神に愛された姫
2018/7/3 【どうでもいいネタ】神に愛された姫 の活動報告として投稿したものです。
【あらすじ】
わたしは公爵令嬢。家族は皆優しい。わたしはいつもぼんやりしていて、とてもふわふわしている。
そんなわたしにも婚約者がいたらしい。婚約者はお兄さまと違って一緒にいてドキドキする。ぼんやりしている時間はそうでもないけれど、一緒に何かをしているととても嬉しくなる。
そんなある夜会の日。婚約者の王子さまとダンスを踊って少しだけベランダで休んでいたら誘拐されて、森に捨てられた。ここから祈ればきっと家族には届くと思うけど。
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わたしは公爵令嬢。
容姿はかなりいい。代々続く優れた容姿と優れた頭脳を掛け合わせてできたのだから、それは当たり前。
お父さまもお母さまもお兄さまもお姉さまも。みんな美しくて優しくて賢い。
ところがね、こういう血筋ではよくあること? なのかわからないけど、わたしは欠点を持って生まれてきた。
そう、家族がみな、美しくて優しくて賢いのに。
わたしだけがぼんやりしていて記憶力が悪い。顔は家族に似ているから美しいはず。
ついでによく騙されているみたい。
この辺りはよくわからないわ。最後は家族の誰かが隣にいてくれるから。
「今日はお庭でゆっくりしましょうね」
お母さまは心配しすぎて、わたしのために敷地内の森に小さな家を建ててくれた。これ、もちろん住もうと思ったら住めるけど、これはわたしのぼんやりする時間用の家なの。
「今日は仕事の帰りにでも美味しい菓子でも買ってこよう」
そう優しく頭を撫でてくれるのはお兄さま。お兄さまは次期公爵なのに、よく王宮に出向いて仕事をしている。なんでも第二王子の近衛騎士なんだって。お兄さまの制服姿が見たくて、おねだりしたら仕方がないといってなってくれた。
「今日はお前の姉も来てくれるから、楽しみなさい」
お父さまも今日はお仕事でお出かけ。公爵家で立ち上げた商会の打ち合わせをするらしい。
「お姉さまがきてくださるの?」
お姉さまは8つ年上ですでに公爵家に嫁いでいる。だから滅多に会えないけど、会いに来てくれると沢山のお話してくれる。
嬉しいことばかりがあると気持ちが温かくなる。そうするととても眠くなってしまう。
「今日もゆっくりお休み」
優しく囁かれて体が浮いた。きっとお兄さまが運んでくれるのだろう。わたしはそのまま意識を手放した。
わたしはいつも夢の中。
ふわふわしたところにいて、国のあちらこちらを眺めている。
ああ、あそこの地域でがけ崩れが起きているみたい。ちょっと前に大雨が降ったからかしら。沢山の悲鳴が聞こえる。
あそこには子供が生まれたみたい。お母さんを必死に呼んでいて可愛いわ。
みんながお腹いっぱいになって、お菓子を食べたら幸せね。
みんなが笑顔になれば、この国も幸せね。
ついでに周辺の国々も幸せだったらもっと幸せね。
「あ、起きた?」
ふと目を開ければ、見知らぬ顔があった。お父さまでもお兄さまでもない。
「だれ?」
寝ぼけた頭で見つめれば、彼はふんわりと笑った。
「覚えていない? 僕は君の婚約者だよ」
「婚約者?」
よくわからない。婚約者なんて名前の家族はいない。
「わからなくてもいいよ。君はずっと僕の側にいるだけでいい」
「お兄さまは?」
よくわからなくて、不安になる。
「君の兄上はすぐにくるよ。僕の護衛だから」
彼の手を借りて起き上がった。ぼーっとしていると、彼が優しく髪を梳いた。
「殿下、勝手に妹を連れてくるなど困ります」
ノックの音もせずにお兄さまが入ってきた。とてもとても不機嫌そうに眉を寄せている。怖い顔をしているけれど、それはわたしを心配しているということがわかっているからほっとした。知らない人に連れていかれてしまったのかと思ったのだ。
「少しぐらいいじゃないか。君たち公爵家の人間が囲ってしまってるから滅多に会えなくなってしまったんだよ?」
「できれば婚約破棄をしてもらいたく」
「どうして? 彼女は神の姫なのに」
遠くの方で二人の会話を聞いていたけれど、そうだと思い出してお兄さまの服を引っ張った。
「お兄さま。崖が崩れて沢山の人が泣いていたわ」
「場所はわかるかい?」
頷いて、いつものように見た位置を伝える。
そして公爵家にすぐにでも帰りたいと思っていたのに、何故か王宮にある離宮に連れられた。
とても落ち着いた素敵な場所だけど、家族が誰もいない。
「今日から婚約者として君はここで暮らすんだよ」
優しく王子さまが頭を撫でた。そしてそっと唇にキスする。驚いて目を瞬けば、王子さまは目を細めて笑う。
「キス、いや?」
「なんかドキドキする」
「よかった。半年後、君が18歳になったら、僕と結婚するんだ。キスがお兄さまと一緒と言われたらどうしようかと思った」
王子さまの笑顔にわたしも笑顔になった。
この笑顔はとても好き。そして柔らかな空気がとても好き。一緒にいるのが自然だと思えるほど。
「わたし、王子様の笑顔がとても好き」
「うん。僕も君の笑顔が大好きだよ」
こうしてわたしは王宮に用意された離宮で暮らすことになった。
「今日の夜会には一緒に出てほしい」
ある日、王子さまが言いにくそうにそう言った。わたしは首をかしげる。
「王子さまと踊るの?」
「そう。綺麗なドレスを用意するよ」
「嬉しいわ」
王子さまと踊る。幼い頃にお姉さまが読んでくれたお話のように楽しいに違いない。
「夜会には君の家族も出席するからゆっくり話したらいい」
本当にいいことばかりだ。嬉しくてにこにこしていると、王子さまが頬にチュッとキスをした。王子さまのキスはお兄さまやお父さまのキスとはちょっと違う。胸がとてもドキドキするの。優しい目で見つめられると嬉しくて、胸が熱くなる。家族といると温かくなるのに不思議。
王子さまが用意してくれたドレスを身に纏い、王子さまにエスコートされてダンスする。
何もかもが輝いて見えた。
「こんな人形みたいな気味の悪い女が王子さまの婚約者だなんて」
バルコニーに出て火照った体を冷やしていると、誰かがやってきた。侍女や護衛達が次々に彼女の護衛に倒されている。優しくしてくれていた侍女や護衛達が声もなく床に転がる。
悲鳴を上げようとしたがすぐに口が塞がれた。ぐっと首を絞められて息が苦しい。
「誰だか知らないけれど、とっとと出てお行き。王子さまも今は気に入っていても、いなくなればすぐにでも忘れるでしょう」
そんな言葉が聞こえたが、意識は遠のいていった。
目を開ければ、真っ暗な森にいた。
何とか起き上がると、王子さまが贈ってくれたドレスを着ている。どうやら夜会会場からここまで連れてこられて捨てられたようだ。
ため息を付いた。幼い頃はよくこういう事があったけど、ここ最近はお父さま達が守ってくれたから本当に久しぶり。
どういうわけか、わたしは森に捨てられることが多い。傷つけようとしても傷がつかないからきっと捨てられるのだと思う。
「よっこいしょ」
立ち上がれば、細いヒールの靴のため不安定だ。
「あまり遠くないといいのだけど」
元々あまり歩かないから、わたしの足でどこまで歩いていけるかはわからない。だからわかりやすく、印を送ることにする。
どこかに捨てられてしまったら、神に祈るようにとお父さま達が言っていた。わたしの祈りは家族に届くからと。すぐに迎えに行くよと。幼い頃もいつもそうやって迎えに来てもらった。
今日は満月。雲一つない綺麗な夜空。星も輝いている。
両膝を地面につき、天を仰ぐようにして両手を組んだ。
ここにいますと祈る。
いつもならお父さまかお兄さまの顔が浮かんでくるのに。
今日は王子さまの顔だけが浮かんできた。
「バカだね、王女なのに考える頭もない」
冷めた目で隣国の王女を見据えた。王子は椅子に座って足を組んでいるのに対して、王女は騎士たちに抑えられる形で膝をついていた。王子の冷たい視線に王女はきっと睨み据える。
「あんな気味の悪い女のためにわたくしの申し出を断るなど、国がどうなってもよろしいの!」
「はあ、本当にバカな女だね。君の国はすでに君を切り捨てたよ」
「は?」
王女は信じられないように口を開けた。くすりと王子が笑う。
「君を切り捨てることで、国が傾くのを防いだんだ。僕としては地図の上から消してしまってもよかったんだけどね」
「何を言って……」
「知らないの? あの子は神の姫なんだよ。災害が起きないのも、豊かな実りがあるのも、神の姫がそう願っているから他ならない。ついでに周囲の国も豊かになればこの国も幸せだという祈りで君の国は飢えることがないんだ」
理解できないかな?
王子はそう呟いて、王女だった女を連れて行くように指示する。
「ちょっと待って! 謝るからやめて!」
悲鳴のような声が上がったが、黙殺した。
「あの子の起きている時に処刑にしてほしい」
側に控えていた側近がそう進言した。
「当然だよ。夢に見てしまったら気に病んでしまうからね」
昔々、一人の美しい姫がいました。
彼女はとても神に愛されていました。神はいつでも彼女の願いを叶えました。
彼女が死んだとき、神はとても嘆きました。
彼女の血に連なる者で彼女の心に近い者に神の加護を与えよう。
そうして、神に選ばれた姫は神の姫として大切にされました。
それが国の繁栄につながるから。
このお話を育てるにあたって変更してはいけない点は以下となります。
1.政略結婚を前提とした婚約をしている。
2.主人公はぼんやりしているため、あまり記憶力がよくない。
3.婚約者は王子様。主人公が好き。
4.主人公は家族に愛されている。
5.主人公はよく誘拐されていたので、公爵家に守られていた。
6.主人公は神に愛されている娘のため、予知の力がある。いつもぼんやりしているときは大抵神の国に行っている。
7.胸糞展開不可
ふわふわ系です。これは異世界恋愛かな?