らした。

 だが、遅かったらしい。


「おっと、これは失礼」


 そう言うクドゥの額からは汗が消えていた。

 それだけではない。先程までの下手にでるような雰囲気も無くなり、丁寧な口調はそのままだが、威圧感を纏っているような気さえする。

 この感覚をロルフは知っていた。あの時ほどの強さではないが、洞窟にいた時に感じたものと似ている。


「アナタ方、あの洞窟に侵入した虫けら共ですねぇ?」


 クドゥは背もたれに体を預けるように深く座ると、あの崩壊から生き延びたのですか、なんと悪運の強い。そう付け加えた。


「まぁ、金は本物のようですし、そのウサギはくれてやってもいいのですが……」


 ちらりとモモに視線を向けたかと思うと、次は隣に座って不気味な笑みを浮かべるシピニアを横目で見る。


「私としたことが、いいことを思いついてしまいましてねぇ。まぁ、生身でどのようにしてここまで来たか、というのは少々気になりますが」


 そこまで言って、クドゥはカイゼル髭を撫で始めた。そしてじっとりとロルフとヴィオレッタを交互に見やる。


「仕方のないことです。どちらも捕獲して売り捌くことにしましょうか」


 そう言ってクドゥが立ち上がると、ロルフの目の前で札束を数えまとめていた者たちが全員体を地面に預けだした。その動きは、糸が切られたマリオネットの人形、そう表現するのがあまりにしっくりくる。


「おや?」


 と、ヴィオレッタの様子がロルフの反応とは異なる事に気付いたクドゥは驚いたように、だが少しだけ嬉しそうに口角をあげた。


「おやおや、この空間に居て昂るとは。アナタ随分と自己愛がお強い様で」


 ついこの間と同様、恐怖を感じその場から動けないロルフとは異なり、ヴィオレッタは、体こそ動かせていないものの今にも目の前の男に齧りつかんとするほどに殺気立っているのがロルフの側から見てもわかる。


「こちらのシピニア様も同じ気質でしてねぇ」


 そう紹介されたシピニアは、行動を制限されている二人を嘲笑う様に涼しい顔で手をヒラヒラと振った。何の影響もなさそうな所を見るに、この男は能力を影響させる人物を指定できるらしい。


「初めて能力のテストをした際は殺されてしまうかと思いましたよ」


 そう言ってクドゥは面白そうに笑う。

 能力の、テスト? 回らない頭でロルフがその言葉に引っかかりを覚えた時だった。シピニアがやって来た時と同じように、扉の外がなんだか騒がしくなったかと思うと、


「おかあさん!」


 そんな声と共に扉が勢いよく開き――それと同時に部屋に飛び込んで来たのは、ロルフたちも良く見知った顔だった。




*****

****

***




 ――時は少し遡る。

 ロルフ達が出て行ってからしばらくした後、シャルロッテたちは予定通りマダムリンデと共に宿屋でまったり過ごしていた。

 初めのうちはやっぱり行きたかったと不機嫌そうにしていたシャルロッテであったが、ジャデイが出してきたおやつを見てそんな気持ちはすっかり忘れてしまった様だ。

 おやつを食べ終えた後も、三人はマダムリンデの持っている不思議な道具や素材に触れたり少しだけ裁縫を教わったりして、いつの間にか日は大分落ちてきて……


「眠った、かしら……?」


 薄暗い室内とここ数日の慣れない環境、マダムリンデに至っては徹夜していたこともあり、ロロ以外の三人は睡魔の誘惑にすっかり呑まれ、椅子に座ったまま気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 ロロはと言うと、どうしても確かめたいことがありここ二日はあまり眠れていなかったものの、その要因が未だに未解決のためこのチャンスを逃すまいと睡魔を追い返したのだった。


「すぐに戻ってくれば大丈夫よね」


 ロロはそっと扉を開け、部屋を出る。

 先程までこの辺りを掃除していたはずのジャデイもいなくなっており、これはチャンスとばかりにロロは玄関の扉に手を掛けた。


「お出掛けですか?」


 と、誰も居ないと思っていた所を突然話しかけられ、思わず口から出そうになった心臓をグッと押し戻す。

 動揺を悟られぬようロロがゆっくりと振り返ると、何かの果実らしきものを持ったジャデイが暗闇から姿を現したところだった。


「え、あれ、えっと!」


 体裁は保ったものの結局口からは動揺そのものが溢れ出てしまったロロを見て、ジャデイは少し申し訳なさそうに笑う。


「あぁ、すみません。暗がりから急に現れたように見えましたよね。こちらには食材庫がありまして」


 腕に抱えていた果実のうちの一つを手に取ると、ロロに見せるように少し持ち上げた。


「そ、そうね。ちょっとだけ。ほんと、ちょこっとだけビックリしたわ!」


 ロロは腰に手を当て、お得意の強がりで返す。そして、企みがバレていた訳ではないことに少しだけ胸をなでおろしつつ、何か外に出るための言い訳を考えなくては、そう思った時だった。

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